ERC:往年の名手2世、リンドホルムがMRFタイヤ陣営に加入。ロシアン・ロケットも再契約
2020年3月15日(日)10時16分 AUTOSPORT web

ERCヨーロッパ・ラリー選手権の2020年シーズンに参戦する『Team MRF Tyres』は、すでに契約発表済みのエース、クレイグ・ブリーンのチームメイトに新進気鋭の若手エミール・リンドホルムを指名。また、2018年のERC王者”ロシアン・ロケット”ことアレクセイ・ルカヤナクはSaintéloc Junior Teamと再契約を交わした。2年目のチームで王座奪還を狙う。
インドを拠点とするMRFタイヤは、コンペティションの場でタイヤ製造技術の開発を続けてきたが、2020年の国際シリーズ復帰に際してERCを選択。その開発プログラムに23歳の有望なフライングフィン、リンドホルムの起用をアナウンスした。
アイルランド出身のブリーンとチームメイトを務めることになったリンドホルムは、かつてWRC世界ラリー選手権でファクトリードライバーを務め、プジョー、スズキ、フォードなどで活躍したセバスチャン・リンドホルムの息子であり、血縁関係にはWRC王者マーカス・グロンホルムも名を連ねる名門一族を出自に持つ。
「ERC開幕戦アゾレスに向け過去数年のオンボードを見てきたけど、それはステージのプロファイルやコンディションの雰囲気を知るのに役立ったと思うよ」と、2020年のWRCラリー・スウェーデンでWRC2クラス2位に入ったリンドホルム。
「そうだね、僕の父もこのアゾレスに3回出場した経験があるらしい。だから父とも話をしてみようとは思うけど、それ以外に何か準備のためにできることはないだろうね(笑)」
この『Team MRF Tyres』では、ブリーンがヒュンダイi20 R5をドライブするにの対し、リンドホルムはシュコダ・ファビアR5 Evoのステアリングを握り、都合2種類のマシンを投入する。これにより、異なる車種でのタイヤ開発と学習曲線を加速させる狙いがある。
「MRFタイヤは本当に真剣で、すでに冬のラリーに最適なタイヤを持っている」と、スノーラリーに慣れ親しんできたリンドホルム。
「間違いなく、彼らはこのERC参戦を通じて開発プログラムを推し進めることができるだろう。個人的にも彼らをサポートし、わずかな知識だけどタイヤ開発に貢献できれば幸いだ。そしてクレイグ(・ブリーン)も僕にとって大きな基準になるはずだ」
「クレイグは、フィンランド選手権初参戦のタイヤでとてつもないスピードを見せた。それはタイヤ開発の精度が高いことを証明している。つまり、僕にとっても良いステージタイムが期待出来る、ってことだ」
「ERCはハイレベルで、どのラリーも僕にとっては未知数になる。だからこそたくさんの学びがあり、WRC昇格を狙う上でも良い前進になるだろう。MRFタイヤがERCのプログラムに僕を選んでくれたのには大いなる意味があると感じている。彼らの期待に応えるスピードを見せたいね」
一方、2019年最終戦でクリス・イングラムとの激闘を展開し、わずかな差でシリーズ連覇を逃したアレクセイ・ルカヤナクは、再びフレンチ・チームのシトロエンC3 R5をドライブし「プレッシャー・フリー」のアプローチでシーズンに挑むと宣言した。
「僕らは昨年、白紙の状態からスタートしたけれど、今はマシンとチームについて多くのことを知っている。これで間違いなく、誰に取ってもより簡単な位置から始めることが可能になる」と意気込みを語った39歳のルカヤナク。
その”ロシアン・ロケット”の異名どおり、ライバルをして「地球上で最速のラリーストのひとり」と言わしめる速さは、ときにリスクと隣り合わせ。ゆえに好成績よりもアクシデントを引き寄せることが多かったのも事実だ。
「もちろん、私は自分が速いことを知っているが、それが本当に良いリザルトをもたらすわけではないことを残念に思う。でもラリーへの情熱は変わらない。現代のマシンは非常に速く、コントロールが容易で、多くの喜びが得られる。この感覚は重要だ」
「チャンピオンシップを考えると自分にプレッシャーを与える場面が増えてくるが、今季はよりドライビングに集中したい。ときには(テストで怪我を負った)肩の古傷が足を引っ張るけれど、リラックスして運転を楽しむことが重要だ。それが私にとって最大の戦略になると思う」
これによりSaintéloc Junior Teamは、ルカヤナクとマリアン・グリーベルがシトロエンC3を。Team MRF Tyresはブリーンがヒュンダイ、リンドホルムがシュコダをドライブするという強力な布陣が実現することとなった。