高校野球に進んだ「スーパー中学生」が必ずしも「スーパー高校生」にならない理由とは
2025年4月22日(火)6時30分 ココカラネクスト

高校野球のスカウティングにも様々な難しさがあるとされる(C)産経新聞社
逸材の確保へ、早期化が進んでいます。
高校野球のスカウティングについての現状です。甲子園出場を達成するため、そしてそこで勝つために、いかに有望中学選手を集められるかは大きな第一関門。プロ野球の世界でも編成の力がチーム作りの根幹であるのと同様です。早いケースでは1年の冬から、高校関係者が中学硬式クラブチームへと接触するとも聞きます。
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高校野球取材歴の長いライターは言います。
「中学硬式クラブチームの全国大会は高校野球関係者にとって、重要な視察の場になっています。その中から各カテゴリーの選抜メンバーに入れたら、さらに価値は上がります。最高峰は侍ジャパンU−15日本代表メンバー。そこで活躍した選手は『スーパー中学生』としてメディアにも取り上げられ、進路にも関心が寄せられることになります」
ここで素朴な疑問が一つ、浮かんできます。そういった「スーパー中学生」が、必ずしも甲子園大会などで活躍する「スーパー高校生」になるとは限らない、という事実です。
「理由の一つはケガです。特に投手ですが、中学時代という成長期のまっただ中に投げすぎてしまい、いざ高校に入る時点で肩や肘に障害を抱えてしまう例は少なくない。トミー・ジョン手術を受ける投手もいます。本人が少しでも上を目指して練習をしすぎたり、実戦で投げすぎたりすることはやむを得ないので、周囲の大人がストップをかけてあげる必要がある。中学がピークと言うのも寂しい話ですから」(前述のライター)
そして、こう続けるのです。
「中学時代に活躍し、鳴り物入りで入学した有望選手が、チームの環境になじめない例も悲しいですが、なくはないです。チームカラーとのミスマッチというか…。これについては入学時、どんなチームなのか入念に調べることも必要です。先輩後輩の関係はどうか、指導者の性格はどうか…。最近は強豪校でもアットホームな雰囲気で、学年に関係なく仲が良く、高め合っていこうというチームも増えている。一方で、ゴリゴリの縦社会が色濃いチームがあるのも事実です。スカウティングの時点では甘い言葉しか出ないでしょうから、見極めが難しいとも言えます」(前述のライター)
そして、本人の「勘違い」も理由の一つであると、前述のライターは言うのです。
「特に複数チームによる争奪戦の末に入学した選手は、ポジションは勝ち取るものではなく、ある程度準備しているものと思ってしまう例もあります。入ってみたら意外と上級生のレベルが高く、ベンチ入りメンバーを外れてしまい、親も含めて『話と違う』と不満分子化してしまう例が、過去にもありました。『入ったら横一線』ぐらいの覚悟で、奪い取るんだという意識で頑張って欲しいですよね」
スーパー中学生にとって、入学した高校が存分に青春を燃やせる新天地となることを、願わずにはいられません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]