直近2年はアルバイト...以前の職務経験は部署移動が多かったが 経営企画職に転職できたポイントは?転職の専門家が解説
2025年5月3日(土)14時0分 J-CASTニュース
「会社を辞めてしばらくアルバイトをしてきたが、もう一度正社員としてキャリアを築いていきたい」
転職エージェントには、そんなご相談もよく寄せられます。こうした方々は、「面接でアルバイト経験をどう伝えればいいのか?」「企業にどう評価されるのか?」といった不安を抱いています。
そんな不安を乗り越え、経営企画職として転職を果たした30代女性の事例と、その成功ポイントについて、リクルートエージェントでキャリアアドバイザーをつとめる進藤聡が解説します。
正社員時代の経験を「棚卸し」して、強みを抽出
Aさん(30代)は不動産会社で7年弱勤務した後、直近の2年はアルバイトとしてサービス業に就いていました。30代になって今後のキャリアに危機感を抱き、正社員を目指して転職活動を開始。しかし、アルバイトを2年続けてきたことで「正社員として長期的に働くイメージを持ってもらいにくいかもしれない」と、不安を抱いていたのです。
そんなAさんがどのような方向性で転職活動を進めればいいか——私との面談で、まずは「キャリアの棚卸し」を一緒に行いました。
2年前まで勤務していた不動産会社での7年間弱の経歴を振り返ってみると、計3つの部署に所属。それぞれの期間は3年、3年、1年弱でした。その経歴に対しても、Aさんは不安に感じていました。
「これといえる専門性や強みがない......」
そこで、日々どのようなことを心がけながら行動したり、独自の工夫をしていたりしたのか、どの部署での経験が一番やりがいがあったのかを一緒に振り返って整理しました。
すると、管理部門で経営企画の業務に似たような業務を経験していたため、「定量的に物事を見る目が養われている(数値分析力がある)」「イレギュラーな事態への対応力がある」といった強みが浮かび上がってきたのです。
Aさん自身も、経験した3部署の中で経営企画業務にもっともやりがいを感じていたことを改めて認識し、「これから経営企画のスキルを磨いていきたい」という目標が明確に。経営企画の求人に的を絞り、応募を開始しました。
アルバイト経験が「今後どう生かせるか」をアピール
面接に臨むにあたっては、「アルバイト経験をどのように伝えるか」が課題となります。
まず、企業側としては「なぜ会社を辞めてアルバイトをするようになったのか」という理由を問うでしょう。このとき、「流されてなんとなく」ではなく、自分なりに意思や目的を持ってアルバイトの道を選んだことを語れるようにしておくことが大切です。
Aさんの場合、面接担当者が納得する理由を語ることができました。
それは、学生時代から憧れていた企業があり、アルバイトであれば入社するチャンスがあったため、「一度きりの人生だから、悔いがないようにチャレンジしたい」と飛び込んだのです。
このような経緯は、企業によっては「チャレンジ精神がある」「行動力がある」と、好意的に捉えられることもあります。しっかりと理由を説明できるようにしておくことで、面接官にポジティブに理解してもらうことができます。
そして、さらに大切なのは、次のポイントを整理して伝えることです。
●アルバイト経験を通じて何を身に付けたか
●アルバイト経験で得たスキルを、今後の仕事でどう生かしていこうと考えているか
Aさんと私は「アルバイトで身に付けたこと」と「経営企画の仕事」がリンクする部分を探りました。Aさんがアルバイトしていた企業は、サービスのクオリティやホスピタリティの高さが世間からよく知られている企業です。そこで、面接でこのように伝えました。
「不動産会社の経営企画としては、定量的な視点での組織マネジメントを経験しました。一方、アルバイト先企業では、数字だけで測れない、定性的な価値を追求しながら仕事をしてきました。今後は、定量的な視点・定性的な視点の両方を生かしながら経営企画の仕事に再度チャレンジしていきたいと考えています」
具体的なエピソードを交えながら、論理的にストーリーを組み立て、面接で伝えた結果、企業からは「活躍・成長の可能性」を感じてもらえたようです。複数社から内定を得て、最終的には大手企業グループ系列の不動産会社の経営企画職として転職を実現しました。
肩の力を抜いて、最初の一歩を踏み出すことが成功につながる
Aさんの転職成功のポイントとして、次の2つも挙げられます。
●思いきって一歩を踏み出した
●適度に肩の力を抜いた
転職活動を始めた頃、Aさんは、自身のキャリアに自信が持てず、興味がある求人を見つけても応募ボタンを押せなかったそうです。
自宅のパソコンで求人を眺めながら「この会社、応募しようかな、どうしようかなぁ......」と思わずつぶやいたところ、近くにいた夫がこんな一言を。
「タダなんだから応募してみなよ!」
その言葉がAさんの背中を押したのでした。「確かに、応募するだけならお金もかからない」と吹っ切れて、「無理かな」と思う企業にも応募できるようになったとのこと。不採用になっても深刻に受け取りすぎず、転職活動を続けることができたといいます。
「自信がない、でも転職したい......」。そう考えているなら、まずは「応募」してみることをおすすめします。アクションを起こさなければ何も起こりませんし、ためらっているうちに時間が経ってしまうと、応募できる求人が充足してしまうかもしれません。
「落とされるだろう」という不安から一歩を踏み出せないこともあるでしょうが、Aさんのように「そんなもんだよね」と気楽に捉えてみてください。不採用になったとしても、「否定された」「評価されなかった」わけではなく、「合わなかっただけ」と考えましょう。
応募してみることで、自分のキャリアの現在地や「自分のこんな部分が評価されるのか」と気付けることもありますし、「こんな働き方、キャリアの築き方があるのか」と新たな情報を得ることもできます。ぜひ一歩、アクションを起こしてみてください。
【プロフィール】
キャリアアドバイザー 進藤 聡
商業施設の施設管理で販促担当の経験を積み、2022年にリクルートに入社。キャリアアドバイザーとして、さまざまな業界・職種の求職者の転職を支援。転職する・しない関わらず、転職活動を通して今後のキャリアに向き合う機会にしていただけるようサポートしている。