中山雄一起用の理由/再舗装でコース激変?/ブエミ、最多記録に並ぶetc.【WECスパ水曜Topics】
2025年5月8日(木)10時8分 AUTOSPORT web

WEC世界耐久選手権は、第2戦イモラからの短いインターバルを終え、5月10日(土)に第3戦『スパ・フランコルシャン6時間』レースを迎える。舞台となるのは“スパ・ウェザー”で知られるベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキット。走行開始となる木曜日を前に、7日水曜は各チームが準備を進めた。
そんなスパのパドックから、各種トピックスをお届けする。
■エントリーリストは変更点多数
今回のエントリーリストには36台が名を連ねており、シーズン開幕戦カタール、およびイモラと比べて、ハイパーカーとLMGT3の両クラスで、大幅のラインアップの変更が見られている。
ハイパーカーにおける主な変更点は、パスカル・ヴェアラインがポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963でシリーズデビューを果たすこと、そしてニコ・ミュラーが昨年プジョーから離脱して以来、ポルシェでは初となる出場を迎えることだ。
また、今戦はIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のラグナ・セカ戦と日程が重複するため、2ドライバー体制を採る陣営も見られる。BMW MチームWRTおよびザ・ハート・オブ・レーシングチームでは、ドリス・ファントール、シェルドン・ファン・デル・リンデ、ロス・ガン、ロマン・デ・アンジェリスがIMSAに出場するため、2名編成でWECスパへと臨む。
LMGT3クラスでは、アイアン・リンクスのメルセデスAMG GT3 Evo2台がラインアップを刷新。61号車はクリスチャン・リードに代わりマーティン・ベリーが、60号車はクラウディオ・スキアボーニとマッテオ・クレッソーニに代わり、ブレントン・グローブとスティーブン・グローブ親子がル・マン24時間レースに向けて参戦を開始する。
アコーディスASPチームでは、中山雄一がWECデビューを迎える。78号車レクサスRC F GT3は、カタールではフルシーズンドライバーのベン・バーニコートがドライブしたが、彼のマウンテンバイクでの負傷により、イモラではエステバン・マッソンがステアリングを握っていた。
■ミハエル・クルムが中山をサポート
トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパの中嶋一貴副会長は、スパでアコーディスASPのテストを受けた後、中山が第3戦のレースに参戦することを決定したとSportscar365に対し語っている。
「日本人ドライバーを含め、ドライバーたちにもっと多くの機会を与えたいと我々は思っています。ベンが怪我の具合にかかわらずこのレースを欠場しなければならないことは分かっていたので、チームと話し合い、彼にこの機会を与えたいと考えました。彼はアコーディスASPとともにテストを行い、WECでレースに参戦できる能力があることを証明しました」
マッソンが再び招集されなかった理由について、一貴副会長は次のように付け加えた。
「エステバンがGT3マシンで何ができるかは基本的に我々は分かっていますし、彼はイモラでもそれを証明しました。ですから、我々は新たな挑戦を試してみたかったのです。そして、雄一を評価することは、他の日本人ドライバーの参考になるという点で、トヨタにとって興味深いことでもあります」
一貴副会長はまた、今週末のラグナ・セカで開催されるIMSAを欠場するバーニコートが、ル・マン24時間レースでは完全に回復すると見込んでいると明らかにした。
なお、ミハエル・クルムが中山のサポートのためスパに滞在している。スーパーGTで37号車トムスのチーム監督を務めるクルムは、日本での長年のレース経験から、流暢な日本語を話す。
■コースの大半が再舗装される
ミシュランは2戦連続で、ハイパーカークラスにソフトとミディアムのタイヤコンパウンドを投入する。ミシュランの耐久プログラムマネジャー、ピエール・アルベスは、昨年のレース後に行われたコース部分的な舗装工事を受けて、この決定を下したと述べた。
