ビルバオ、40年ぶり通算24度目の国王杯優勝! 世界で“唯一無二”のクラブが示した“純血表明”

2024年4月8日(月)16時13分 サッカーキング

40年ぶりの国王杯優勝を成し遂げたアスレティック・ビルバオ [写真]=Getty Images

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 6日、アレックス・ベレンゲルの右足から放たれたボールが、ゴール左下隅を揺らした。アスレティック・ビルバオにとって、40年ぶり通算24度目(前身の大会を含めれば25度目)のコパ・デル・レイ(国王杯)優勝が決まった瞬間だ。

『ユニーク・イン・ザ・ワールド』。ビルバオニスタが陣取るスタンドに掲げられた横断幕には、そう書かれている。6日にセビリアの『ラ・カルトゥーハ』で行われた国王杯決勝戦でマジョルカと対戦し、1−1のまま突入したPK戦を4−2で制したアスレティック・ビルバオ。1983−84シーズンを最後に遠ざかっていた、主要大会(国内リーグ、国内カップ戦、欧州カップ戦)でのタイトルとなった。その間に下されたボスマン判決が、フットボール界のマネーゲーム化を急速に促した中で、バスクに縁のある選手だけで戦うという“純血主義”を貫き続けたアスレティック・ビルバオは、まさに“世界で唯一無二”のクラブだ。

 本拠地『サン・マメス』が“ラ・カテドラル(大聖堂)”の異名を取るように、もはやフットボールクラブの域を超越し、ひとつの宗教となりつつある。実際に今回、セビリアにまで移動したサポーターは7万人(半数以上がチケットなし)を超えた他、『サン・マメス』で実施されたパブリックビューイングも5万人以上を動員。“時間と距離をクラブとともに旅をする”。バスク地方に対する帰属意識を大切にしてきたからこそ、アスレティック・ビルバオというクラブが、バスク人の生活の一部になっていることを再認識させられた決勝戦となった。

 それでは、ついに本懐を遂げた、エルネスト・バルベルデ監督が率いるアスレティック・ビルバオのメンバーを紹介していこう。

[写真]=Getty Images

■2人の守護神

 スペイン代表の正守護神であるウナイ・シモンを擁するアスレティック・ビルバオだが、国王杯の全試合でゴールマウスを守ったのは、23歳のフレン・アギレサバラだ。2021年8月にトップチームデビューを果たしたカンテラーノは、ここまでのラ・リーガで通算13試合出場と、あくまでも“第2ゴールキーパー”という立ち位置に。ただ、昨夏に行われたU−21EUROのU−21スペイン代表に選出されるなどその実力は確かで、先の決勝戦でも証明している。120分の戦いで好守を連発し、PK戦ではマジョルカ2人目のコースを完全に読み切ってストップ。優勝の立役者のひとりとなった。

 生涯アスレティック・ビルバオ宣言のU・シモンと同様に、アギレサバラもクラブに忠誠を誓っている。今夏に複数のクラブが同選手獲得を検討しているとされる中で、アギレサバラは2025年夏に満了を迎える現行契約の延長に向けた交渉を行なっているとのこと。また、今シーズンの国王杯では出番が得られなかったU・シモンが、同選手のサポート役に徹するなど、両者の関係はまさに“戦友”と呼べるものに。代々、名ゴールキーパーを輩出してきたアスレティック・ビルバオだが、近年はよりハイレベルなポジション争いが繰り広げられている。

■“経験”と“若さ”が揃った最終ライン

 マジョルカとの決勝戦の最終ラインは、今シーズンのファーストチョイスとなっている4名が並んだ。右サイドバックのオスカル・デ・マルコスと左サイドバックのユーリ・ベルチチェは経験豊富なベテラン。とりわけ前者は、2009年夏にアラベスから加入して以降5度目となった今回の国王杯決勝で、ついにタイトルを獲得した。また、両サイドバックをこなせるイニゴ・レクエやエイバルから復帰したイマノル・ガルシア・デ・アルベニスの存在も忘れてはならない。

 センターバックは、24歳のダニ・ヴィヴィアンと23歳のアイトール・パレデスの若手コンビ。昨夏に、ディフェンスリーダーのイニゴ・マルティネス(バルセロナ)が退団した中で、レサマ育ちの2選手の急成長が躍進の原動力となっている。3月にスペイン代表に初招集された前者は、今夏に控えるEURO2024のメンバー入りも狙えるほど、すでに国内有数のディフェンダーだ。

