ホンダ新加入の王者親子が躍動。息子ティアゴがポール獲得、父リオネルが初勝利/TCR南米開幕戦
2025年4月2日(水)12時15分 AUTOSPORT web

南米大陸で展開され2025年で創設5年目のシーズンを迎えるTCRサウスアメリカ・シリーズが、3月最後の週末にアルゼンチン・ロサリオで開幕。その予選から主導権を握ったのは、昨季までスクアドラ・マルティーノとして戦ってきた新生“ホンダYPFレーシング”のFL5型ホンダ・シビック・タイプR TCRで、息子のティアゴ・ペーニャが予選ポールポジションを射止めると、続くレース1では父であるリオネル・ペーニャがホンダ陣営への移籍初戦で初優勝を飾ってみせた。
首都ブエノスアイレスの北西300kmに位置し、同国サッカー界の“至宝”リオネル・メッシの故郷でもあるサンタフェ州ロサリオを代表するアウトドローモ・ファン・マヌエル・ファンジオには、今季もブラジル、アルゼンチンを中心に大陸各地から強豪エントリーが集った。
そんななか注目を集めたのが、新体制のホンダ陣営に加入した地元出身のチャンピオン親子で、言わずと知れた南米最高峰の“ハイテク”FFツーリングカー選手権、TC2000で4度のチャンピオン獲得経験を持つ父リオネル(44号車)と、その息子で昨季本格デビューながら新人王を射止めた息子ティアゴ(85号車)に、リオネルの兄弟であるマリアーノ・ペーニャ(55号車)のファミリーがシビックRのステアリングを握ることとなった。
さらにチームは昨年末の段階でブラジル出身のビッグネームも獲得しており、今季もSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”でレギュラーを務め、新たにスクーデリア・バンデイラスの『ミツビシ・エクリプスクロス』をドライブする39歳のネルソン・ピケJr.も、同陣営の33号車でフル参戦する。
同じくブラジルからはディフェンディングチャンピオンのペドロ・カルドゥソ(PMOレーシング/プジョー308 TCR)や、今季よりプロモーターを引き受けるVicar(ヴァイカー)とブラジル自動車連盟(CBA)が主催した選考会を勝ち抜き、晴れてレースシートを獲得した18歳の女性ドライバー、マリア・ニーンコッター(コブラ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)らが出場。
長らくSCBの運営を担ってきたヴァイカーの参画により、シリーズは新たに「100万ドル(約1億5000万円)級のインセンティブ」を設け、チャンピオンには2026年のSCB“プロシリーズ”に出場する権利と250万レアル(約6500万円)の賞金が授与され、月額5万レアル(約130万円)の手当やランキングに応じた各ステップアップカテゴリーへの昇格など、豊富かつ手厚い報酬が用意された。
こうして始まった5年目の週末は、昨季のクムホからハンコックへとワンメイク供給銘柄がスイッチしたことも合わせ、そのタイヤ習熟に充てるドライバーが多数のなか、土曜2回のFPからホンダ陣営が躍進。
午前のセッションでは、元サッカー選手でアトレティコ・マドリードや2006年ドイツW杯スペイン代表の左サイドバックで活躍したマリアーノ・ペーニャが最速タイムを計時し、2022年王者ファブリツィオ・ペッツィーニ(W2プロGP/クプラ・レオンVZ TCR)と今季よりトヨタからリンク&コーに鞍替えのファビアン・シャナントゥオーニ(パラディーニ・レーシング/リンク&コー03 TCR)が続くトップ3に。
午後の早い時間帯となったFP2では、初の前輪駆動本格シーズンとなるピケJr.が全長4000m、全13のコーナーを持つトラックで首位に立ち、王者カルドゥソのプジョー1号車と、南米シリーズ創設以来、全65戦に出場した唯一のドライバーであるラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオンVZ TCR)が並び、ブラジル出身者が上位を占拠してみせる。
そのまま土曜夕刻、強風の吹き付けるなか気温28度のコンディションで迎えた予選Q1は、20分間で12名のドライバーを選出する争いとなり、開始直後からチャンピオンのプジョーがレコードを更新する走りで首位に立つ。
しかしその後、ホンダ陣営からTC2000王者リオネルと、初代フォーミュラE王者ピケJr.がそれぞれタイムを更新。終了間際にはクプラのレイスがホンダ陣営に対抗し、トップ3の3台がわずか0.007秒差にひしめきあう。
続くQ2は全ドライバーが最初のアタックを終えてから、ようやくピットを後にしたピケJr.が貫禄のアタックを披露し、首位奪取に成功。これでほぼポールポジションは確定したかに思われたセッション終了間際。チェッカーが振られるなか21歳のルーキーであるティアゴが、僚友の大先輩をわずか0.074秒差で撃破し、ホンダYPFレーシングの最初のポールシッターを射止める決着となった。
「この(最後の)ラップで全力を尽くした。不可能だと思っていたが、やり遂げたね! ポールポジションを獲得できてとてもうれしい、なんといってもTCRサウスアメリカは非常に競争の激しいカテゴリーだからね」と喜びを語ったティアゴ。
一方で、これがTCR規定ツーリングカーでの本格イベント2戦目(昨季スポット参戦を経験)のピケJr.も、謙虚な姿勢でチームメイトの仕事を讃えた。
「彼ら全員から学ぶことがたくさんある。前輪駆動モデルでの2回目のスティントだし、まだクルマに慣れつつある段階だ。彼らホンダと一緒にいられることは大きな喜びだし、強力な”FF使い”であるチームメンバーと一緒にいられるのは素晴らしいことさ」