どうなるピッチクロック、オーナー会議が検討指示、日本では牽制制限で盗塁数激増か

2023年7月11日(火)11時30分 ココカラネクスト

 プロ野球のオーナー会議が10日、都内のホテルで開かれ、メジャーリーグで今季導入された新ルールを、日本でも導入するかどうかの検討を始めることを決めた。具体的には①ピッチクロック、②極端な守備シフトの禁止、③ベースの拡大、の3点になる。

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 中でもファンの注目はピッチクロックの導入可否だろう。メジャーリーグでも今季から導入されると、開幕直後には選手、関係者、ファンらから賛否両論が湧き起こった。

 特徴的なのは、開幕前や直後は批判的な声が圧倒的だったこと。そして、開幕後数週間経つ頃には肯定的な声が次第に増えてきたことだ。

 野球は「間」のスポーツと言われる。中でもその「間」を操る優位な立場にいるのが投手だ。その投球間に制限をかけるのがピッチクロック。投手は捕手からの返球を受けてから、走者なしでは15秒以内、走者ありでは20秒以内に投球動作を始めないと、1ボールが科される。逆に打者は残り時間が8秒になるまでに打席で構えるなど準備を整えないと、1ストライクが宣告される。ピッチクロック違反による三振というシーンも、開幕直後にはよく見られた。

 野球というスポーツの本質さえ変えてしまいかねない大胆なルール変更だ。ただし、試合時間短縮という球界が長年抱えてきた難題に対しては、効果はてきめんだった。メジャーリーグの昨季の平均試合時間は3時間3分だったが、6月終了時点での平均試合時間は2時間36分。30分近い短縮は、多くのファンに好意的に受け入れられている。

 ただし、メジャーよりも緻密で細かな作戦が立てられる日本の野球になじむかどうかは、不透明だ。メジャーリーグでは同時に牽制球の回数も制限された。基本的に牽制球は一人の打者に対戦している間は2度まで。3度目からは、走者をアウトにできないと、ボークが宣告されて走者は進塁する。これが影響して今季のメジャーリーグでは盗塁数が圧倒的に増えた。日本でこのルールが適用されると、メジャー以上に盗塁数が激増してしまう恐れもある。

 NPBはメジャーリーグのルール改変を、原則的に1年遅れで反映させてきた。塁上での危険な衝突を禁止する「コリジョンルール」や、際どい判定のプレーをリプレー検証する「リクエスト」などだ。一方で、日本球界は不向きとして導入を見送っているものもある。救援投手のワンポイント禁止ルールや、両リーグともDHとするユニバーサルDHなどがその例だ。

 今回、オーナー会議がピッチクロックなどの導入を指示した背景には、国際大会への適応という問題もあると考えられる。WBCは主催であるメジャーリーグのルールが採用され、次回の2026年大会ではピッチクロックや拡大ベースの採用が確実視されている。プレースタイルさえ大きく変えるピッチクロックに、大会直前の付け焼き刃で慣れさせて臨んでも、適応できないのは目に見えている。会議で議長を務める西武・後藤高志オーナーは「WBCで導入されるかどうかは決まっていないが、ピッチクロックを念頭に置く必要がある。4年はあっという間だ」と説明した。

 現状のメジャー式ピッチクロックを導入するのではなく、どう日本仕様にカスタマイズしていくのか。将来的に導入は不可避にも映る「魔法の時計」を巡って、細心の検討が求められていく。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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