ティフォシ歓喜! 51号車フェラーリが前年のリベンジ達成。“伏兵”がトヨタの表彰台を阻む【WECイモラ決勝レポート】
2025年4月21日(月)3時15分 AUTOSPORT web

WEC世界耐久選手権第2戦『イモラ6時間レース』の決勝が4月20日、イタリアのイモラ・サーキットで行われ、フェラーリAFコルセの51号車フェラーリ499P(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョビナッツィ)がポール・トゥ・ウイン。今季初勝利を飾った。LMGT3ではマンタイ・ファースト・フォームの92号車ポルシェ911 GT3 R(ライアン・ハードウィック/リカルド・ペーラ/リヒャルト・リエツ)がクラス優勝を果たしている。
週末の走り初めからフェラーリ勢が速さを見せ、土曜の予選からフロントロウを独占。セーフティカー(SC)と2度のフルコースイエロー(FCY)によってたびたび中断された決勝の前半でも、ポールシッターの51号車と2番手スタートの83号車のフェラーリ2台がワン・ツーを維持してレースの折り返しを迎えた。
ハイパーカークラスは、スタートから3時間となるタイミングが3回目のルーティンピットの時間帯にぶつかった。各車がピット作業を終えると、なんと6号車ポルシェ963がトップに躍り出る。一方、スタートから一貫して2番手を走ってきた83号車と、最後尾から4番手まで追い上げてきた50号車のフェラーリ2台が順位を落とし、51号車フェラーリに次ぐ3番手に20号車BMWが浮上。これに7号車トヨタと15号車BMWが続くトップ5となった。
ニック・デ・フリース駆る7号車は4時間目の半ばで20号車BMWをパスして表彰台圏内に入り、抜かれたラファエル・マルチェッロは姉妹車20号車にも先行を許す。その10分後、トップ争いに動きがあった。6号車ポルシェのマット・キャンベルがブレーキングでロックアップした一瞬の隙を突き、ジョビナッツィの51号車がトップを奪ったのだ。
スタートから3時間44分、LMGT3カー同士のアクシデントの影響でバーチャルセーフティカー(VSC)が導入される。このタイミングでほとんどの車両がピットに戻り、その後のSCへの移行によりレースは再度ご破産に。この中では直前に15号車BMWにかわされていた7号車が3番手の座を奪い返している。
上空から微量の雨が落ちてきたため4時間経過を前にウエット宣言が出される。リスタート時点では複数のマシンでワイパーが動いている様子が国際映像に映し出された。しかし路面を濡らすほどではなく、5時間目もドライ路面でのレースが続く。
51号車フェラーリがふたたび後続に対してギャップを広げていく後方では、6号車ポルシェと7号車トヨタの2番手争いが勃発。ケビン・エストーレと小林可夢偉のバトルは約50分にわたって続き、最後はターン18でポルシェのイン側に飛び込んだトヨタが、3番手から2番手にポジションを上げている。
直後に7号車、6号車、15号車ら上位陣がピットに入り翌周にはトップの51号車も最後のピット作業を行いコースに戻っていく。直後に迎えたスタートから5時間のタイミングでは、他車とピットタイミングがずれた8号車トヨタがトップに。背後には50号車フェラーリが続き、激しいバトルが2台の間で繰り広げられた。
フィニッシュまで残り45分、50号車が先にピットインし、続いて8号車も給油のためピットへ。コースイン後ふたたび接近した2台はターン3で接触。両車がグラベルを突っ切るかたちでコースに戻ったがアントニオ・フォコのフェラーリは左リヤタイヤがパンクし、実質の表彰台争いになると思われる争いから脱落してしまう。
さらに15分が経ったころ、見た目上の首位に立っていたシェルドン・ファン・デル・リンデの20号車BMWと、同4番手につけていたミック・シューマッハー駆る36号車アルピーヌがピットに入ったことで、跳ね馬の51号車が総合トップに返り咲く。7号車トヨタが2番手、15号車BMWが3番手、83号車フェラーリが4番手というオーダーだ。
しかし残った上位勢もスプラッシュ&ゴーが必要であり、残り18分での7号車のピットインを皮切りに15号車、51号車、さらに5番手の6号車ポルシェも給油のためピットレーンに進路を向ける。残り11分の時点でバーチャル・エナジー・タンクの残量が7%の表示となっていた黄色いフェラーリは最後までコース上に残るが、残り9分でスプラッシュに向かった。
引き続きロバート・クビサがステアリングを握る83号車の復帰位置は4番手。51号車フェラーリと20号車BMW、36号車の後方だ。クビサとシューマッハーの間には5秒ほどのギャップがある。そのため表彰台を争うバトルには至らず、前述の順位のまま各車がチェッカーを受けることとなった。51号車はポール・トゥ・ウインで昨年のリベンジを果たした。BMWとアルピーヌの表彰台獲得は2024年の第7戦富士ラウンド以来となっている。
一方、終盤に2番手と3番手につけていた7号車トヨタと15号車BMWはそろって順位を落とし、後者は4位の83号車フェラーリと5位となった8号車トヨタに次ぐ6位でのフィニッシュに。可夢偉組7号車トヨタが7位、ポルシェの6号車が8位でチェッカーフラッグを受けている。
LMGT3クラスも、ハイパーカークラスと同様にレースの折り返しまでポールシッターがレースをリードする展開が続いた。しかし4時間目にドラマが起きる。
4回目のピット作業を終えてトップに立った21号車フェラーリと、首位を奪われたバレンティーノ・ロッシの46号車BMWがターン19で接触し、前者がバリアにクラッシュ。一度は走り出したものの最終的にリタイアとなってしまう。
これによってストップ&ゴーペナルティを科された46号車BMWは大きく順位を順位を下げた。また同じく4時間目のクラッシュ前には2番手を走る87号車レクサスにピットレーンでの違反による25秒ストップペナルティが下り、こちらも大きなタイムロスを強いられることとなった。
代わってトップに立ったのは、巧みな戦略で浮上してきた名門マンタイの92号車ポルシェで、フィニッシュまで残り25分でのラストピットを終えた時点で後続に14秒のリードを築いていた。
しかしペナルティから怒涛の追い上げを見せ、残り1時間となったところで2番手まで復帰していた46号車BMWがトップに迫っていく。ケルビン・ファン・デル・リンデはその差を確実に縮めていき、チェッカーまで残り3分となったところで両車の差は1秒を切る。
ファイナルラップまで続いた手に汗握る優勝争いは、0.316秒差を守った92号車ポルシェに軍配が上がり、BMWの大会2連覇とロッシの母国優勝は実現ならず。クラス3位には5番手スタートからつねに上位につけていた78号車レクサスが入り、姉妹車87号車が4位。54号車フェラーリがトップ5の最後を締めくくった。
WECの次戦第3戦、“ル・マンの前哨戦”とされる『トタルエナジーズ・スパ・フランコルシャン6時間』は、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで5月8〜10日に開催される。
