見た目も乗り味もある意味で深い驚きがある! MT車好きに評価して欲しい1台トヨタ・カローラスポーツ【ベース車両一刀両断!!︎】

2020年3月30日(月)17時0分 AUTOSPORT web

 モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。


 今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第15回目トヨタ・カローラスポーツ編をお届けする。車名でもスポーツを意識しているカローラスポーツ。スタイリッシュな外見をしたこのクルマは、実際に英国のツーリングカーレースでも活躍しているのだが、その実力はいかに……。


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 最近の日本車のなかで、トヨタ・カローラスポーツは独自性を感じさせる外観だ。下膨れ感が多少強いものの、グラマラスなボディには既視感がない。鋭いスポーティさはないが、まとまりの良さは見てのとおりだ。


 ドアを開けて乗り込むと、適度な包まれ感のあるコックピットが迎えてくれ、内装にはスポーティな雰囲気が漂う。サイズは小さいものの、サポート性の高いシートも気分を盛り上げてくれる。トヨタのデザイナーは時間をかけて丁寧な仕事をしたようだ。


 しかし、カローラスポーツとの甘美な時間はここまでだ。


 1.2リッターターボエンジンは、“ダウンサイジング”と呼ぶには低速トルクがあまりにも不足しており、ターボラグも大きい。特に6速MTとの組み合わせだと、出来の悪いCVTのようなラバーバンドフィールが出てくる。アクセルオンから加速が始まるまで、ラグがとても大きいのだ。


 この6速MTには、変速や発進時にアシストしてくれる機能が与えられている。これはたしかに有効だが、MTのスキルアップにつながらない。


 つまり、初心者は自在に操って楽しむレベルまで上達しないし、それ以前に繊細なコントロールを阻害されるので、MTの楽しみも少ない。これは知覚の衰えた老人向けの機能なのか?


 そもそも、エンジンそのものが楽しみを欠いているので、MTの良さは感じにくい。ダウンサイジングを謳うなら、1.2リッターであればトルクもターボラグも大幅に改善できる3気筒であるべきだ。


 そういう意味では、どの回転域でもトルク感がないハイブリッド的なフィーリングだ。ちなみに、ハイブリッドのほうがパワフルで伸びやかな加速をしてくれる。


 トルク感がないので、クルマがずっと大きく重く感じる。当然、加速力もないので、アクセル開度はつい大きくなってしまい、結果として燃費もイマイチ。


 ダウンサイジングターボのキモは、ターボラグの小ささと非過給領域でのトルク確保なので、その両方ができていないから性能も燃費も良くなるはずがないのである。

2018年夏にデビューしたカローラスポーツ。現在は1.2リッターターボのほか、1.8リッターハイブリッドがラインアップされている。MTが選択できるのは1.2リッターターボのみ
カローラスポーツに採用されている6速のiMT(インテリジェント・マニュアルトランスミッション)は、「マニュアル車の“操る楽しさ”を高めるため」に、エンジン回転数を制御。変速時のほか、発進時にもアシストしてくれるため、クラッチ操作だけでスムーズにスタートできる


■走らせた印象は、スポーティな見た目とは対照的な味付け


 このカローラスポーツ、基本的にC‐HRのクーペ版というのが適当な表現だ。エンジンもサスペンションも共通。全高が100mmほど低く、ガソリンエンジン車なら90kgほど軽量だ。


 キャビンの大きさを絞っているため、後席の空間はタイトだが“クーペとしては充分”か? さらに言えばラゲッジスペースもタイトで「FRだっけ?」と勘違いしそうなレベル。スーツケースを2個積むのは難しそうだ。


 ハンドリング面で指摘しておかなければならないのは、トヨタがFF車のリヤに採用しはじめたダブルウイッシュボーン・サスペンションだ。


 これは構造こそ違うものの、アルファード系のものと同じ特性を持っており、サスペンション自体の摩擦抵抗が大きく、左右でストロークのやりとりをする悪癖がある。


 セッティングの影響もあるが、当たりは硬いがその先は緩く、左右に揺すられる動きが止まらない。つまり、操縦安定性も乗り心地も両方悪い。ダブルウイッシュボーンというカタログスペックが欲しかっただけなのだろう。


 ステアリングセンターのフィーリングの面でも、乗り心地の面でも独立式サスペンションの利点は感じられず、完成度の高いトーションビームのほうが断然良さそうと思えるのだ。


 実際に走らせてみると、見た目とは対照的に、すべての印象が薄い。カローラスポーツがアピールしてくるのは、「まるで存在を感じさせないこと」。移動の楽しみ、クルマという機械の魅力、それを操ることの喜びといった、クルマの根源的な価値を主張してこないのだ。


 だったらヴォクシーやプロボックスでもいいのではないか? まぁ、難しいことは考えず、鼻唄でCMソングでも歌って誤魔化すしかない。

トヨタGBは2019年、以前からプライベーターとしてトヨタ・アヴェンシスを走らせていたスピードワークスをバックアップし、カローラ(日本名:カローラスポーツ)をイギリス・ツーリングカー選手権に投入。このマシンは、技術面での開発の余地を残しつつも、共通部品を使用することが規定されているNGTC(FIA TCN1)レギュレーションに基づいて作られている


■トヨタ・カローラスポーツ『G』(6速MT)主要諸元




































































































車体
車名型式3BA-NRE210H-BHFNZ
全長×全幅×全高4375mm×1790mm×1460mm
ホイールベース2640mm
トレッド 前/後1530mm/1530mm
最低地上高135mm
車両重量1300kg
乗車定員5名
駆動方式FF
トランスミッション6速MT
ステアリング電動パワーステアリング
サスペンション前/後マクファーソンストラット/ダブルウイッシュボーン
ブレーキ 前/後ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ 205/55R16
エンジン
型式8NR-FTS
形式直列4気筒
排気量1196cc
内径×行程71.5mm×74.5mm
最高出力85kW(116ps)/5200ー5600rpm
最大トルク185Nm(18.9kgm)/1500ー4000rpm
使用燃料レギュラーガソリン
タンク容量50L


auto sport 2019年10月4日号 No.1515より転載


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