原子力機構など、単一のスピンが2つのスピンのように振る舞う新現象を発見

2025年4月3日(木)17時36分 マイナビニュース


日本原子力研究開発機構(原子力機構)、電気通信大学(電通大)、量子科学技術研究開発機構(量研機構)、千葉大学の4者は4月2日、「核磁気共鳴(NMR)法」を用いた独自開発の装置を用いて、原子核が持つ最小の磁石であるスピンを磁場中で回転させたところ、単一のスピンがまるで2つのスピンのように振る舞う、既知の物理では説明のつかない新しい現象を発見したと共同で発表した。
同成果は、原子力機構 原子力科学研究所 先端基礎研究センター スピン-エネルギー科学研究グループの中堂博之研究主幹、東京大学の横井直人研究員、同・齊藤英治教授、電通大の鈴木淳准教授、中国科学院大学の松尾衛准教授、千葉大の佐藤正寛教授、量研機構の針井一哉主任研究員、原子力機構の今井正樹研究員、理化学研究所の前川禎通教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。
量子コンピュータなどの有用な量子情報処理には、量子情報のエンコードが不可欠だ。近年、単一の物理系で複数の量子情報を扱うため、量子状態を多重化する手法が注目されている。例えば単一の光子は、偏光、経路、時間、角運動量の自由度など、複数の異なる形式で量子ビット情報を担える。また中性子干渉法では、スピン、経路、エネルギーなどで複数の量子ビットをエンコードでき、多重の情報がもつれ合った状態など、基本現象を実証済みだ。しかし、他の物理系での多重化状態の実現は課題の1つとなっていた。そこで研究チームは今回、量子情報の新たな多重化の担い手として原子核スピンに着目し、その多重化を目指して力学的な回転運動とNMRを組み合わせたという。
今回の研究で重要な役割を果たしたのが、測定試料と同一の回転速度で核磁気共鳴測定を可能にする独自開発の装置だ。高速回転ローター内部には、2つのコイルと1つのチップキャパシタで校正される共振回路が組み込まれており、その共振周波数は測定周波数に調整されている。2つのコイルのうち一方は信号測定用であり、測定対象の試料(今回の実験では「六フッ化ベンゼン」、測定対象はフッ素の核スピン1/2)が内部に配置される。もう一方のコイルは無線通信用で、これを用いることで高速回転(1kHz)させながら回転系での核磁気共鳴が実現された。
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