【玉ノ井親方 視点】綱獲りへ関門 大の里は若隆景に中に入られるのが一番嫌...勝負の鍵は立ち合い
2025年5月20日(火)20時32分 スポーツニッポン
◇大相撲夏場所10日目(2025年5月20日 東京・両国国技館)
“巧さ勝ち”だった。若隆景は立ち合いで当たってすぐに差しにいくかと思われたが、安青錦の出方をうかがうように“間合い”を取った。初顔ということもあり、不用意にいって右を差されたりすると、面倒な展開になることもあるので、じっくり攻めようとしたのだろう。
安青錦の突っ張りを下から跳ね上げるように応戦。相手の左脇が空いた瞬間、右腕をねじ込んだ。安青錦が態勢を立て直そうと、前に出てきたところを右に回り込み、左手で相手の肩を押さえ、最後は肩透かしで仕留めた。
勢いのある安青錦の出足の力を吸収するような、若隆景のうまさが光る取口だった。
あす11日目は綱獲りを狙う大の里戦。楽しみな一番が早くも組まれた。今の大関はどっしりと構えて、落ち着いて取っている。右を差せなくても左手一本で一山本の体をグラつかせた。着実に優勝に、そして綱獲りに近づいている。
ただ、勝負事はゲタを履くまで分からない。若隆景としては大関の右差し、そして左からのおっつけをかいくぐって、とにかく中に入りたいところ。そうすればチャンスは出てくる。
大の里は中に入られるのが一番嫌だから、立ち合いでしっかり当たるか、もろ手で当たるか、立ち合いの出来が勝負を分ける鍵になりそうだ。
(元大関・栃東)