首位タナックにまさかのトラブル発生。オジエ、ロバンペラのトヨタ勢が逆転【第5戦デイ3レポート】
2025年5月18日(日)9時19分 AUTOSPORT web

5月17日、WRC世界ラリー選手権第5戦『ラリー・ポルトガル』のデイ3が行われ、SS12〜18を戦い終えたあと、トヨタ・ガズー・レーシング・ワールドラリーチームのセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合首位に浮上した。
「ハートブレイク(悲痛)」。モータースポーツの世界で頻繁に用いられる言葉だが、この第5戦ポルトガルでは前日の朝、デイ2のオープニングからラリーリーダーの座を守り続けてきたオイット・タナック(ヒョンデi20 Nラリー1)の心情を示すために使われることとなった。
デイ2の長い一日を終えたあと、総合2番手につけたオジエと7秒差の首位で競技3日目に入ったタナック。彼は今朝、SS12から連続ベストをマークしたオジエの猛追を受けるとともにSS13で左リヤタイヤのスローパンクチャーに見舞われ、リードをわずか2秒に減らした。しかし、今大会最長のステージである『アマランテ』の1走目で驚速タイムを叩き出し、同SSでは5番手タイムにとどまったオジエとの差を一気に11.8秒まで拡げてみせる。
ミッドデイサービスを挟んで迎えた午後のループでもタナックは反撃の手を緩めずSS15とSS16を制し、これで3連続ステージベスト。オジエもセカンドベストで応戦するがその差はじりじりと開きSS16終了時点で13.9秒となった。
ドラマが発生したのはこの直後、ふたたび迎えた全長20.10kmの『アマランテ』の再走ステージだった。ここで首位を走るタナックのマシンにパワーステアリングが効かなくなるトラブルが発生。約7カ月ぶりの勝利に向けて順調に進んでいたタナックはヒョンデi20 Nラリー1の車内で文字どおり格闘することとなった。
なんとかフィニッシュ地点までクルマを運んだタナックだったが、エストニア人ドライバーは同ステージだけで45秒を失った。これによりオジエが総合首位に浮上。デイ3最後のスーパーSSで今大会5度目のステージウインを果たした8冠王者は後続に27.6秒のリードを手にし、自身7度目のラリー・ポルトガル優勝に向けて俄然有利な状況を手に入れている。
「僕たちはふたりとも本当にハードにプッシュしていた。それが勝負なんだ」と語ったオジエ。
「たとえ彼の方が少し速かったとしても、プレッシャーをかけ続けようとした。前のステージの終わりに、エンジニアにこう言ったんだ。『正直、何が起きてもおかしくない。路面は荒れている。彼は本当にハードにプッシュしている。プレッシャーをかけ続けなければならない』とね」。
「嬉しくない」と彼は続けた。「こんなかたちで祝いたくはない。ただ、彼ができるだけ多くのポイントを取り戻してくれることを願っている。まだ終わっていない。明日は長い一日になる」
対するタナックは次にように語った。「これもゲームの一部だと思う。とても残念だが、僕たちは全力を尽くした」
タナックが総合3番手に後退したことで、最終日を前にカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合2番手に。これでトヨタはワン・ツー体制を築くことになったが、ロバンペラとタナクのタイムは8.5秒であることからデイ4では2番手の争いが激しくなるものと予想される。
また、4番手争いも熾烈だ。今朝の5番手から順位を上げてきたティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)が現在4番手。これを2.2秒差で勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)が追う展開となっている。勝田はロベンペラと3番手を争った午前中にステージ2番手と3番手タイムを記録するなど速さを見せていたが、午後の再走ステージでペースが落ちSS17でヌービルに逆転を許していた。
選手権リーダーのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、前日に続き厳しい一日を過ごし、若手のサミ・パヤリ(トヨタGRヤリス・ラリー1)に次ぐ総合7番手につけている。このウェールズ人ドライバーの後方にはMスポーツ勢が続きジョシュ・マッカーリーン(フォード・プーマ・ラリー1)が総合8番手、グレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマ・ラリー1)が同9番手に。
トップ10リザルトの最後にはWRC2クラスにエントリーしているオリバー・ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー2)がつけている。彼はクラス2番手のガス・グリーンスミス(シュコダ・ファビアRSラリー2)に対し50.1秒もの大差をつけている。
ラリー最終日となる18日日曜のデイ4は、サービスパークが置かれているマトジニョスの北西エリアで『パレーデス(SS19/SS22)』『フェルゲイラス(SS20/SS23)』、大ジャンプポイントがあることでで知られる『ファフェ(SS21/SS24)』という3本のステージを、ミットデイサービスを受けることなく各2回走行する。計6本のステージの合計距離は72.16kmでリエゾン(移動区間)も含む一日の総走行距離は410.67kmにのぼる。