阪神・伊原 Y石川と投げ合った100球はきっと糧になる 安藤投手CがG桑田の凄みを目標にしたように
2025年5月5日(月)8時0分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神2—5ヤクルト(2025年5月4日 甲子園)
【畑野理之の談々畑】もちろんチームの勝利が一番大事なこと。当然、成長するためには投げ勝った方がいい。それでも阪神の伊原陵人には貴重な時間だったと思う。
相手はヤクルトの石川雅規。この日の今季2勝目で通算188勝になった球界のレジェンドの一人だ。6回まで互角に投げ合った。7回、1死から古賀優大に与えた四球が敗因か。一、二塁を招き、代打の増田珠に右中間を破られて力尽きた。
伊原は公称1メートル70、77キロで、石川より身長で3センチ高く、体重は4キロ重いだけ。背格好はあまり変わらず、同じ左投げ。投球スタイルは全てが同じではないものの、プロ1年生が24年目の大先輩から学ぶことは、決して少なくない。ちなみに、投手プレートの一塁側の同じ部分を踏んでいた。打ち取る相手は山田哲人やドミンゴ・サンタナだったものの、同じところから同じ景色を見ていた石川とも戦っていた。
150キロを超えるスピード全盛期の中、巧みな投球術や豊富な経験値で味方打線が手こずるシーンに嫉妬した。自身も実際に2打席に立ち、131キロの直球に振り遅れて、120キロ台の変化球にタイミングを完全に狂わされる場面もあった。
投手チーフコーチの安藤優也は現役時代、プロ4年目の05年8月27日の巨人戦(甲子園)で、桑田真澄と対戦。1ストライクからの2球目に二ゴロだった。この一度きり、たった2球だけの対戦だったが「こういうストレートを投げたい」と引退する17年まで、実際に打席で感じた凄みをその後12年間の目標にしたという。
伊原が甲子園で登板する時の登場曲に選んだのは、Mrs’GREEN APPLEのデビュー曲『StaRt』だった。この日も流れた歌詞の中に、こんなフレーズがある。
♪やっとこさ 幕開けだ ほら 寄って集まって! お手を拝借! スタートラインに立った今 そう 武装と創と造で登場!!!!! (中略)
♪幸せな時間をどれだけ過ごせるかは… 微々たるものでも愛に気づけるか。
大商大4年時にドラフト指名漏れ。社会人・NTT西日本での2年間も諦めなかった。プロ野球の世界、つまり幸せな時間がやっとこさ始まり、どれだけ過ごせるかの意気込みがピッタリだったのだろう。
プロ初黒星を喫して伊原は、「相手の投手がどうとかの感じはなかったです」と思い切り悔しがった。6回1/3で4失点、石川と“拳”を交わした球数100は、きっとこれからの糧になる。