【番記者の視点】柏 珠玉のパスサッカー対決を経ての学びと「2点目」への課題
2025年4月27日(日)17時19分 スポーツ報知
前半32分、同点ゴールを決め笑顔で久保藤次郎(右)と抱擁を交わす柏・渡井理己(カメラ・山崎 賢人)
◆明治安田J1リーグ ▽第12節 柏1—1新潟(26日・三協F柏)
【柏担当・浅岡諒祐】勝ち点3には届かなかった。試合開始から失点までの約15分間は、リカルド・ロドリゲス監督が選手に「ひどい15分だった」と伝えたように、動きや連係の悪さが散見された。MF渡井理己のリーグ戦今季初得点で追いつき、以降も柏が主導権を握る時間が続いたが、勝ち点1にとどまった。
ロドリゲス監督は「同点ゴールを決めた前後から我々が期待していたプレーを表現出来ていた」と選手の修正力を称賛しつつも、「前半のうちに逆転をしていれば勝ち点3が取れた可能性はより高まっていた」とも指摘した。
ここまで柏はリーグ屈指の負けないチームとして君臨している。敗戦数は12節を終えた段階でわずか1。これはリーグ最少であり、唯一の数字だ。とても響きが良い。しかし、今季の引き分け数はリーグ最多の6回と、勝ち切れていないことも事実としてある。
最大の要因は“2点目”を取れていないことだ。首位に躍り出た第4節の浦和戦以降、複数得点はなし。今季全体でも2回にとどまっている。昨季リーグワースト2位(39点)の得点力だったチームは、ロドリゲス監督の掲げる「攻撃的な主導権を握るサッカー」の下、無得点試合は東京V戦の1回だけと効果が出ているだけに、あと一歩がもどかしい。
選手も共通認識として持っている。同点弾を沈めた渡井が「決めきる力が常々課題。あとは、個人の質とチームの狙いで取り切る」と口にすれば、DF古賀太陽も「最後の質ですかね。取り切るチャンスは何回かありましたし、そういうチャンスをどれだけ仕留めきれるか。今日も順位が下がりましたし、勝ち続けなければならない。スタイルどうこうの前に、こだわらなければいけないポイント」と、詰めの部分を課題として挙げた。
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対戦相手からの学びも得た。「パスサッカーといえば?」という質問を投げかけた際に、新潟は真っ先に出てくるチームの一つだろう。松橋力蔵氏(現FC東京監督)が作り上げた美しいパス回しが持ち味のチームは、昨季リーグ1位の1試合平均パス数(586.3本)を記録。2023年もリーグ1位の平均パス数(600.7本)と平均ボール支配率(56%)を記録した。今季の柏もパスサッカーを掲げるだけに、今後の試金石とも呼べるような試合だった。
同じパスサッカーを掲げていることもあり、両方のチームを経験するGK小島亨介は「やり方の大枠は多分似ている」としつつも「立ち位置であったり、ボールの回し方も相手によって変えてみたりとかがある。両方のチームを経験しているが、別のチームだなという印象」と話す。3バックの中央で守備を統率した古賀は「(新潟は)ボランチがよく動くなと思います。外のポジションははっきり立ち位置を取った上で、ボランチが数的優位を作ったり、トップ下の選手が流動的に動きながら後方のビルドアップに関わってくる」と印象を語った上で、「自分たちもつかみにいく形は持ってはいるが、あれだけ動かれると行きづらい。1つ見習っても良い部分」と違いを指摘した。
今季ブレイク中の23歳のMF熊坂光希も「マンツーマン気味でプレスに行ったときにワンタッチで外していくのがうまかった。そこの精度はさすがだなと思いました」と舌を巻く。リーグ6位のパス数(725本)、5位のプレー数(トラップパス、クリアなどのタッチアクションの回数、855回)、3位の走行距離(132.7キロ)を誇るが「自分も試合を通してボールを触る機会が少なかった。しっかり自分と山田(雄士)選手の両ボランチがボールをいっぱい触って、リズムを作らなければいけない」と今後のさらなる改善を見据えた。
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課題もある中、今後の光明も見えた。ボール保持率は58%を記録し、パス成功数も新潟の361本に対して572本と圧倒。相手の代名詞を上回る結果に、古賀も「そこが全てではないと思っていますけど、自分たちがやろうとしていることは相手にとって嫌なことなんだろうと感じた。そこは1つ自信を持って良い部分」とうなずく。
前線での崩しやチャンスの構築も課題だったが、得点場面も含めて、前半43分には熊坂のワンタッチパスからMF久保藤次郎がエリア内に抜け出すシーンがあるなど、改善の傾向にある。後半25分にはFW細谷真大が反転してから積極的にミドルシュートを狙うなど、パスで崩す以外の得点の香りも感じさせた。「2点目、3点目を取れるようにしていくことで、チームとしてのゲーム運びもより楽になってくる」と小島が話すように、追加点の問題を乗り越えた先には首位奪還も見えてくる。