ピッチクロック短縮が原因か 大物投手たちが相次いで肘靭帯損傷で離脱 選手会はMLBに怒りの声明「重大な懸念があった」
球界を代表する剛腕だったストライダー。彼も右肘靭帯の損傷による離脱が決まった。(C)Getty Images
現地時間4月6日、メジャーリーグの選手会は、昨シーズンから導入されたピッチクロック制度に対する声明を発表。トニー・クラーク専務理事が「前例のない脅威だ」と強い言葉でMLBに対する反発を唱えている。
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彼らが異論を唱えるのも無理はない。今シーズンに入ってから肘靭帯損傷する選手が続出。現地時間4月6日には開幕から12イニングで無失点、20奪三振という快投を披露していたシェーン・ビーバー(ガーディアンズ)がトミー・ジョン手術を発表。さらに同日には、昨シーズンに20勝を挙げ、奪三振王にも輝いたスペンサー・ストライダー(ブレーブス)が右肘の靭帯損傷のために長期離脱を公表し、球界を騒然とさせていた。
そもそもピッチクロックとは2023年からメジャーリーグで本格導入がされ、投手は走者なしで15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に投球動作に入る必要がある規定で、打者も制限時間の残り8秒以内までに投球に備えなければならない。これを違反すると投手にはボール、打者にはストライクが宣告される。
試合時間の短縮を目的としたピッチクロックは一定の効果を出していた。昨季のメジャーリーグの9イニング平均の試合時間は2時間40分と前年から25分近くも短縮。スピーディーな試合展開が続いた影響もあり、観客動員数も前年比で9.5%アップの7074万7365人となった。
これを「成功」と踏んだMLBは、今季から秒数をさらに短縮。選手会との議論を重ねないうちにランナーがいる場合の時間を20秒から18秒とした。
一概にピッチクロックだけが故障の原因ではないだろう。滑りやすい球質や過密日程など理由はさまざまに論じられている。だが、十分な検証を済ませていない段階で、ピッチクロック短縮に踏み切ったMLBに選手会は異議を唱えている。
クラーク専務理事は声明において、「選手たちが満場一致で反対し、かつ健康と安全に関して重大な懸念があったにも関わらず、コミッショナーたちは昨年12月ピッチクロックの時間を削減した。この数十年間で最も重要なルール変更から1シーズンしか経っていないのに、だ」と訴え、こう続ける。
「導入以来、リカバリー時間が減ったことが健康に与える影響について、我々の懸念は増す一方だった。そして、こうした深刻な変更の影響をリーグが認識し、深く研究する気がないという事実は、球界において最も貴重な資源でもある選手たちにとって、前例のない脅威だ」
これまでの対応を見ても、メジャーリーグ側がピッチクロックルールを改めるというのは、おそらくない。そうしたなかで、選手会がどう動くかは引き続き注目だ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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