 そして、イェライ・アルバレス。同選手のプロキャリア、ひいては人生においてこの優勝は計り知れない喜びになっているに違いない。2016年にトップチーム昇格を果たし、U−21スペイン代表にも選出されるなど、将来を嘱望されたイェライ。しかし、同年12月に精巣がんを患っていることが判明すると、摘出手術を行った後一旦は復帰したものの、翌年6月に再発。計1年近く、ピッチから離れることを余儀なくされた。さらに、近年は度重なるケガに悩まされ、今シーズンはここまで公式戦13試合の出場に。決勝戦直前のレアル・マドリード戦で、またしても負傷交代となり、ラ・カルトゥーハのピッチに立つことが叶わなかった。それでも今回の優勝は、多くの苦難を乗り越えたイェライを讃えるものとなったはずだ。

■多士済々のミッドフィルダー

 中盤は、前述したゴールキーパーのポジション争いを凌ぐほどの激戦区となっている。シーズン開幕当初、セントラルミッドフィルダーの定位置を確保したのは、イニゴ・ルイス・デ・ガラレタとミケル・ベスガだった。しかしながら後者の負傷離脱を境に、ミランデスでの武者修行から復帰したベニャト・プラードスが台頭。決勝戦でも、パリ世代の23歳はデ・ガラレタとともに、スタメンに名を連ねた。加えて、マンチェスター・ユナイティッドとパリ・サンジェルマンで活躍したアンデル・エレーラ、“狩人”としてピンチの芽を摘みとることに秀でるダニ・ガルシア、有望株のミケル・ハウレギサールも控えている。

 マジョルカ戦で同点ゴールを決めたのが、スペイン代表の常連になりつつあるオイアン・サンセトだ。プレミア方面からの関心が寄せられていた昨年に、クラブとの契約を2032年夏まで延長した“エル・シエルバ(愛称:鹿の意)”は、この先のチームの中心となっていくだろう。そしてもうひとり、今シーズンにトップチームデビューを果たしたウナイ・ゴメス。かつて『サン・マメス』のスタンドでトップチームを応援していた少年は、昨年8月のラ・リーガ第3節ベティス戦でトップチーム初得点を挙げた直後、当時自身が観戦していたゴール裏メインスタンド寄りの場所でセレブレーションに及んだ。得点後にエンブレムにキスする姿や、決勝戦では頭部に裂傷を負いながらも勇敢に戦い抜くなど、このクラブに対する愛は人一倍強い。

■牽引する“兄弟”と到来した“9番”

 待望の“9番”が現れたのも、40年ぶりの優勝を成し遂げた要因のひとつだ。アリツ・アドゥリスの“直系後継者”として名乗りをあげたゴルカ・グルセタは、ラ・リーガの『ピチーチ賞』と『サラ賞』を争える13得点を記録している。また、マジョルカとの決勝戦こそ出番が訪れなかったものの、今大会で6ゴールを挙げたアシエル・ビジャリブレは、アブドン・プラツ(マジョルカ)、アナスタシオス・ドゥヴィカス(セルタ)と並んで大会得点王に。セレモニーではお馴染みのトランペットを演奏し、セビリアの夜空に祝福の音を鳴らしている。

 ウィリアムズ兄弟が、攻撃のカギを握っていると言っても過言ではない。爆発的なスピードとフィジカルを武器とする右ウィングの兄イニャキ・ウィリアムズと、テクニカルなドリブルと両足遜色ないキックを武器とする左ウィングの弟ニコ・ウィリアムズ。前者はここまで公式戦11得点5アシスト、後者は6得点14アシストと圧倒的な個で、相手守備陣を蹂躙する。控えには万能型のアレックス・ベレンゲル、新進気鋭のアドゥ・アレス、大ベテランのラウール・ガルシア(主戦場はセンターフォワード)と戦力の充実ぶりが窺える。

■王様イケル・ムニアイン

 そして、最後に紹介するのは、ワン・クラブ・マンのイケル・ムニアインだ。2009年夏に16歳でトップチームデビューを果たし、昨年12月に31歳となった“王様”はクラブ歴代2位となる公式戦通算556試合に出場中。2019年夏より腕章を巻くムニアインは、一昨夏に3度目の就任となったバルベルデ監督の下ではプレータイムを減らしているが、カピタンとしての役割を全うしている。もちろん、ピッチに入れば“10番”として攻撃を司る役割も兼任。決勝戦では延長前半から途中出場すると、直接フリーキックでゴールに迫るなど、実力が健在であることは疑いようがない。

 ムニアインにとっては、主要大会6度目のファイナルで獲得した初タイトルに。この景色を見るまでに5度の準優勝、2度の前十字じん帯の大ケガと、多くの挫折や苦悩を味わってきた。試合後、自身の公式Instagramを更新した同選手は、ベッドでトロフィーと眠る写真を投稿するとともに、「夢が叶うこともある。チャンピオン」と綴っている。

 セビリアで凱歌をあげた“ロス・レオネス”は、来る木曜日にネルビオン川を下る伝統の水上パレードを実施する予定とのことだ。

サッカーキング

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