【現地発】佐々木朗希の「球速低下」の原因は? 復帰までの道筋は? 密着記者が感じた怪物の“異変”
2025年5月21日(水)16時10分 ココカラネクスト

佐々木にはまだまだ乗り越えなければならない壁が多そうだ(C)Getty Images
ドジャース佐々木朗希は5月13日(日本時間14日)、右肩のインピンジメントで15日間の負傷者リスト(IL)入りとなり、戦列から離脱した。翌日、メディアの囲み取材に応じ、経緯を自らの言葉で説明した。
「ここ2試合ぐらいは、ちょっとパフォーマンス的にもなかなか肩の状態もあって、上がってこなかったかなと。もちろんチーム状況もあって投げ続けたい気持ちもあったんですけど、パフォーマンスがあれだと、さすがに迷惑かかるかなと思ったので、自分から申し出る形となりました」
【動画】落差1mの魔球に強打者も呆然 佐々木朗希の奪三振シーン
投手陣に故障者が続出している状況だった。サイ・ヤング賞2度の実績がある左腕ブレイク・スネル、昨年9勝を挙げたタイラー・グラスノーがともに肩の痛みを訴え、先発ローテーションから外れていた。結果、内容ともに安定感をキープしているのは、主戦投手の山本由伸のみ。佐々木は、違和感を抱えながら投球を続けていたことも明かした。
「痛み自体は2登板前ぐらいから。動きの悪さというか、しっくりこない感じはあったので。ただ、痛みじゃない分、もちろんある程度は投げられる状態だったので、その期間は投げるようにはしてました」
2登板前とは、メジャー初勝利を挙げた5月3日のブレーブス戦だ。この日の直球の平均球速は94.8マイル(約153キロ)で、移籍後では4月19日の敵地レンジャーズ戦(94.7マイル)に次ぎ、2番目に低い数字だった。もっとも佐々木は、メジャーデビュー戦となった東京ドームでの開幕2戦目、3月19日にカブス戦が平均球速では最速の98マイル(約158キロ)。2度目の登板以降、本来の球威が影を潜めた。
スプリットは落ちながらシュートしたり、スライダーのように曲がったり、3月のオープン戦期間には、まるでナックルボールのような魔球だと表現された。一方で、その必殺球は速球の球威がなければ、生きてこない。数字でも顕著に表れている。初登板の3月19日は、スプリットの空振り率が50%。肩の違和感を我慢しながら投げていた影響もあったと考えられるが、IL入り前の2登板では、5月3日のブレーブス戦が空振り率10%、同9日のダイヤモンドバックス戦は21.1%と明らかな違いがあった。佐々木はIL入り後に、パフォーマンス低下の要因について「全てがそれに影響してるかどうか分からないですけど、その影響自体はあったかなとは思います」と認めた。
右肩痛に加え、さまざまな環境の変化も、佐々木にとっては越えなくてはいけない壁だった。足を上げ、体重移動してから踏み込む左足の位置だけでなく、軸足の右足をプレートにかける時の角度も微修正した。また、4月末にコナー・マクギネス投手コーチ補佐は、2年目でメジャー球に対応できている山本と比べ、佐々木はまだ対応しきれていないことを指摘。さらに、「もっと、ピッチクロックにも慣れさせないといけない。例えば10秒も残っているのに、彼は少し急ぐことがあった」と話した。ピッチクロックは走者がいない状況で捕手からボールを受け取って15秒、走者ありでは18秒以内に投球動作に入らないといけないという、23年から導入されたルールだ。
右肩痛に加え、ボールや投球リズムが変化し、メカニック(投球動作)にもズレが生じていたのかもしれない。5月末にかけてキャッチボールを再開する見込みだが、IL入り後はノースローで調整。今後は肩の状態を確認しながら、本来の感覚と投球フォームを取り戻せるよう、調整を進めていくことになるだろう。
[文:斎藤庸裕]
【著者プロフィール】
ロサンゼルス在住のスポーツライター。慶應義塾大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。プロ野球担当記者としてロッテ、巨人、楽天の3球団を取材した。退社後、単身で渡米し、17年にサンディエゴ州立大学で「スポーツMBAプログラム」の修士課程を修了してMBA取得。フリーランスの記者として2018年からMLBの取材を行う。著書に『大谷翔平語録』(宝島社)、『 大谷翔平〜偉業への軌跡〜【永久保存版】 歴史を動かした真の二刀流』(あさ出版)。
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