伊藤叡王 「辛抱強く」成香活用 8段目→4段目 2勝1敗で連覇へ王手
2025年5月4日(日)21時5分 スポーツニッポン
将棋の伊藤匠叡王(22)に斎藤慎太郎八段(32)が挑む第10期叡王戦5番勝負は4日、名古屋市の料亭「か茂免」で第3局が指され、先手・伊藤が午後8時15分、151手で勝利した。最後は両者1分将棋突入の熱戦。対戦成績を2勝1敗として連覇へ王手をかけた。
「先手番ながら苦しい展開で、そこは課題が残った。それでも秒読みに入ってから辛抱強く指せた」。1勝1敗で迎え、第3局を制した棋士が先に王手をかける重要対局。今期は3局連続の相掛かりで「相掛かりシリーズ」となった。
終局後、伊藤が語った「辛抱強く」。その象徴が73手目、9筋に成った左香だった。75手目で8段目まで進めながらその後、自陣へ引き付けて87手目では4段目へ。56手目、斎藤の3段目への金上がりに対し、45分余り長考した局面では「見通しが甘く、苦しい展開かな」。苦戦を意識したそうだが、左辺でにらみを利かすカナ駒とし、最後は寄せにまで生かした。
「4段目まで来るのは珍しい。辛抱強く指そうと思ったので」。感情を抑えて振り返った伊藤に対し、斎藤は「成香にすごく活躍されてしまった。中終盤の精度を欠いた」。敗因を率直に語った。
伊藤は藤井聡太王将(22)=7冠=に挑んだ前期、1勝1敗で迎えた名古屋対局に勝利し、タイトル戦敗退なしの藤井から3勝2敗で初めて勝利する第5局へつなげた。今回も「歴史は韻を踏む」と、できるだろうか。
第4局は26日、千葉県浦安市のハイアットリージェンシー東京ベイで指される。「次まで間隔が空く。もっと中盤の精度を上げられるようにやっていく」。対する斎藤は「中終盤の大事なところで間違えた。次回はよい将棋を指したい」と巻き返しを誓った。