まるでボブスレー。ラリーの雪壁はコーナリング補助装置!?【WRC Topic】

2022年3月11日(金)17時55分 AUTOSPORT web

 2022年のWRC世界ラリー選手権において、シーズン唯一のフルスノーイベントとして開催された『ラリー・スウェーデン』では、多くのマシンのリヤバンパーが外れ飛んでいた。


 ドリフトでコーナリングラインが膨らみ、アウト側の雪壁(スノーバンクとも言う)にマシンのリヤが当たるシーンがかなり多く見られたが、ドライバーはある程度マシンを雪壁に当てることを前提に走っている。コーナーにややオーバースピードで入り、ドリフトアウトする先の雪壁にマシンを当てて向きを変えるスノーラリーの伝統的テクニック“雪壁走法”である。


 近年、ラリー・スウェーデンは降雪量が全体的に少なく、路肩に雪壁がなかったり、あったとしても高さが低いことが多かった。そうなると雪壁に当てて向きを変えることはできず、抑え気味の運転をしなくてはならない。しかし、2022年は開催地がこれまでより約600km北に移り、積雪量は充分。雪壁もかなり高く、雪壁走法が非常に有効だった。


 北欧出身のドライバーは雪壁の使いかたが非常にうまく、当たってもいい雪壁と、当ててはいけない雪壁を、コースの下見(レッキ)の時からチェックしている。壁が硬すぎるとクルマのダメージが大きくなり、逆に軟らかいと突っ込んではまってしまったり、最悪の場合突き抜けてコースアウトすることもあるのだ。


 今年は、優勝争いをしていたトヨタのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が最終コーナーでアウト側の雪壁を乗り越え、仮設の照明設備に激突した。幸いにもマシンにダメージはなくタイムも有効だったが、もしそこに大きな木があったら大変なことになっていただろう。


 過去、ラリー・スウェーデンで5回優勝した元世界王者のマーカス・グロンホルムは「好きなラリーはスウェーデン、楽しめないラリーはフィンランド」と言う。


 どちらも似たような地形で行われる超高速ラリーだが、冬のスウェーデンはコースオフしても雪壁に護られることが多いが、夏のフィンランドは木に激突するリスクが高い。地元のラリー・フィンランドで7回も勝ったグロンホルムであっても、フィンランドでは森の中に突っ込む恐怖とつねに戦いながら走っていたという。


 ちなみに、雪壁の当てかたにもいろいろ方法があるが、ラリードライバーの新井敏弘は「壁に対してできるだけ浅い角度で、リヤのサイド全体を当てるのがベスト」という。リヤの角の部分を当てるとバンパーが外れてしまったり、反動ではじかれ今度はフロントの角が当たって、あらぬ方向に飛んでいくことが多いからだ。


 そして、今回のラリー・スウェーデンで、もっとも雪壁をうまく使っていたのは、GRヤリス・ラリー1で優勝した、トヨタのカッレ・ロバンペラだった。さすがは、8才の時からクローズされた氷雪路でドリフトの練習をしていただけのことはある。

優勝したカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第2戦スウェーデン
オリバー・ソルベルグ(ヒュンダイi20 Nラリー1)はヒュンダイが期待を寄せる若手有望株のひとり。 2022年WRC第2戦スウェーデン
総合2番手で迎えたラリー最終日に、ハイブリッドシステムのトラブルでリタイアを喫したエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第2戦スウェーデン
初日、いきなりスノーバンクにスタックしデイリタイアを喫したクレイグ・ブリーン(フォード・プーマ・ラリー1) 2022年WRC第2戦スウェーデン

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