膠原病で生活が一変した38歳独身女性役、桜井ユキ「がんばることが全てじゃない。自分を甘やかすことも必要」NHKドラマ『しあわせは食べて寝て待て』

2025年4月8日(火)12時30分 婦人公論.jp


(『しあわせは食べて寝て待て』/(c)NHK)    

穏やかな日々のなかで自分なりの幸せをみつけていく—。桜井ユキさん主演のドラマ『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合/火曜10時〜)が放送されている。原作は水凪トリさんによる同名漫画。桜井さん演じる麦巻さとこは38歳独身。一生付き合わなければいけない病気「膠原病」にかかり、仕事も生活も一変。週4日のパート勤務になり、マンションの更新に悩むことに。90歳の大家・鈴(加賀まりこ)と薬膳に詳しい謎の同居人の司(宮沢氷魚)と出会ったことをきっかけに、引っ越した先は築45年の団地。さとこは暮らしに薬膳を取り入れ、団地の住民に見守られながら「できないこともある今の自分」を受け入れていく。

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さとこの成長物語


がんばることが全てじゃない。ドラマを見て「明日、ゆっくりしようかな」と感じてもらえたらいいなと思っています。『しあわせは食べて寝て待て』というタイトルが素敵ですよね。食を大切にするドラマだけれど、それだけではないんです。膠原病にかかって、人生が一旦立ち止まってしまっているさとこが、人との関わり合いの中で成長していく物語です。

人間関係で悩んでいる方ってたくさんいらっしゃると思うんです。私も「誰とも関わらずに1人でいた方が楽だ」って思ったこともあるんですが、それでは何も広がらない。一歩踏み出して人と関わってみたり、住む場所を変えてみたり、何か自分に新しい要素を一つでも入れていくと、予期せぬ成長や自分の魅力に気づける。それを日常の中で見つけていけるっていうのがこの作品の魅力だと思っています。

物語はさとこが壁にぶつかってしまうところから始まります。「疲れたな」とか、「今ちょっと人と距離を置きたいな」と思ったら置いていい。自分を甘やかす勇気も必要。必ずしも前に進むことや頑張ることが全てではない。「休んでいいんだよ」っていうことを感じてもらえるドラマじゃないでしょうか。

「友達になりたい」


さとこは、根の部分はすごく芯の強い女性。「自分はこういう人だ」って思っていても、アクシデントが起こったときにそういう自分でいられなくなってしまうことは誰でも起こりうる。

弱い部分もあるけれど、「ここに飛び込んでみよう」というエネルギーや、「この人の言っていることを実践してみよう」って思う素直さはさとこの魅力だし、強み。さとこが実在したら、ぜひ友達になりたいです。

さとこが団地に引っ越したのは「もしかしたら何か変わるかもしれない」って飛び込む感覚だったと思うんです。私も同じような経験はあります。

19歳で福岡から東京に上京したのですが、それはまさに、「ええい!やってみよう」という気分でした。その時は1年でいったん故郷に戻ったのですが、振り返るとやっぱりいい経験でした。

忙しくても自炊、薬膳を身近に感じて


さとこは38歳で、私も同じ年。私は35ぐらいから、無理をしてしまうとそのひずみが如実に体に出てしまうようになりました。女性ならではの体調の変化も出てきます。

健やかに過ごすために、どんなに忙しくても自分の家でご飯を作って食べることは、心がけています。時間がなくてお腹を満たすだけのような食事を買ってパパッと食べていた時期もありました。そうすると、肌が荒れたり、おなかの調子が悪くなったり。食べることが面倒くさくなってどんどん元気もなくなって負のスパイラルに入ってしまう。20代前半で体調を壊してからは野菜を多めにしたり、納豆を毎日食べたり、食事に気をつかうようにしています。この作品に携わってからは、「食って大事だな」ってしみじみ思うようになりました。

私は火鍋が好きで薬膳料理のお店にも行くんですが、薬膳について漠然としたイメージしかありませんでした。ちょっと難しいスパイスとか手に入らない材料を使うイメージ。でも、原作を読ませていただいて、身近な食材を使って薬膳を生活に取り入れられると知りました。撮影中に家で季節の野菜を食べているときに「これも薬膳かな」と感じています。

さとこって、食事の時間を堪能するんです。テレビを見ながら食べたり、何かをしながら食事っていうのを絶対にしない。きっと「これはレンコンが入っているな」とか思いながら食べている。私自身は、「よくないな」って思いながらも、台本を読みながら食事をしてしまうんです。たまに「はっ」となって、テレビを消したり、ランチョンマットを敷いてみたりしますけど。さとこのように、一つ一つの食材をかみしめながら食べる感覚は、持っておきたいです。

「鈴さんみたい」な加賀まりこさん


鈴や司との出会いによって、さとこは変わっていきます。前の会社でいろいろあったから、すごく気を使いながら人と接してしまう。そこにあまり深く物事を考えず積極的に来てくれる、鈴さんのパワーはすごく大きかったと思います。


(『しあわせは食べて寝て待て』/(c)NHK)    

さとこのように「行きたいけど行けない人」もたくさんいる。だから、鈴さんがある種強引に「こっち来なよ」って手を引っ張ってくれる力強さに戸惑いながらも魅力に感じたんだと思います。

加賀まりこさんは、本当に鈴さんみたいな方。大先輩ですし、初共演で緊張していた部分もあるんです。初めてお会いしたとき、私の喉が枯れていたら「喉痛いの?これ飲んだらいいよ。私いつも飲んでいるの」って特製のドリンクをくださった。初対面でそれができてしまう加賀さんの優しさやまっすぐさに触れて「鈴さんだ」って思いました。

司は、近すぎず遠すぎずの絶妙な距離感で優しさを置いて離れていく。それが心地よかったんだと思います。演じている宮沢さんは、とても透明感のある方で。司というキャラクターは凄く難しいと思うんです。醸し出す柔らかさ、優しさだけではない「司の抱える何か」を常に腹底に抱えてなくてはいけない。そこを絶妙な塩梅で演じられている宮沢さんは一緒にお芝居をさせていただいていて本当に素敵だなと思っています。

「今年こそキャンプを」


これまでは割と意思の強い人物を演じることが多くありました。俳優の仕事は、自分の中のいろんな感情を使う。トラウマ的に嫌だなって思っていた感情でも、改めて引き出しを開けて、役として出したときに、「あの時はこう思ったけれど違うかも」と再度向き合うきっかけにもなる。他人を演じていながら、「もしかしたらこういう人生を歩んでいたかもしれない自分」という感覚です。そういう意味では、常に自分と向き合っているので、苦しいときもある。でも、自分を磨くきっかけにもなるし、正解も終わりもない作業をずっとやっているので飽きることもないですね。

今回のように、今まであまり演じたことがないような役をオファーいただくこともありますし、仕事に関しては、あまり自分でいろんなことを決め打ちしないようにしています。いろんな方に「桜井をこの役にしたら面白いんじゃないか」と想像してほしい。

プライベートでは、自然の中で生活するっていうことにすごく興味があります。今までグランピングは経験しましたが、キャンプ道具を買ったところで終わっているので、今年こそキャンプに行きたいですね。

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