こうすれば会議に毎回遅れてくる"舐めプ部下"の行動が変わる…一流上司が使う叱り言葉と神フォロー

2025年5月17日(土)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ivanko_Brnjakovic

部下の行動を改善させたいときはどのような声掛けがよいのか。行動科学マネジメント研究所所長の石田淳さんは「焦点を当てるのを、その人の人格ではなく行動にすること。そして『叱る』と『ほめる』をセットにしてこそ、相手の行動は改善されていく」という——。

※本稿は、石田淳『【新版】教える技術 行動科学を使ってできる人が育つ!』(かんき出版)の一部を再編集したものです。


■「怒り」をぶつけても何も解決しない


「怒る」と「叱る」の違いは何か?


怒りというのは、“自分が掲げている目標と現状との間に大きなギャップがあり、そのギャップを埋めるための打ち手が見つからないときに抱える感情”だと、以前有名な哲学者の本で読んだことがあります。


つまり、人はうまくいっているときは怒らないということです。“あるべき姿はこうなのに、この現状はいったい何なのか?”というときに怒るのです。


怒りをぶつけたところで、何も解決しないことはみなさんも長年の経験上ご存じでしょう。


たとえば赤ちゃんに対して「あと2年で幼稚園だから、ハイハイなんてしていないで、さっさと歩きなさい!」と怒ることはありませんね。それどころか、ハイハイしていた子が、ほんの一瞬立ち上がっただけで「すごいぞ!」とほめたりします。


ところがなぜか、大人になると逆のことをしがちです。


もし赤ちゃんが怒られたら、そのあとどうなると思いますか? 歩くのをやめてしまうのです。なぜなら、また怒られると思うからです。


こうした現象を、行動分析学では“怒りが、行動を弱化した”と呼びます。


写真=iStock.com/Ivanko_Brnjakovic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ivanko_Brnjakovic

■「ほめる」効果


一方、ほめるとその行動が「強化」され、その行動は増えます。


ですから、ある行動を増やしたければほめる。これが育成の大原則なのです。


それでも、思わず部下や後輩に怒りをぶつけてしまった場合は、「さっきは悪かった。目標と現状に対する認識や、そのギャップを埋めるための打ち手の分析が甘かった私のせいだ」などと怒った理由を説明できるといいでしょう。


一方の「叱る」は、相手の行動などを改善する必要があるとき、それを指摘あるいは要求する行為です。


本当に相手のことを考えているなら「叱る」こともときには必要ですが、その際にはいくつかの配慮が必要です。次項では、そのことについて解説しましょう。


■人格や性格を叱るのはNG


大事なのは、叱る対象を「行動」にすることです。


絶対にしてはいけないのは、その人の人格や性格を叱ることです。


「キミはだらしないから、業績が上がらないんだ」「普通なら誰だってできることができないなんて、どういう育ち方をしたのか?」……。


こう言われた部下や後輩は、いったい何を直せばよいのでしょう?


「いつもぼけっとしているから、仕事ができないんだ」と言っても、何の解決にもなりませんし、そう言われた部下はその上司への信頼感を確実に失うでしょう。


あくまでも、焦点を絞るのはその人の「行動」です。


(やるべきなのに)やらなかった行動、(やってはいけないのに)やってしまった行動だけを対象にしなければいけません。


写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

■叱ったあとにすべきこと


会議に毎回遅れてくる部下がいたら、「準備を始めるのが5分遅いのが問題だから、そこを直しなさい」といった叱り方をすれば、行動は改善に向かうでしょう。


ただし、叱っただけでは行動はなかなか変わりません。確かに叱った直後は、その行動が改善されるでしょうが、「行動の習慣」自体が変わらないと、再び元に戻ってしまう可能性が非常に高いのです。


ですから、叱りっぱなしにするのではなく、行動変容のための道筋を示してあげることも大切です。


たとえば「会議開始の10分前に、携帯のアラームをセットしてはどうか?」といったアイデアを出すといったフォローです。もちろん、きちんと会議に間に合ったときには、「よしよし、ちゃんとできてるな」と認めてあげる。


叱ったあとのフォローを、相手の機嫌をとることだと誤解している方がいるようですが、そうではありません。


行動を望ましい方向に変えていくために「叱る」。そして、望ましい行動がその後もずっと「継続」できるようにサポートする。この2つがセットになってこそ、「叱る」という行為が最大の効力を発揮するのです。


