『べらぼう』誰袖(福原遥)の艶やかな花魁道中に視聴者最注目 第18話画面注視データを分析
2025年5月18日(日)6時0分 マイナビニュース
●瀬川(小芝風花)とはまた違った風情
テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、11日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(総合 毎週日曜20:00〜ほか)の第18話「歌麿よ、見徳は一炊夢」の視聴分析をまとめた。
○もはや少女の頃の面影はない
最も注目されたのは20時39〜41分で、注目度77.0%。誰袖(福原遥)の艶やかな花魁道中のシーンだ。
日暮れの吉原では花魁道中が行われていた。花魁のあまりの美しさに多くの見物客が歓声を上げる。道中の中心にいる誰袖に、もはや少女の頃の面影はない。
その頃、駿河屋では、蔦重(横浜流星)が朋誠堂喜三二(尾美としのり)が書いた『見徳一炊夢(みるがとくいっすいのゆめ)』を読んでその出来栄えに大喜びしていた。腎虚の際に見た悪夢を糸口に書き上げた作品である。
喜三ニの息子も絶好調だなどとくだらない話をしていると、誰袖が喜三ニを迎えにやって来た。一作書き上げた喜三二への蔦重からの報酬である。「どうぞ、兄さんもご一緒に」蔦重は抜かりなく誘いをかけてくる誰袖を軽くかわしてその場を去った。
○「小悪魔的な色気が出ていい!」
注目された理由は、瀬川(小芝風花)とはまた違った風情の誰袖の花魁道中に、視聴者の視線が「クギづけ」になったと考えられる。
前回、初登場を果たし、オフモードで暴れまくっていた誰袖だが、今回は初めてスイッチの入ったオンモードの姿を披露した。花魁として堂々たる風格を備えていた。女優はすごい。しっかりと稽古を積み、花魁にまで上り詰めたその姿は、瀬川とは違った魅力にあふれた見事なものだった。
SNSでは、「誰袖さんの花魁道中、あどけなさが残りつつも小悪魔的な色気が出ていい!」「花魁モードの誰袖ちゃん、昼間とはまた違う印象があるね」「瀬川は粋でクールな色っぽさだったけど、誰袖ちゃんはキュートで愛らしいって感じ」といったオンオフのギャップや、瀬川との対比に言及するコメントが集まった。
瀬川を演じた小芝風花の評判が非常に高かったため、福原遥には相当のプレッシャーがあったと推察されるが、福原の素晴らしい好演によって視聴者は誰袖の虜となっているようだ。
女郎は細かく階級が分かれており、花魁の中でも3つのランクがある。上から呼び出し、昼三、附廻だが、誰袖は史実では呼び出しなので、まさに大文字屋のナンバーワンと言えそうだ。一般の女郎は格子戸のある部屋の店先に座り、外を通る客に自分の姿を見せて客引きを行った。これを張見世という。しかし呼び出しは駿河屋のような引手茶屋を通じて客に指名され、花魁道中を行って直接迎えに行く。
喜三ニがてんやわんやの末に仕上げた『見徳一炊夢』は、友人である恋川春町(岡山天音)の執筆した『金々先生栄花夢』とよく似た構成の話で、短い時間の中で見た夢が壮大な物語になっている。主人公の清太郎という金持ちの息子が、親の金を盗んで夢を買い、日本中で豪遊。夢の中で70歳になった清太郎は家に戻るが、その時には家は没落していた。しかし実際は、放蕩三昧をしたことも、実家が落ちぶれていたことも、清太郎がそば屋に出前を頼んでそばが届くまでの短い間に、居眠りをして見た夢にすぎなかったという話だ。この作品は蔦重にとって後々大きな意味を持つようになる。
●捨吉(染谷将太)の壮絶な過去に衝撃
2番目に注目されたのは20時27分で、注目度76.4%。捨吉(染谷将太)の壮絶な過去が明かされるシーンだ。
捨吉によると、母親(向里祐香)は夜鷹と呼ばれる下級遊女で、身籠もった捨吉を何度も堕ろそうとしたが、堕胎はならずに捨吉が生まれた。そんな母親だったので、捨吉は蔑まれながら生きてきたが、なんと7歳で男に売られた。ひどい扱いであったが、金を稼ぐと機嫌が良くなる母親を見て、捨吉はうれしく思ったと言う。母親にはヤスという情夫がいた。向こう傷の男(高木勝也)だ。捨吉はヤスから日常的に捨吉に暴力をふるわれていた。
