「イチロー」でも「ランディ・バース」でもない…過去“打率4割バッター”の座に最も近付いた「伝説の助っ人」とは

2025年5月11日(日)12時10分 文春オンライン

 プロ野球の打者は「打率3割」を残せば1流といわれ、これまで規定打席に到達して「4割」を残した選手はいない。ただ、そこに肉薄した選手はいた。そしてそれは「イチロー」でも「バース」でもない——。プロ野球は、記録を見るともっと楽しくなる。『 野球の記録で話したい 』(広尾晃著、新潮社)から一部抜粋し、お届けする。(全3回の1回目/ 2回目を読む / 3回目を読む )


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「打率4割」に肉薄した打者とは? ©Wakko/イメージマート


過去最も打率が高かったのは「バース」


「4割打者」はプロ野球にとって「夢の数字」だ。しかしNPBでは過去に誰も達成していない。


 上にシーズン最高打率10傑を示した。1986年、阪神の21年ぶりの優勝の翌年、2年連続三冠王となったバースが記録した.3885がNPB、セ・リーグ記録だ。2000年のイチローがこれに1厘2毛差に迫った。これがパ・リーグ記録。


 イチローは翌年、MLBのマリナーズに移籍する。10傑のうち9人が左打者。右打者では2008年、内川聖一が記録した.378が最高だ。


最も「4割打者」に肉薄した選手とは


 実は「4割打者」に最も肉薄したのは、6位の1989年の巨人、ウォーレン・クロマティだ。この年のクロマティは開幕から好調で、4月を終えた時点で71打数30安打、打率.423、5月も80打数34安打、通算で.424だった。


 しかし6月は78打数26安打、月間.333 とやや勢いが衰え、通算打率は.393と4割を切った。7月に入って当たりが止まり、6日には打率.381まで下がったが、ここから再び勢いを盛り返し、チーム97試合目の8月20日にシーズン規定打席(403)に到達して、349打数140安打、打率.401と4割をキープしていた。


 ここから全休すれば、クロマティは「史上初の4割打者」になったはずだが、ペナントレースの最中でもあり、それが許されるはずもなく、その後も試合に出続け最終打率は.378に落ち着いた。


 規定打席未達なら4割打者は結構いるのではないか、と思うかもしれないが、シーズン打率4割は少ない打席数でもなかなか難しい。


2017年、怪我に泣いた「まぼろしの4割打者」


 シーズン4割打者の打席数10傑を記す。2017年の日本ハム、近藤健介がただ一人、100打席以上に立って打率4割をキープした。


 この年の近藤は春先から好調で、6月6日まで.407、開幕から50試合目での4割キープはパ記録だったが右太ももを痛めて戦線離脱。9月28日に復帰して以降も好調を維持し最終的には.413だった。


 近藤健介の記録で目立つのは四球の多さ。69安打に対し60四球もある。打率を上げるためには安打を打つだけでなく分母である打数をできるだけ小さくする必要がある。選球眼が良いことは4割を打つうえでは重要なポイントと言えよう。


 5位のタイガース、小川年安の記録は、プロ野球最初のシーズンである1936年春夏に記録された。この季はチーム成績のみ表彰して個人記録はなかった。タイガースの試合数は15試合、今流の規定打席を当てはめれば47となり、49打席の小川はクリアしている。打席数は極めて少ないが、個人記録の制度がこの時点であれば、初代首位打者、そして唯一の4割打者だったことになる。藤原真、石井茂雄は投手。打数が少なければ、たまたまラッキーヒットが続くこともあるのだ。


 シーズン序盤に100打席以下で4割を打つ打者は毎年のようにでている。しかし好調を維持してシーズン終盤まで4割をキープする選手は、ほとんどいないと言うことだ。

〈 イチローの「4367本」でも王貞治の「868本」でもない…現代野球で最も破るのが難しい“アンタッチャブルレコード”とは 〉へ続く


(広尾 晃/Webオリジナル(外部転載))

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