【平川亮インタビュー】パドックで高まる評価にニヤリ「本当はFP1で角田裕毅の前に出たかった」
2025年4月10日(木)12時5分 AUTOSPORT web

2025年F1第3戦日本GPの金曜フリー走行1回目(FP1)にアルピーヌから出走した平川亮。オートスポーツwebは走行を終えた平川へ独占インタビューをする機会を得た。母国でのFP1出走を終え、また複数のチームの最新F1マシンを乗り継いできた平川に話を聞いた。
2024年シーズン最終戦アブダビGPのFP1でマクラーレン、シーズン終了後のアブダビテストでハース、そして今回の日本GPではアルピーヌと、3チームの現役マシンを乗り継いだ平川。
なかでも、2024年シーズンのコンストラクターズタイトル獲得マシンである『マクラーレンMCL38』の限界値/ポテンシャルはどれほどのものだったのかは気になるところ。それを平川に尋ねると「正直、アブダビGPでFP1出走した際はエアロテストに専念したこともあり、クルマの限界を引き出すまでは走ることができませんでした」と、振り返った。
「終盤にアタックする時間は少しありましたが、エアロテストのために基本はアウトインばかりだったのでアタック前にターン1と最終コーナーをほとんど走ることがなく、アタック時にはその区間で0.5秒くらい落としていました。もっと前に行けたのに、という思いは残りましたけど、チャンピオンマシンに乗れたことはいい経験になりましたね」
そんなマクラーレン搭乗時は『28』、ハース搭乗時は『50』、そして今回のアルピーヌでは『62』のカーナンバーで出走することになった平川。『62』を選んだ理由を尋ねたところ「自分の番号知らないんですよね……」と、平川からはFP1の出走を終えて数時間が経ったとは思えない驚きの発言が飛び出した。
「チームが(レギュラードライバー以外を出走させる際の)番号を2つ持っているみたいです。マクラーレンの際も28か29どっちがいいかと聞かれました、今回は特に事前に聞かれなかったので、今さらながら、自分が何番だったのかが気になっていました(苦笑)」
事前にアルピーヌのファクトリーにあるシミュレーターを経験し、3度目の現役F1マシンドライブ、そして自身2度目のFP1を迎えた平川。今回はジャック・ドゥーハンのマシンに乗ることになったが、セットアップに関してはチームからのリクエストをベースに、平川自身がアジャストし、日本GPへ持ち込むかたちとなった。
「(シミュレーターで)セットアップのオプションがあり、そのなかからベースのセットアップを選びます。そこから、スプーンカーブのふたつ目(ターン14)の進入でオーバーステアっぽいところ、ヘアピン(ターン11)で曲がりきれない感覚がある部分など、細かい部分をアジャストしました」
そうして迎えた日本GPのFP1。大勢の日本のファンが見守るなか、平川はレギュラードライバーであるピエール・ガスリー(14番手)を0.153秒上回る12番手となった。事前に同型マシンでの実走テストもなく、初めてのマシンでチームのエースドライバーを上回る走りを見せた。これは大金星と表せる仕事ぶりだ。
2019年の日本GPでトロロッソ(現:レーシングブルズ)から山本尚貴がFP1に出走した際、鈴鹿を知り尽くした山本でもレギュラードライバーのダニール・クビアトから0.098秒遅れだった。それほど、ぶっつけ本番のFP1でレギュラードライバーを上回ることは難しいのだ。
平川は「ガスリーと比較したデータも見ましたが、タイムどおりだと思います。(ガスリーと比較して)低速コーナーが少し遅く、そこはF1の難しさを実感しました。クルマがデカくて、ヘアピンでインにつけません。シケインもクルマ1台が走れる隙間がないんじゃないかという圧迫感もあります。その2箇所でかなりロスしていましたね。それ以外は僕の方が速い部分が多く、特にセクター1でスピードを見せることができました」と、振り返った。
ガスリーを0.153秒上回った平川を高く評価する声はF1パドックからも少なくない。その評価をどう受け止めているかと尋ねたところ、平川は少し悩みながら「見たか。という感じですけどね(ニヤリ)」と話始めた。
「これまでプライベートテストでしか評価されてこなかったので、今回のように公式セッションで、レギュラードライバーを上回ることができたのはしっかりと評価していただける良い機会になったと思います」
「とはいえ、自分はひとりのドライバーとして、今後も常にパフォーマンスを最大限に出すだけです。その上で……あまり大きなことは言えませんが、やはりレースにもチャレンジしたいという気持ちはより強くなりました」
2度目のFP1出走を経て、平川は自信が深まったという。
「今回の経験はプラスな部分しかなかったと思います。もちろん、走行前日は緊張しましたけど、緊張は仕方がないので受け入れてはいます。それよりも、早くサーキット入りしていたので、とにかく早く乗りたいという気持ちが大きかったですね」
「また、今回は日本GPだったので、アブダビGPとは雰囲気もぜんぜん違いました。アブダビではこういったインタビュー取材もなかったですし、誰にも気にされていない、みたいな雰囲気はありました。また、チャンピオンカーを壊さないでくれ!って雰囲気もありましたが、今回は思いっきり走らせてもらえたので、すごく良かったと思います」
「今後は僕もそうですし、次の日本人ドライバーにもつなげていきたいです。やはり、日本人ドライバーのレベルは高いです。日本からもっと若手がF1や世界のレースに出てほしいですし、僕もそれに負けないように戦おうと思います」
そして取材の最後、平川はこう呟いた。
「本当は角田選手(FP1:6番手)の前に行けたらめちゃくちゃ面白いなと思ったのですけど……そこはクルマの差が出ましたね(笑)」
このインタビューの3日後となった日本GP終了翌日の4月7日(月)、ハースは平川の公式リザーブドライバー就任を発表した。これにより、平川は2025年シーズン、次戦バーレーンGPを含む4戦でハースからFP1に出走する。平川のF1レギュラー参戦を目指した戦いは、これからも続いていく。