そんなある日、捨吉は1人の老人と出会う。その老人こそ妖怪画の第一人者・鳥山石燕(片岡鶴太郎)だった。石燕は捨吉と過ごすうちに、捨吉が持つ絵の才覚を見抜いた。石燕からちゃんと絵を学んでみないかと誘われた捨吉は、母に絵を学びたいと話すと激しく折檻を受けた。
そして「明和の大火」が起こる。猛火の中、崩れた家の下敷きとなった母親に足首をつかまれた捨吉は、母の手を振り払いその場から逃げ出した。蔦重と出会ったのはその直後である。その後の蔦重と過ごす時間は、捨吉にとって幸せそのものだった。しかしそこにヤスが現れた。ヤスに脅され、蔦重を裏切った捨吉はヤスと心中するつもりで川に飛び込んだが、またもや死ねなかった。自責の念にさいなまれる捨吉は、自分を傷つける生活を送ることでこれまで生き延びてきたのだ。
○「唐丸の笑顔の裏にこんな重い過去を…」
このシーンは、捨吉のつら過ぎる過去に視聴者の関心が集まったと考えられる。
捨吉は吉原で過ごしていた頃、記憶喪失を装っていたが、その過去は記憶を消したくなるほどに過酷なものだった。実の母親から身体を売るよう強制され、その母親を火事場で見殺しにし、執ようにつきまとうヤスの命を奪った捨吉は、自分が生きる価値のない人間だと考えている。いつ死んでもいいと思っていた捨吉に、「俺のために生きてくれ」と蔦重は懇願し、捨吉は歌麿として生きていくことを決意した。
SNSでは、「捨吉の母親が怖すぎる…」「捨吉と喜三ニ先生の場面のギャップが大きすぎる」「あの唐丸の笑顔の裏にこんな重い過去を秘めていたなんてつらすぎる」と、捨吉の衝撃的な過去が話題を集めた。ちなみに母の日にこのような毒親のエピソードを放送するNHKのトガりようにも話題が集まっている。
今回、捨吉はふじ(飯島直子)の尽力により勇助という人別を手に入れることができた。史実でも、幼いころの苗字は北川、名は市太郎だったが、のちに勇助と改めている。また、絵師としては北川豊章という号で当初は活動していたが、蔦屋重三郎に見いだされ、蔦屋の本姓である喜多川を名乗るようになった。
また、5年前ヤスが捨吉をゆすっていたネタは母親を見殺しにしたことであると判明した。現代の感覚では母親を見捨てた捨吉の行為は脅しのネタとして成立するのか疑問に感じるが、救助する能力があったにもかかわらず、積極的な救助活動を行わなかったという点で「不作為」という罪に該当すると推察される。
江戸時代の基本法典である「公事方御定書」では、現代の刑法よりも多くの不作為犯に関する規定が存在した。そちらによると、子ども・召使・弟子は、親・主人・師匠が生命の危機に瀕した場合、救助する義務を負い、その義務を怠ると重い刑罰が科せられたのだ。特に親子関係においては、死刑が適用された。江戸町奉行の記録には、火災に遭った親を救助できなかった子どもが打ち首になった事例が記されているので、捨吉が死刑に処される可能性は十分にあったと考えられる。
●半裸でうつぶせになっていた捨吉
3番目に注目されたシーンは20時22分で、注目度74.4%。蔦重が明け方に捨吉を訪ねるシーンだ。
行方不明になって早5年、ようやく唐丸と思われる男・捨吉を見つけ出した蔦重。しかし、捨吉は自分は唐丸ではないとしらばっくれていた。納得のいかない蔦重が早朝に捨吉の長屋を訪ねると、捨吉が半裸でうつぶせになり倒れている。蔦重が慌てて駆け寄り声をかけると、捨吉はすぐに目を覚ました。
押し込みでも入ったかと尋ねる蔦重に、捨吉は手荒い客をとったことを話す。「あのよ…この暮らしがいいのは、早く死にてえからか?」と切り出す蔦重に、「聞いてどうすんです、そんなこと」と、捨吉は投げやりに答えた。「俺ゃ、お前がいなくなって後悔したんだよ。いざとなりゃどこの誰だか分かんなくて…何でもっとしつこく聞いとかなかったのかって」と苦渋の表情を滲ませる蔦重に、捨吉は心を動かされた。
○蔦重のファインプレーが捨吉を救う
ここは、捨吉のただ事とは思えない状況に視聴者の関心が集まったと考えられる。
蔦重は捨吉が身体を売っていると聞かされても動揺しなかったが、自宅で半裸で倒れている姿にはさすがに焦っていた。捨吉の自暴自棄な態度は、罰を受けて楽になりたいという気持ちの表れなのではと考えていた蔦重は、その考えに確信を持った。
