「今月使えるお金」を数える節約家ほど失敗する…「自然とお金が貯まる人」が給料日にやっていること

2025年5月23日(金)8時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

お金が貯まる人と貯まらない人の違いは何か。金融教育家の上原千華子さんは「給料日直後に『ごほうび』として散財してしまう人はお金が貯まりにくい。一方、いつもがんばって節約している人にも落とし穴がある」という——。
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■ドーパミンが正常な判断力を奪う


「節約しているのに、なぜかお金が貯まらない……」


そんな悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。月末になるとカツカツになってしまうのは、必ずしも「収入が少ない」からとは限りません。自然にお金が貯まる人と、そうでない人との違いは「お金ぐせ」と「マネー習慣」にあるのです。


今回は、給料日直後にやりがちなNG行動や、節約の落とし穴を紹介しながら、「自然にお金が貯まる仕組み」について一緒に考えていきましょう。


NG行動①「ごほうび消費」

「よし、今月も乗り切った!」と、給料日になるとつい、自分にごほうびをあげていませんか。高級ディナーを予約したり、前からほしかった服を買ったり、気が大きくなることもあるかもしれません。


がんばった自分へのごほうびは、生活にハリが出て、やる気も出ますよね。脳が報酬を感じると、快楽を司るドーパミンが分泌されるためです。


ただ「無計画なごほうび消費」が恒例行事になると危険です。ドーパミンがネガティブに働く可能性があります。脳は再び「気持ちよさ」を味わいたくなり、「本当に必要かどうか」の判断が鈍ってしまうのです。こうした無意識のパターンが、気づかぬうちに「お金が貯まらない体質」を作ってしまいます。


ごほうび消費は度が過ぎると、ショッピングの高揚感が忘れられず、買い物依存に陥るリスクもあります。「衝動買い」と「まとめ買い」には注意したいものですね。


■真面目な節約家がある日、突然…


NG行動②「リバウンド消費」

物価高が続く中、節約を意識している人は多いでしょう。「今月使えるお金はあと○○円」と、質素な食事で済ませたり、ちょっとした買い物も我慢したり、なるべくお金を使わないよう心がけている人も少なくありません。


その姿勢はとても堅実で、努力の表れでもあります。ただ、あまりにも「使わないこと」に意識が向きすぎてしまうと、思わぬ落とし穴にハマることがあります。それが「リバウンド消費」です。


ダイエットでいう「ドカ食い」のように、節約も我慢が続くと、ある日突然ストレスが爆発し、反動で散財してしまいます。真面目でがんばり屋の人ほど、必要以上に自分を律してしまい、結果として疲れ切ってしまうケースもあります。


■出費を見直すならまずは固定費から


また、消費を渋りすぎる人ほど「お金の使い方がわからない」傾向にあります。本当に必要な自己投資やセルフメンテナンスにお金をかけられないなど、結果的に自分をないがしろにしたり、お金にネガティブな感情が染みついたりする可能性があります。


食費や水道光熱費は必要不可欠なコスト。削減するにも限度があり、我慢を強いられます。もし節約をするなら、まず固定費から手をつけましょう。


住居費、スマホ通信費などの固定費は比較的金額が大きいため、一度見直すと効果が持続します。またお酒やスイーツなど習慣化した嗜好品の節約も効果的です。予算内で楽しむようにしましょう。


■「先取り貯蓄」を始める3ステップ


それでは、自然にお金が貯まる人は、どんな工夫をしているのでしょうか。ポイントは「仕組み化」と「メリハリ」です。


仕組み化とは、ひとことでいうと「先取り貯蓄」の習慣化です。給与天引きや積立を利用して、給料口座から別口座へ一定額を移し、残ったお金でやりくりします。具体的には、次の3ステップで構築します。


①毎月の積立額を決める
手取りの1〜3割が理想だが、無理のない範囲でOK


②積立の方法を決める
財形貯蓄による給与天引き、銀行や証券会社の積立貯蓄・投資など
引き出すのに手間のかかる方法が効果的


③積立口座を設定する


逆に「お金が余ったら貯蓄しよう」としても、なかなか貯められません。人間には消費欲があるので、「ちょっとくらいいいよね」とつい手をつけてしまうのです。お金とお菓子は、目の前にあったらすぐになくなるものだと考えましょう。


