3試合連続無失点も慢心なし。川崎フロンターレに根付く長谷部イズム【ACL取材】

2025年2月21日(金)14時0分 FOOTBALL TRIBE

川崎フロンターレ 写真:Getty Images

AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)2024/25のリーグステージ第8節が、2月17日から19日に各地で行われた。川崎フロンターレは18日、本拠地の等々力陸上競技場にてセントラルコースト・マリナーズ(豪州)と対戦。最終スコア2-0で勝利している。


長期政権を築いた鬼木達前監督(現鹿島アントラーズ)の退任に伴い、2025年から長谷部茂利監督(前アビスパ福岡)のもとでACLEを戦う川崎F。今年の公式戦3試合連続で無失点勝利と、長谷部新監督のもとで最高のスタートを切った。


ここではACLEセントラルコースト戦を振り返るとともに、新監督を迎えた川崎Fの戦術的特色や今後の課題に言及する。現地取材で得た長谷部監督の試合後コメントも、併せて紹介したい。




川崎フロンターレvsセントラルコースト・マリナーズ、先発メンバー

新監督仕込みの守備が浸透


この試合における両クラブの基本布陣は、川崎Fが[4-2-3-1]でセントラルコーストが[4-4-2]。川崎Fはトップ下のMF山内日向汰が相手ボール時に味方FWエリソンと横並びになり、[4-4-2]の守備隊形へ移行。この2人が相手センターバックからボランチへのパスコースを塞ぎながら、セントラルコーストのパス回しを片方のサイドへ追いやる意図が窺えた。


相手センターバックがボールを保持した際、ここへ川崎Fの2トップが寄せるという守備の段取りは、長谷部新監督のもとで既に浸透している。このときに相手ボランチへのパスコースを塞ぎながら相手センターバックに寄せるのが守備の約束事となっており、2月15日の名古屋グランパス戦(2025明治安田J1リーグ第1節)から先発メンバーを大幅に入れ替えて迎えたセントラルコースト戦においても、川崎Fの守備の統率はとれていた。


組織的な守備の構築に定評があり、2023年に前任地のアビスパ福岡をYBCルヴァンカップ優勝へ導いた長谷部監督のイズムが、早くも川崎Fに根付いている。今後への期待が膨らむ試合内容だった。




エリソン 写真:Getty Images

限られたチャンスを物に


[4-4-2]の守備隊形で自陣にこもったセントラルコーストを相手に攻めあぐねたものの、川崎Fは限られたチャンスを得点に結びつける。


前半35分、味方MF河原創からの縦パスを山内が相手最終ラインと中盤の間で受けると、同選手が鋭いドリブルで敵陣ペナルティエリア右隅へ侵入。山内が相手FWクリスティアン・テオハルスに倒されたことで川崎FにPKが与えられると、キッカーを務めたエリソンが強烈なシュートをゴールネットに突き刺した(得点は前半36分)。


後半アディショナルタイムには、途中出場のFWマルシーニョが味方MFパトリッキ・ヴェロンの右サイドからのロングパスを受け、相手GKアダム・パフレシッチと1対1に。マルシーニョがパフレシッチの頭上を越えるループシュートを放ち、勝利を決定づけるゴールを挙げた。


長谷部茂利監督 写真:Getty Images

勝って兜の緒を締めた長谷部監督


川崎Fが2トップを起点とする守備で試合を掌握しているように見えたが、長谷部監督はこの日のパフォーマンスに満足していない。セントラルコースト戦後の会見で筆者の質問に答えた同監督は、この日の反省点を率直に語った。


ーお伺いしたいのは、フロンターレの前線からの守備についてです。チームとしての約束事がだいぶ明確だと感じました。だからこそ、大きなピンチを招くことなく今日の試合を終えられたと私は思っています。今日出場した選手たちの守備のクオリティーについて、監督の評価をお伺いしたいです。あと、前線からの守備のスイッチを入れる役割としての、エリソン選手と山内選手の評価もお願いします。


「チームとしての守備についてですが、今日はあまり良いプレーがなかったと思います。決して悪くはなかったとも思いますが、良いボールの取り方が少なかった。大ピンチはありませんでしたけど、ディフェンシブサード(自陣ペナルティエリア付近)まで押し込まれるシーンもありました。そういう意味で、チームとしては今ひとつだったと、タッチライン際(監督が戦況を見守るテクニカルエリア)では感じていました」


「2トップへの評価は、(山内は)PKを獲得しましたし、(エリソンは)PKで得点しましたから、当然評価は良いものです。ただ、もう少しできたんじゃないかな、もう少しチャンスを広げられたんじゃないかなというふうに思っています」


中央を封鎖し、相手のパス回しをサイドへ追いやる守備は長谷部監督のもとで既に浸透しているが、この日は敵陣タッチライン際でボールを奪いきれない場面がちらほら。相手のパス回しをタッチライン際へ追い込んだ後の守備の強度は、川崎Fが突き詰めるべき課題のひとつだろう。


また、この日はセントラルコーストのセンターバックにボールを運ばれる場面も散見されたため、2トップによるボール奪取にも磨きをかけたいところ。ACLEと日本国内のコンペティションを並行して戦う過密日程のなかで、誰が出場しても守備の強度を担保できるか。これこそ、長谷部新監督のもとで上々の滑り出しを見せた川崎Fの見どころだ。




ファンウェルメスケルケン際 写真:Getty Images

攻撃面の課題は


川崎Fがセントラルコースト戦で攻めあぐねた原因は、相手最終ラインの背後を突く動き出しがチーム全体として少なかったこと。この日はボランチの河原が味方DFセサル・アイダル(センターバック)とファンウェルメスケルケン際(右サイドバック)の間へ降りて配球役を担ったものの、このときのファンウェルメスケルケンの立ち位置が低く、それゆえ相手最終ラインの背後へパスを出せない場面がいくつかあった。


ボランチがこの位置で配球役を担ったときは、サイドバックが相手最終ラインと中盤の間に立ち、なおかつ相手最終ラインの背後を狙う姿勢を見せる。出場する選手が誰であれ、この原則は徹底したほうが良いだろう。今回のセントラルコースト戦で、新監督を迎えた川崎Fの伸び代が見えた。

FOOTBALL TRIBE

「川崎フロンターレ」をもっと詳しく

「川崎フロンターレ」のニュース

「川崎フロンターレ」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