東北大、消費電力を2~3桁低減した人工神経ネットワークを実現

2025年4月18日(金)19時20分 マイナビニュース


東北大学は4月16日、MOSトランジスタのゲート電圧がしきい値電圧以下の「サブスレッショルド領域」で動作するアナログCMOS回路を用いることで、生物の脳神経ネットワークに着想を得た「スパイキングニューラルネットワーク」(SNN)において、従来のSNN実装と比較して2〜3桁少ない超低消費エネルギーでの動作を実現したことを発表した。
またリザバー・コンピューティングを用い、今回開発した回路が音声信号認識課題に応用可能であること、またアナログ回路の応用で課題となる製造ばらつきや温度変化に対しても、影響を吸収し安定した情報処理が可能であることを示したことも併せて発表された。
同成果は、東北大 電気通信研究所の守谷哲特任助教、同・佐藤茂雄教授らの研究チームによるもの。詳細は、IEEEが刊行する回路技術のシステムと信号処理を扱う学術誌「IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Regular Papers」に掲載された。
SNNは、生物の神経細胞(ニューロン)の発火を模倣しており、神経細胞の内部状態である膜電位が一定のしきい値を超えた時にのみスパイクを発生・伝送することで情報表現や情報処理を行う。スパイクが発生していない時は情報処理が行われない「イベントドリブン」な特性を持つため、消費電力を極限まで抑えられる点が大きな特長だ。これは入力の有無に関わらず、常に計算を行う従来のデジタル回路における逐次処理とは対照的であり、必要な時だけエネルギーを消費する高い効率性を実現する。ただしこの特性を最大限に活かすには、SNNの動作を効率的に実現する専用ハードウェアの製作が必要となる。
SNNの専用ハードウェアは、デジタル回路またはアナログ回路で実装される。アナログ回路では、トランジスタをサブスレッショルド領域で動作させることで、通常のデジタル回路動作と比較して消費電力を100分の1以下にまで抑えることが可能となる。なおサブスレッショルド領域とは、トランジスタのゲート電圧がしきい値電圧より低い領域のこと。そして完全にオフにはならず微弱なリーク電流が流れる状態を利用し、このリーク電流を用いて計算を行うことで、トランジスタをオン/オフさせて大電流を流すデジタル回路に比べ、桁違いに少ないエネルギーで実現できるとする。
しかし、アナログ回路はトランジスタの製造ばらつきや温度変化の影響を顕著に受けるため、サブスレッショルド領域で動作するアナログ回路を用いて、ばらつきを許容した情報処理の実現の可能性は明らかになっていなかった。そこで研究チームは今回、アナログCMOS回路を用いてSNNを構成し、超低消費電力型SNNチップの製作を試みたという。
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