部下を褒めるよりも100倍大事な「アクノリッジメント」とは何か?

2024年5月27日(月)4時0分 JBpress

「ホワイト過ぎる職場に、成長の機会を奪われると感じて辞めてしまう」——若者の退職を招く新たな問題に、「厳しくしても優しくしてもダメなら、いったいどうすればいいんだ!」と頭を抱える担当者は多い。本連載は、今どきの若者とどう関わるのが正解か、20年近く企業の組織改革に携わってきた経営コンサルタントが、11の具体的シーンで解説した『若者に辞められると困るので、強く言えません——マネジャーの心の負担を減らす11のルール』(横山信弘著/東洋経済新報社)から内容の一部を抜粋、編集。

 第2回目は、部下を褒める時のルールや日々の感謝の重要性について解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 ゆるくてもダメ、Z世代を劇的に変える「ちょうどいい」マネジメントとは?
■第2回 部下を褒めるよりも100倍大事な「アクノリッジメント」とは何か?(本稿)
■第3回 「スピード」と「完成度」、どちらを部下に優先させるべきか
■第4回 「無意識的無能」から「無意識的有能」へ、部下を成長させる「学習の4段階」とは?(6月10日公開)
■第5回 なぜ知識や能力が足りない人ほど「馬鹿の山」に登りたがるのか(6月17日公開)

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部下を褒める「イフゼンルール」

「優しさ」の考え方についてお伝えしていこう。まずは褒め方について。

 叱るのも褒めるのも「発生型」の行為だ。「設定型」ではない。挨拶や声かけは計画的にできるが、叱るのも、褒めるのも、計画してできるものではないし、やってはならない。

 だが、意識しないと部下を褒められない上司も多いだろう。

 部下育成のために意識して褒めることを、私は「ホメジメント」と呼んでいる。

「褒める」と「マネジメント」をくっつけた造語だ。

 意識しないと、部下を褒めることができないマネジャーは、まず褒めるプラン(P)を考える。そしてプランどおりに実行(D)する。さらに、定期的に「正しく褒めているか?」「褒めるタイミングを逃していないか?」とチェック(C)し、問題があれば改善(A)する。

 このようにPDCAサイクルを回すことが「ホメジメント」だ。

 褒めるプランとは、「イフゼンルール」のことだ。

  • もしも部下が○○をしたら、褒める
  • もしも部下の行動(成果)が○○を超えたら、褒める

 このような感じで、褒める「イフゼンルール」を自分の中で決めることだ。そうすることで、部下も学習するようになる。

「なるほど、こうすると褒められるのか」

「やっぱり、これぐらいでは褒められなかった」

「ホメジメント」が正しく機能すれば、上司に言われなくても部下は率先して褒められる行動をするだろう。

 芯のあるマネジャーは、この基準がブレない。褒めるときは、褒める。褒めないときは、褒めない。


「褒める」よりも100倍大事なこと

「ホメジメント」は部下が褒められる行動をしたとき、成果を出したときしか使えない。

 それでは、日々決められたルーティンワークをしているだけの部下を褒めてはいけないのだろうか?

 もちろん、褒めない。どんなに難易度が高くても、ルーティンワークを淡々とやっている部下を褒めることはできない。

「イフゼンルール」が適用できないからだ。

 それでは、何もアクションを起こさないのか?

 いや、それは絶対にダメだ。

 おそらく、ほとんどのマネジャーはコレができないから、部下と良好な関係を築くことができないのだ。

 それが「日々の感謝」である。

 過去と比較しての変化や、明確なお手柄がない限り「褒める」ことは難しい。だから、そんなに頻繁に部下を褒めることなんて、ないのだ。

 そこで大事になってくるのは、

「ありがとう。すごく助かっているよ」

 この一言が言えるかどうか。

「褒める」は発生型だが、「日々の感謝」は設定型にできる。

「週に2回は褒めるぞ!」

 とは宣言できないが、

「週に2回は感謝しよう」

 と計画することはできる。

 照れ臭いかもしれないが、「日々の感謝」を習慣化しよう。「褒める」よりも100倍大事なことだ。


存在承認を満たす効果的な方法

「日々の感謝」のことを、コーチング用語で「アクノリッジメント」と呼ぶ。存在承認と表現すれば、わかりやすいだろう。

 とはいえ、

「君のおかげで、助かっている。ありがとう」

 と、毎日のように言える人は少ないだろう。照れ臭いから、言えても1週間に1回だ、という人も多い。

 しかし、誰だって毎日のようにできることがある。それが、そこに部下が存在していることを認めることだ

 これが存在承認である。やり方は、とても簡単。シンプルだ。

 名前を呼んで、挨拶するだけ。声をかけるだけでいい。

「田中さん、おはようございます」

「吉田さん、お疲れ様」

 これでいい。短いフレーズだが、効果抜群だ。こんなに「タイパ」の高いコミュニケーションはないだろう。

 「即レス」も存在承認の1つだ。

 部長や課長、他の先輩からのメールにはレスが早いのに、自分のメールへのレスが遅いと、

「自分の存在が軽んじられている」

 と思い込むものだ。どんなに傾聴を心がけていても、いつもメールのレスが遅いのであれば、マイナス効果のほうが高い。

 自分の都合のいいタイミングで

「何でも話を聞くぞ」

「困ったことがあったら、いつでも相談してくれ」

 と呼びかけても、部下はその気にならない。日ごろから自分の存在をスルーしておいて、それはないだろう、と部下は思うからだ。

 評価や待遇を改善するより、まずは日ごろの「アクノリッジメント」に力を入れよう。

<連載ラインアップ>
■第1回 ゆるくてもダメ、Z世代を劇的に変える「ちょうどいい」マネジメントとは?
■第2回 部下を褒めるよりも100倍大事な「アクノリッジメント」とは何か?(本稿)
■第3回 「スピード」と「完成度」、どちらを部下に優先させるべきか
■第4回 「無意識的無能」から「無意識的有能」へ、部下を成長させる「学習の4段階」とは?(6月10日公開)
■第5回 なぜ知識や能力が足りない人ほど「馬鹿の山」に登りたがるのか(6月17日公開)

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筆者:横山 信弘

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