【津川哲夫私的F1新車解説】体制変更のアルピーヌF1。車体とパワーユニットの向上にはまだ時間が必要か

2021年3月12日(金)14時45分 AUTOSPORT web

 今シーズンからアルピーヌを名乗るルノーF1はフェルナンド・アロンソの復帰を得て、パワーユニット/エンジン(PU)もアルピーヌ・ワークスだけの言わば独占使用となる。


 本来、この条件ならばかなりの期待感を持つところだが、アロンソンはシーズン前に自転車事故で顎の骨を骨折、リハビリのためにシェイクダウンはエステバン・オコンひとりで行った。開幕までにアロンソの怪我は回復はするだろうが、チームや周囲のモチベーションはやはり下がってしまう。


 肝心のワークスPUは昨年のRE20の発展型で、アルピーヌはRE20のB仕様と言う考え方を示し、型式名をRE20Bとしている。

アルピーヌF1の2021年型マシン『A521』


 現実的にはエアインテーク、チャージタンクを大型化してPUのインレットを中心に変更が加えられ、昨年苦しんだ信頼性の確保とトップパフォーマンスの向上が狙われているが、他のライバルメーカーは大幅な開発型PUを投入してくるので、昨年のPU勢力図を覆すのは難しそうだ。


 また、昨年にチームのマネージメントに大幅な変更が加えられた。スズキMOTO GPチームからダビデ・ブリビオが移籍し、シリル・アビタボールに変わってチームのマネージメントを統括、これまでつながらなかったビルシャチオン(フランス、PU部門)とエンストン(英国、シャシー部門)間の疎通を計り、チーム力の向上を計っている。しかしその成果を見るにはもう少し時間がかかりそうだ。


 今季型のニューマシンA521は事実上、昨年のRS20の今シーズン規則仕様車で、少なくとも発表された写真に目に付く大幅な変更は見つけ難い。もちろん、フロアとインダクションエリアとエンジンカバーに見た目の変更はあるが過激性はなく、失ったダウンフォースの回復は簡単ではなさそうだ。

アルピーヌF1の2021年型マシン『A521』


 A521の戦場はミッドフィールドで、マクラーレンやアストンマーティン、アルファタウリ等のプライベーターとの激しい争いは避けられないところだが、この争いこそがファンにとっての至極のレースとなる。

アルピーヌF1の2021年型マシン『A521』


《プロフィール》
津川哲夫(つがわてつお)

1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。

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