SNSでは、「捨吉って名前自体が、自分なんてどうでもいいって感じが伝わってきて苦しい」「どう見ても塩梅を心得ている客じゃなかったよな」などの投稿が寄せられている。あんな生活を続けていたら、捨吉は本当にいつか死んでいただろう。ファインプレーの蔦重だった。
実は当時の江戸は女性よりも圧倒的に男性が多く、男余りの状態だったため、男性専門に体を売る男娼「陰間(かげま)」が非常に需要があった。もともと、僧侶・貴族・武家の間で流行っていた衆道は、江戸時代に入ると庶民にも広がっていった。陰間茶屋という陰間が売春をする居酒屋・料理屋も存在していた。
作中の男色家といえば平賀源内(安田顕)が真っ先に思い浮かぶが、史実では源内は『江戸男色細見菊の園』『男色評判記男色品』といった案内書を発行している。それによると一刻(約2時間)で1分(4分の1両)、1日買い切りで3両かかったそうだ。1両が現在の価値で約10万円なので、約2時間で約2万5千円、1日買い切りで約30万円になる。
ついに蔦重グループに加わった捨吉・喜多川歌麿を演じる染谷将太は、トイズファクトリーに所属する東京都出身の32歳。蔦重役の横浜流星より4歳年上だ。大河ドラマは2003年『武蔵MUSASHI』、2010年『龍馬伝』、2011年『江〜姫たちの戦国〜』、2020年『麒麟がくる』に続いて6度目の出演となる。『麒麟がくる』での織田信長の好演は記憶に新しい。『べらぼう』ではどのような歌麿を見せてくれるのか期待が高まる。
ちなみに染谷の配偶者は、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で主人公・北条義時の3番目の妻・のえを怪演して話題を集めた菊地凛子だ。
●「番組の一部に性に関する表現があります」テロップが話題
第18話「歌麿よ、見徳は一炊夢」では、前回に引き続き1780(安永9)年の様子が描かれた。
冒頭で流れた「番組の一部に性に関する表現があります」とテロップが話題となっている。本編ではついに唐丸(渡邉斗翔)の秘められた過去が明かされ、蔦重・歌麿のコンビが復活するという展開となった。
注目度トップ3以外の見どころとしては、大蛇を切り捨てるいね(水野美紀)が挙げられる。どういうわけか大蛇となった喜三二の息子をいねは一刀のもとに成敗したが、全ては喜三ニの夢だった。
SNSでは、「『ありがた山スペシャル』でいねさんが触れたのはこのシーンだったのね」「いねさんのかっこよさにときめいた!」「いねさんが任侠物の姐さんみたい」と、いねの勇ましい姿にコメントが集まった。股間を斬り落とされる悪夢を見て執筆のネタにする喜三二は、転んでもタダでは起きない変わり者だ。
そして、蔦重の気持ちを汲んで捨吉に戸籍を用意したふじにも注目が集まっている。蔦重が唐丸の生存を信じていることを知ったふじは、さりげなく四郎兵衛に人別の手配を命じていました。さらに捨吉を養子にするため、反対する駿河屋市右衛門(高橋克実)の説得もするなど目覚ましい活躍ぶりに、「ふじさんの侠気、ステキ!」「あれこれ言わないけど、ちゃんと蔦重を見ているいいお母さんだな」「ふじさんの『ん』がいいね」と、SNSでは称賛が寄せられている。
また、十代将軍・徳川家治(眞島秀和)と大声で笑いあう田沼意次(渡辺謙)も印象的だった。めずらしくあくびをする家治だが、その原因は鶴子(川添野愛)のようで意次にとっても良い展開。しかし、その直後に侍従から家治の側室・知保の方(高梨臨)が毒をあおったと知らされ場の空気が一変した。家治に宛てた手紙が気になる。
きょう18日に放送される第19話「鱗の置き土産」では、鱗形屋閉店に伴い、鱗形屋お抱えの恋川春町の争奪戦が始まる。そして江戸城では家治に忠誠を誓う意次の姿が…。
REVISIO 独自開発した人体認識センサー搭載の調査機器を一般家庭のテレビに設置し、「テレビの前にいる人は誰で、その人が画面をきちんと見ているか」がわかる視聴データを取得。広告主・広告会社・放送局など国内累計200社以上のクライアントに視聴分析サービスを提供している。本記事で使用した指標「注目度」は、テレビの前にいる人のうち、画面に視線を向けていた人の割合を表したもので、シーンにくぎづけになっている度合いを示す。 この著者の記事一覧はこちら