WEリーグ選手達の「WE ACTION」会議レポ。女性コーチはどう増やす?

2023年4月19日(水)14時0分 FOOTBALL TRIBE

WE ACTION MEETING 写真:WEリーグ

FIFA女子ワールドカップ2023(7月20日〜8月20日)も控え、女子サッカーが熱い。2021年9月に開幕した日本初の女子プロサッカーリーグ、WEリーグ(ウーマン・エンパワーメント・リーグ)も、2シーズン目にして国内外からの注目を徐々に集めてきている。


ここではWEリーグが『女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する』という理念の推進に向け、プレー以外で実践している取り組み『WE ACTION』についてご紹介していこう。


4月11日に開催された同プロジェクトの一環である第5回『WE ACTION MEETING』の様子と、そこで挙げられた課題の1つ「女性コーチが少ない」というテーマについて、実際に参加した選手のコメントも交えてご紹介していきたい。




2022/23WEリーグ キックオフカンファレンス 写真:Getty Images

「WE ACTION MEETING」で絞られた4つの課題


WEリーグでは2021年12月から『WE ACTION』という取り組みをスタート。前述の理念推進のために、所属する選手とクラブ、そしてパートナー企業を含めた様々な立ち位置の人々が輪となり、みんな(WE)で起こす行動(ACTION)という意味だ。単なるスポーツに留まらず「社会に変化を与える」ということは想像するだけでも壮大なことだが、どのような方法で行動を起しているのだろうか?


取り組みの1つとして、これまでに『WE ACTION MEETING』という全5回の会議が行われてきた。昨年度までは「課題のリスト化」を目標に話し合いが行われてきたが、そこから衝撃的な事実が目の当たりとなっている。日本全国のNPOと協力し「女性が抱える社会問題」について洗い出したところ、実に何と300以上の課題が浮き彫りとなったのだ。


「差別を差別と気づけない問題」「女の子がサッカーを続ける場が少ない問題」そして「色々気にしすぎて、言いたいこと言えない問題」など、そのほか多くの視点から様々な課題があがった。これら多くの課題は、会議の中で更に深掘りされて大きく4つに絞られている。



  1. 母頼りが多すぎる問題

  2. 日本の女子の自己肯定感が低すぎる問題

  3. 女性は10代でスポーツやめちゃう問題

  4. 女性コーチは約3割問題


4月11日に開催された第5回『WE ACTION MEETING』では、この4つの課題に対し、より具現化するための実行案が設定された。グループに別れて施策アイディアのディスカッションが行われる。その中の1つ「女性コーチは約3割問題」について、WEリーガー達の言葉も見てみよう。


ノジマステラ神奈川相模原 FW松本茉奈加(左)写真:Getty Images

女性コーチは約3割問題、WEリーガーの言葉


皆さんが「女性コーチ」と聞いて、パッと思い浮べることができる人物は居るだろうか。日本国内ではコーチ業を目指している女性の数が少なく、全体の28%に留まるのが現状だ。


その理由の1つには、目指す以前に技術不足ということを不安視してしまい、結果的に断念してしまうということがあげられる。その他、目指し方の情報不足や、たとえコーチになったとしても出産や育児などで業務遂行が難しい環境になるなど、いくつかの理由が存在する。現役の選手目線では下記のような意見が挙げられた。


GK船田麻友(ちふれASエルフェン埼玉)


「私は、指導する側の立場はやりたいと思うタイプで、『指導者』という言葉を聞くと面白そうだなという印象を持っています。技術不足ということは、確かに絶対に思うことかもしれないけれども、周囲が何を基準にして指導力や技術力の有り無しを判断しているのかが明確ではないし、まずはやってみて進んでいけたら良いのかなと思います」


FW松本茉奈加(ノジマステラ神奈川相模原)


「自分は多分技術不足だと思うし、大変そうだなという理由で今のところコーチを目指すつもりはないです。結果を出すことや(選手を)育てなければならないなど、プレッシャーを感じる職だと思うし、それは選手をしているからこそ(コーチの大変さが)目に見えてわかるし、見えない部分でもきっと大変なんだろうなというのをとても感じています」




ちふれASエルフェン埼玉 GK船田麻友 写真:©WE LEAGUE

人生のターニングポイント期にアプローチ


では、女性コーチの数を増やしていく為には、どんな人々をターゲットにしてどんな方法で投げかけるのが効果的なのだろうか?ディスカッションは具体策に迫っていく。


例えば、小中学生などの若い世代を対象に、ロールモデルとして現役女性コーチからコーチ職の良さをレクチャーしてもらう方法。または、現役サッカー選手をターゲットとして、より多くの小中学校でサッカー教室を開催し、選手たち自身が指導することの楽しさに触れ合う機会をつくる方法などがあがる。実際にGK船田(ちふれASエルフェン埼玉)は、サッカー教室で子どもたちに指導したことをきっかけに、指導業というものに興味を抱いたそうだ。


また、少し視点を変え、特にターゲットを絞らずに広く多くの人々に対して、サッカークラブ内のコーチというカテゴリーを細分化(フィジカル、メンタルコーチなど)して垣根を低くすることで、よりコーチという職に挑戦してもらいやすくする方法などもあるだろう。様々な視点から見つめれば、意外と多くの案が思い浮かぶ。


そんな中、同グループワークで辿り着いた最終的な施策。それは、職業選択中の大学生世代をターゲットとするというものだ。彼らに現役選手たちの練習風景を見学や参加してもらい、コーチ業に興味をもってもらう機会をつくること。自分の道を選択するタイミングにこのような経験をすることで、職業としての選択肢に加えやすくなったり、重要なマイルストーンとなることが期待できる。


他にもストレートな意見や新鮮な施策アイディアがたくさん飛び出した第5回『WE ACTION MEETING』。参加者は選手たちを含めて約90名強と、全体の紹介は叶わないが、勢いと熱が感じられた。WEリーグの理念を含めたこれらのユニークな取り組みは、日本だけに留まらず近い将来に海外からも注目の的になると予想する。今後もWEリーグの「ACTION」から目を逸らしている暇はなさそうだ!

FOOTBALL TRIBE

「WEリーグ」をもっと詳しく

「WEリーグ」のニュース

「WEリーグ」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