大企業の中高年社員、地方の中小企業への転職を政府が支援…給料減の補填の仕組みも

2025年5月10日(土)22時17分 読売新聞

金融庁

 政府は、大企業の中高年社員らを対象に地方の中小企業への転職支援を拡充している。今年度から金融庁の転職仲介事業の要件を緩和し、関連予算を3倍の20億円に増やした。転職に伴う給与減の不安に対応して補填ほてんの仕組みも充実させ、高いノウハウを持つ人材の有効活用を進める。(経済部 遠藤雅)

 大手自動車部品メーカーで総務課長だった男性(53)は昨年9月、産業廃棄物処理を手がける「東武商事」(埼玉県松伏町)に転職した。「経理や施設管理などの経験や能力を生かしたい」と考え、官民ファンド・地域経済活性化支援機構が運営する人材仲介データベース「レビキャリ」に登録。千葉銀行グループの人材会社がこのデータベースを活用し、取引先の東武商事に紹介した。同社の岩本耕司執行役員は「スキルがあって他部署と連携できる人材を求めていた。日頃から付き合いのある銀行の紹介は信頼できる」と話す。

 男性が利用したレビキャリは、金融庁の事業として2021年度に始まった。資本金10億円以上か、従業員数2000人超の企業やその子会社などで勤務経験があり、退職後5年以内の転職希望者が登録できる。登録者の情報は地方銀行や信用金庫など156の金融機関が参照でき、取引先企業のニーズに沿った人材を探して紹介する。

 転職だけでなく、大企業に在籍しながら兼業や副業といった働き方も認められる。地域の中小企業の実情に詳しい地域金融機関が仲介役を担うため、転職後のミスマッチが少ないという。

 従来、大企業から中小企業への転職は、給与などの待遇面の違いが大きなネックとなってきた。レビキャリを利用して転職する場合、金融庁は転職先企業を通して転職者に給与の一部を給付している。支給額は一定の条件下で、転職後の年収の3割を2年間、1人あたり450万円が上限となる。

 レビキャリには、24年度末時点で大企業出身の4343人が登録し、平均年齢は54歳という。転職や兼業・副業の成約件数は累計178件に上り、23年度末の同72件から2・5倍に増加した。金融庁は関連予算を計20億円と従来の3倍に増やし、経済産業省との共同事業に切り替えた。同省が管轄する経済団体や商工会議所を通して、地方の中小企業側に積極的な求人を働きかけていく狙いという。

 レビキャリは、民間の人材紹介サービスに比べて求職登録者数が大幅に少なく、認知度の向上が課題となっている。昨年度までは、登録できるのは大企業に在籍中か退職後2年以内などの人を対象としていたが、今年度からは退職後5年以内までに条件を緩和した。金融庁の担当者は「登録者数を1万人規模まで増やし、地方創生を加速させたい」としている。

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