アルベスは次のように述べている。
「『極限』コンディションでのテストが可能になり、ラップタイムの明確な向上だけでなく、タイヤの安定性も向上した。タイヤの選択を確かなものにするために、3種類のコンパウンドすべてをコース上でテストした結果、特に気温が低い状況では、ソフトとミディアムの混合が、今回のレースに最適であると結論付けた」
再舗装されたコースエリアは、ブランシモン(ターン17)からオー・ルージュ(ターン2)、ケメル・キンク(ターン4)からブラッセル(ターン8)、そしてキャンパス(ターン14)からスタブロー/ポール・フレール(ターン15)となっている。
■『ラップタイム大幅向上』と予測するプジョー
先月のイモラ6時間レースに先立ち、4月4日と5日に行われた2日間のテストには、ポルシェ、BMW、トヨタ、アストンマーティン、プジョーが参加した。 BMWとトヨタは、ル・マン24時間レースに先立ち、5月下旬にスパでロールアウトテストを実施する予定だ。
プジョー・スポールのテクニカルディレクター、オリビエ・ジャンソニーは、路面再舗装があったことで、このフランスブランドにとって1日だけのテストは「間違いなく価値があった」と述べた。
「コースは大きく変わっている。(昨年8月の)ヨーロピアン・ル・マン・シリーズに出場したドライバーからそのことは聞いていたが、我々はテストまで実際にそれを経験していなかった」
「ハードとミディアムの2種類をテストした。ハードが選ばれるかもしれないと思っていたからだ。だが、最終的にはミディアムとソフトになった。これは正しい選択だったと思う」
ジャンソニーはさらに「テストで見たタイヤの挙動は、以前のコースとはまったく異なっていた。ラップタイムに非常に重要な箇所、グリップがパフォーマンスを制限していた箇所すべてが再舗装されたため、ラップタイムは大幅に短縮されるだろう」と付け加えた。
トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパのテクニカルディレクター、デビッド・フルーリーは、路面再舗装について質問されると、ソフトタイヤがレースの大部分で使用されるかどうかは依然として不透明だと述べた。
「デグラデーションは軽減されたが、デグラデーションだけでなく、気温の影響も受ける。正直なところ、ソフトタイヤについては確信が持てていない。路面温度に大きく左右される。全体的に、我々はタイヤにはかなりのエネルギーをかけている」
■大混乱の赤旗中断・再開から1年
前述のとおり、リードがアイアン・リンクス61号車のドライバーから退く決断をしたことで、セバスチャン・ブエミが今週末、WEC史上最多出走回数89回でリードに並ぶことになる。
リードが第4戦ル・マン24時間レースに出場しない場合、ブエミはル・マンにおいて90回目の出走を達成してリードを上回り、さらに来年には史上初の100回出走を達成するドライバーとなる見込みだ。
キャデラック・ハーツ・チーム・JOTAのドライバー、ウィル・スティーブンスは、昨年のスパ・フランコルシャンでの優勝の舞台に戻ってきた。彼はカラム・アイロットとコンビを組んで、英国チームのカスタマー・ポルシェ963を駆り、優勝を果たした。
スティーブンスは次のように回想している。
「カスタマーチームとして勝利を収めたことは、JOTAにとって本当に特別な瞬間だった。赤旗中断などさまざまな出来事があり、レースは混乱したが、最終的に勝利へと導くための戦略を実行できたと思う。WEC初の総合優勝を飾ることができ、素晴らしい成果だった。スパに戻るのが楽しみだ」
アルピーヌは、スパで水素燃料のコンセプトカー『アルペングローHy6』を発表する。この車は、昨年のスパ・フランコルシャンで発表されたHy4の進化版で、昨年のパリ・モーターショーで初公開された。Hy4に搭載されていた2リッター直列4気筒エンジンではなく、3.5リッターツインターボV6エンジンを搭載している。
スパ6時間レースのオープニングプラクティスは、木曜日の11時30分(日本時間18時30分)に開始され、16時30分(同23時30分)から2回目のセッションが行われる予定だ。