米国製ハイマース一斉射撃で全滅…北朝鮮の「切り札」兵器
2025年4月17日(木)4時44分 デイリーNKジャパン
ロイター通信は15日、英国の独立調査機関オープンソースセンター(OSC)と合同で分析した結果として、北朝鮮がウクライナ戦争で20カ月間にロシアに供給した砲弾は数百万発にのぼると見られると報じた。
暴発が頻繁に起きるなど性能面で悪評の高い北朝鮮製の砲弾ではあるが、数百万発ともなれば、ロシア軍が戦争を継続するうえで無くてはならない資源となっていると言えるだろう。
ロイターとOSCは、2023年9月から最近まで20カ月にわたり北朝鮮羅津(ナジン)港とロシア極東ボストーチヌイ港とドゥナイ軍港の間を行き来した船舶4隻を追跡。その結果、約1万6000個のコンテナが運ばれていたことが判明した。弾薬量にして、砲弾400万〜600万発と推定されるという。
ロイターはまた、ウクライナ軍の情報関係者らの話として「北朝鮮はロシアが戦線で必要とする弾薬の半分を供給している」「北朝鮮の寄与度は高ければ70%に達する」とも伝えた。
北朝鮮はこうした軍事支援の対価として、ロシアから軍事技術協力などを受けるとともに、自国の軍事装備を更新する機会も捉えていると見られる。
ウクライナ軍は3月、北朝鮮製170mm自走砲「M1989」3台からなるロシア軍の砲兵部隊が、米国製ハイマースの一斉射撃で全滅させられた映像を公開した。
M1989は有事に軍事境界線の北側から、韓国の首都・ソウルを直接攻撃する目的で開発された。射程は自走砲としては長大な54キロに達する。1990年代、北朝鮮は「ソウルを火の海」にすると公言して威嚇したが、そのための主力兵器がこうした自走砲だった。
つまり核武装を実現する前まで、北朝鮮にとって「切り札」とも言える兵器だったわけだ。
ところが北朝鮮は、これを惜しげもなくロシアに提供している。旧式で砲台に装甲がなく、兵員が露出しているM1989は、ハイマースより火力に勝る米国製MLRSや韓国製K239チョンムを装備する米韓軍の前では役に立たない。
北朝鮮も新型の多連装ロケット砲を開発していることもあり、「もういらない」ということでロシアにあげてしまったのだろう。