■「叱る」「ほめる」が部下に届く上司になる


ほめ方・叱り方のテクニックを説いた本や記事をよく見かけますが、そうした技術的なもの以上に、ほめる・叱るの効果を非常に大きく左右する要因があります。


それは「誰が」ほめるか、「誰が」叱るか、ということです。


何と言ってほめる(叱る)か? ではなく、「誰がほめる(叱る)か?」が重要なのです。


ふだんから自分の行動をきちんと評価してくれて、“私は、この人の下で働くようになったおかげで、楽しんで仕事ができるようになったなぁ”などと思えるような上司から、「この数字は、キミのきめ細かい配慮がお客様にばっちり伝わった結果だね」などとほめられたら、その部下はますます積極的に仕事をするようになるでしょう。


逆に尊敬できない上司や、嫌悪感を抱かせるような上司・先輩だったら、叱るという行為はもちろん、「ほめる」ことすら十分に効力を発揮できません。


たとえばふだんから、自分の上司や、会社の悪口ばかり口にして、「こんな仕事やってられない……」と言っている、そんな上司が何を言っても、部下は心の中で「こんな人に言われたくない」と思うはずです。


写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■あなたは尊敬に値する上司なのか?


以前、「感情的に怒る上司のおかげで成長できました。ですから私も部下に対して、感情的に怒った方がいいと思うのですが?」という質問を受けたことがあります。


この場合は、相手が「この人すごいな!」と思える上司で、互いに信頼関係ができていたからこそ、感情的に怒ることがプラスの方向に作用したのです。何と言ってほめる(叱る)か? が最も重要なことではないという典型例と言えるでしょう。


ですから、ここで問われるのはあなた自身が尊敬に値する上司・先輩であるか? という、非常に根本的な問題になります。もちろん、ほめるとき・叱るときのセリフのレパートリーを増やすために、そうした解説書に目を通すことは無駄ではありません。でも本当は、気の利いたセリフなど必要ないのです。目を見て大きくうなずく、関係ができているなら肩をポンと叩くといったことで、本人に「私はキミのその行動を認めているぞ」というサインが届けば、もうそれだけで十分なのですから。


■ほめるのが苦手な40代以上…


「私は部下をほめるというのが、どうも苦手で……」。


そうおっしゃる方は、経営者にもリーダーにもたくさんいらっしゃいます。


特によく聞くのは、40代以上の方です。彼らが育ってきた時代は、親も先生も職場の上司も、厳しくしつけること、叱りながら育てることが当たり前でした。


「ほめる」のは、よほど困難なことに挑戦して成し遂げたときぐらいなものです。


ふだんの勉強や部活でのトレーニング、会社での通常業務など、“日常的なつとめ”を確実にこなしたということに対して、親や先生や先輩や上司から「すごいね」「がんばったね」などと、ほめられた経験を持つ人は非常に稀ではないでしょうか。


事実、45歳以上の管理職を対象にしたある調査では、「自分が部下のときに、上司からほめられたことがありますか?」という質問に対して「ほめられたことがない」という回答が、なんと95%でした。


よく、人は親になったとき、自分が親から受けたしつけを自分の子どもに繰り返すと言われます。そういう育て方(育てられ方)しか知らないのですから、無理もありません。そしてそれと同じように、ほめられることなく育ってきた人は、上司になったときに部下をほめられないのです。


写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

■「行動」をほめる


しかし、ここでの部下をほめることの目的は、部下に身につけさせたい行動を“強化”することです。



石田淳『【新版】教える技術 行動科学を使ってできる人が育つ!』(かんき出版)

ということは、何をほめればよいのか? そう、「行動」です。ほめるターゲットは、その部下の人間性でも性格でもなく、あくまでも「行動」なのです。


それがわかれば、“ほめること”への苦手意識がだいぶ軽くなるでしょう。


よく課長職の方などから「部下の気持ちがわからなくて……」という相談を受けるのですが、私はいつもこう答えています。


気持ちなんてわからなくていいです。その人の行動に焦点を当てて、やったことをきちんと認める、しっかりほめる、ということをしてください。


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石田 淳(いしだ・じゅん)
ウィルPMインターナショナル代表、行動科学マネジメント研究所所長
日本の行動科学マネジメントの第一人者。米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものにアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立。主著に『教える技術』。
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(ウィルPMインターナショナル代表、行動科学マネジメント研究所所長 石田 淳)

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