「航なら大丈夫」 吉田麻也らの絶対的信頼を力に“主将”遠藤、リベンジの舞台へ

2022年1月31日(月)19時56分 サッカーキング

主将を務める遠藤航 [写真]=金田慎平

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「航はこれまでもチームの中心としてプレーしてくれていること、そしてポジション的にもチームの真ん中でプレーしている。日本代表の継承をしていく意味でも、経験ある選手と若手の両方の層にコミュニケーションを取れる彼にキャプテンを決めました」

 日本代表の森保一監督が抜擢理由を語った通り、今回のFIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選での中国とサウジアラビアの2連戦では、負傷離脱中の吉田麻也に代わって遠藤航が主将という重責を担っている。

 17歳だった2010年に湘南ベルマーレでプロデビューを飾って以来、湘南、浦和レッズ、リオデジャネイロ五輪代表、そして現在のシュトゥットガルトと、数々のチームでキャプテンマークを巻いてきた遠藤にとって、要職を託されるのは自然の流れだった。

 今の代表には年長者の長友佑都大迫勇也らもいるが、W杯後も始まる年でもある。近未来を視野に入れ、彼に任せるのが最適だったと言える。

 よくよく考えてみれば、宮本恒靖が2002年の日韓W杯でマークを巻いた時は25歳。長谷部誠が2010年南アフリカW杯直前に抜擢された時も26歳だったから、間もなく29歳になろうという遠藤は遅すぎるくらいだ。吉田が中国戦前に「航なら大丈夫」とメッセージを送ってくるのも納得と言っていい。

 緊急登坂を命じられた本人も、全く動じていなかった。

「とにかく今いる全員でしっかり勝ち点3を取ろうという話を試合前にしました。プレー自体は特別に変わることはないので、気負いすぎず、自分のよさを出すことだけにフォーカスしていました」と自然体で中国戦のピッチに立った。

 開始11分に伊東純也がPKを奪い、大迫が先制弾を挙げたことでリラックスして戦えたことも大きかっただろう。後半の伊東の2点目が生まれた段階で、累積2枚目のイエローカードを危惧した指揮官から交代を命じられるまで、遠藤は攻守両面で堂々たるパフォーマンスを披露した。

 ただ、中国相手の勝ち点3は最低ノルマ。真価が問われるのは1日のサウジアラビア戦だ。10月のアウェー戦で苦杯を喫し、崖っぷちに立たされた悔しさを忘れるはずがない。

「サウジはチームとしての完成度が高い。チームが同じ選手も多くて、長くやっている印象が強く、ボールの動かし方もすごく洗練されている感がある。自分たちもブロックを敷いて守るプラス前から行きたい。ボールを持たせながらのカウンターというのもオプションとしてはあるのかなと。アウェーでもチャンスは作れていたので、両方を90分の間で持てればいいと思います」

 遠藤がこう語るように、行くところ、引くところのメリハリを的確につけながら主導権を握ることが、勝利への早道と見ていい。

「相手はボール回しに人数をかけるので、自分たちが簡単に失わないようにすることが大事。でも逆にゴール前にはあまり人数をかけてこないので、正直、ポゼッションからの崩しはあまり怖いものはない。それを考えてこっちもうまくボールを回すことが重要かな」と原口元気も分析していた。そういう意味でも中盤を司る遠藤の一挙手一投足にかかる部分は大なのだ。

 4カ月前のアウェー戦の日本は4−2−3−1だったが、今回は4−3−3で行く可能性が高い。となると、アンカー役の遠藤の両脇を相手が狙ってくる展開も想定される。そこは想定していて、インサイドハーフの田中碧や守田英正を背後から動かしつつ、穴を作らないように仕向けるつもりだ。

 そういった状況判断力とリーダーシップは圧巻。だからこそ、ブンデスリーガの名門クラブでわざわざ主将を任されているのだ。そのうえで、デュエル勝利数でもコンスタントにトップ争いをし続けているのだから、いかに能力の高い人間かが分かる。

「航はドイツ国内で非常に高い評価を受けているし、競り合いやヘディングにも長けているし、セットプレーでも点を取れる。僕とプレースタイルはそんなに似てないけど、評価されているのは嬉しいですし、頼もしく思っています」と昨夏には偉大な先輩である長谷部も大きな刺激を受けていることを明かしていた。だからこそ、遠藤は日本代表の絶対的中心として、もっともっと重要視されていい。

 グループ首位のライバルに勝ち、3月24日のオーストラリアに敵地で勝利できれば、日本は自力で7大会連続W杯出場権を手にできる。しかし、引き分け以下だとグループ3位でオーストラリア戦を迎えることになるかもしれない。その展開だけは絶対に回避しなければならない。

 それはユース年代からアジアの修羅場を経験し続けてきた遠藤にはよく分かっていること。ここで3ポイントを掴むべく、攻撃陣と守備陣のつなぎ役として獅子奮迅の働きを見せるに違いない。

 宮本、長谷部、吉田といったインテリジェンスの高い主将の系譜を継ぐ男に課せられるのは、今回の最終予選最大の山場を最良の形で乗り切ること。大仕事を遂行すべく、彼は持てる力の全てをピッチで示してくれるはずだ。

取材・文=元川悦子

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