さらに用途別に口座を使い分けると、効率的にお金を増やすことができます。


①貯める口座:10年以内に使う教育費や旅行など
②増やす口座:10年以上先に使う老後資金や非常時の備えなど
③生活費用の口座

まず①②で貯める・増やす仕組みを作ってから、③の口座で日々のやりくりをしましょう。


こうした口座の使い分けが、自然とお金の流れを整えてくれます。


■「ごほうび」を管理してやる気を継続


メリハリをつけるには、自分へのごほうびを上手に取り入れましょう。


まずは「お金の仕組み化」を作った後に、生活費口座で賄える範囲で、ごほうび予算を決めます。例えば「月1万円までなら自由に使ってOK」と自分に許可を出します。「ごほうびリスト」を作って、ワクワク感を心にストックしておくとよいですね。


「月1回は入浴施設でリラックス」「3カ月に1回は3万円以内で○○を買う」など、達成感に見合った「お楽しみ消費」ができると、自分を大切にしていると実感でき、節約も続けやすくなるでしょう。


■「使いすぎ」「渋りすぎ」に偏りがち


お金の使い方には、人それぞれ独自のくせや傾向があるものです。最近、行動パターンを可視化するモニター調査を実施したところ、興味深い傾向が見えてきました。


拙書『ファイナンシャル・セラピー 「お金の不安」をやわらげる科学的な方法』(日本能率協会マネジメントセンター)で、大きな反響をいただいた「マネー障害」に基づき、マネータイプ診断を開発し、モニター調査を実施しました。


マネー障害は「使いすぎ」「渋りすぎ」「貢ぎすぎ」など5つのタイプに分類され、それぞれのお金のくせには、感情的な背景があることが分かっています。


モニター調査では、42%が「使いすぎ」、35%が「渋りすぎ」と、両極端に偏る傾向が明らかになりました。この2つのタイプは、記事冒頭で紹介したNG行動「ごほうび消費」「リバウンド消費」に陥るリスクが高い人と言えます。


また、性別による違いも興味深く、男性の約23%が「貢ぎすぎ」タイプでした。このタイプの多くは、家庭を支える立場にある既婚男性であり、「家族にさまざまな経験をさせたい」という思いが背景にあると考えられます。ただし、自分のニーズにも目を向けることが大切です。


なお、これらの傾向は参加者の属性によって変わる可能性がありますので、ひとつのデータとしてご参照ください。


■一人ひとりに合ったお金の貯め方がある


お金のくせは、単なる行動習慣ではなく、私たちの無意識に紐づいた感情のパターンでもあります。お金とのつき合い方には、過去の体験や家族との関係、価値観が深く影響しているためです。


例えば、幼い頃に「うちはお金がないから我慢しなさい」と繰り返し言われた人は、大人になっても無意識に「お金を使う=罪悪感」と結びつける傾向があります。また、逆に「がんばったごほうびにお金を使う」と育てられた人は、ストレス解消の手段として、買い物に夢中になるかもしれません。


写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

このような心のくせを無視して行動だけを変えようとしても、リバウンドが起きやすく、かえって自分を責めてしまうことになりかねません。だからこそ、マネーリテラシーよりも先に「自分自身のくせを理解すること」が重要なのです。


がんばっているのに貯まらない人は、がんばり方が少しズレているだけかもしれません。お金の仕組み化と自己理解の両方が整ったとき、「がんばらなくても安心できる」お金との関係が築けることでしょう。まずは、給料日直後の消費や節約のくせに気づくことからはじめてみませんか。


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上原 千華子(うえはら・ちかこ)
金融教育家
金融教育家。欧米投資銀行勤務歴17年、個人投資家歴26年。証券外務員一種、最新の心理学NLPを使ったマネークリニック®認定トレーナー。2018年、ウェルス・マインド・アプローチ創業。資産運用講座を実施し、2022年より「3ヶ月マネー実践講座」を提供開始。ライフプランから資産運用までマンツーマン指導。著書に『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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(金融教育家 上原 千華子)

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