「大事にしている」あの夏の決勝 慶応・丸田湊斗&横浜・緒方漣 624日が経過した2人の現在地
2025年4月10日(木)22時33分 スポーツニッポン
創設100周年を迎えた東京六大学野球連盟は10日、都内で理事会を行い、12日開幕の春季リーグ戦から映像による判定検証を導入することを決定した。
理事会後、各校の選手が参加した懇親会に慶大・丸田湊斗外野手(2年)の姿があった。丸田には忘れられない「判定」の思い出がある。2023年7月26日。慶応の3年夏に挑んだ神奈川大会決勝は6—5で横浜に劇的な逆転勝利。ただ、3点を奪った9回の攻撃で下された「判定」が試合の結果以上に大きな話題を呼んだ。
慶応が2点を追う9回無死一塁。丸田が放った二ゴロで「4—6—3」と渡り、併殺崩れで一死一塁と思われたが、二塁塁審は「セーフ!」。横浜の遊撃手・緒方漣(3年)が二塁に触塁できずに空過していたという判定だった。まさかの無死一、二塁。横浜は伝令を通じ2度も確認を求めたが実らず。慶応が1死二、三塁と走者を進め、打席に立った3番・渡邉千之亮が左翼席へ決勝の逆転3ランを放った。試合後、敗れた横浜ナインは号泣。無念の横浜ナインの思いを背負った慶応は出場した夏の甲子園で日本一に輝いた。
「あの夏」から624日が経過した。慶大で2年生となった丸田は所属する東京六大学野球リーグで「ビデオ検証の導入」が承認されたことを知ると、「人の目で判断できないこともあると思いますので、正確性が上がることは凄くうれしいこと」と歓迎した。そして、日本最古の歴史を持つ同リーグが大学球界で最初に導入する意義について「先頭に立つリーグがやっていかないと大学野球全体に広がらないと思っていました」と語った。
判定に泣いた横浜・緒方も過去にとらわれることなく、進学した東都大学野球リーグの国学院大で成長の日々を送る。9日に神宮で行われた日大との3戦目ではリーグ通算2号の左越えソロを放ち、チームに勝ち点をもたらした。主将だった緒方の意思を継ぐ横浜高校の後輩たちは今春の選抜で優勝。大会後、村田浩明監督からは「次はお前の番」と言葉を授かり、体現してみせた。「1球で流れが変わる、1球の重みは肌で感じて身に染みてる部分なので、経験は今も大事にしています」とあの夏から学んでいた。
全国から逸材が集う東京六大学野球リーグと東都大学野球リーグでプレーする丸田と緒方。それぞれが、あの日に決別していた。(アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)