中畑清氏 巨人の大黒柱・岡本離脱の非常事態 守り勝つ野球で乗り切れ

2025年5月9日(金)5時30分 スポーツニッポン

 【キヨシスタイル!】これが野球人なんだよな。危ないと思っても、アウトを取りたいから絶対逃げない。6日の巨人—阪神戦(東京ドーム)。岡本が本塁側にそれた三塁からの送球を捕りにいって打者走者の中野と交錯し、左肘を痛めた。じん帯損傷の重症だ。

 このプレー。投げた方に責任がある。私もやらかした。やっとレギュラーの座をつかんだ巨人入団4年目の79年、8月28日の中日戦(後楽園)だった。井上弘昭さんが三塁前へまさかのセーフティーバント。慌てて前進し、一塁送球がシュート回転して本塁寄りにそれた。懸命に体を伸ばした王貞治さんが走り込んできた井上さんと交錯し、肋骨を亀裂骨折した。

 王さんは「気にしないでいいよ」と言ってくれたけど、気にするよ。世界の王さんを見に球場へ足を運んでくれるファンの楽しみを奪ったんだから。未熟さを痛感。二度とこんなプレーはしない。そう誓って自分磨きに励んだ。81年途中にコンバートされた一塁で7年連続ゴールデングラブ賞を受賞できたのは、王さんにケガさせたプレーが原点になったように思う。

 一塁に回って逆の体験もした。82年10月5日の大洋(現DeNA)戦(後楽園)だった。三塁前ボテボテのゴロを捕った原辰徳からの送球がシュート回転。追いかけていって、今回の岡本のように打者走者の田代富雄に左肘を持っていかれた。最後の最後で中日に優勝をさらわれたシーズン。優勝していても日本シリーズには出られなかったと思う。今回三塁を守っていたルーキーの浦田。岡本に「気にするな」と言ってもらったと聞いてホッとした。これを糧にしてほしいな。

 今季の岡本には王さんに匹敵するような存在感があった。打つだけじゃなく、再三の好守で投手を助け、走塁でもヘッドスライディングしたりね。走攻守でチームを引っ張ってきた。長期離脱となれば当然、得点能力は落ちる。

 この非常事態を乗り切るには、打ち勝つ野球より守り勝つ野球。8回大勢、9回マルティネスの絶対的な武器を生かして、僅差の試合を逃げ切る。岡本には非情な言い方になるけど、野手は「チャンスが来た」と思ってさ。何とか1点をもぎ取り、必死に1点を守る。大黒柱の穴は全員でカバーするしかない。(本紙評論家・中畑 清)

スポーツニッポン

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