【DeNA】バウアーも絶賛する捕手・松尾汐恩を変えた大活躍の開幕3戦目で受けた“悔しい交代指示”「信頼がないということ」

2025年5月24日(土)6時30分 ココカラネクスト

捕手として成長を続ける松尾は、チームのエース格となっている助っ人バウアーからの信頼も高まっている。(C)産経新聞社

捕手としての急成長に繋げた「交代」

「反省を次に活かして、キャッチャーとしていいものを見せてくれています」

 DeNAを率いる三浦大輔監督はプロ3年目を迎えた松尾汐恩の捕手としての成長を口にする。

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 高卒ドラ1でプロの門を叩き、順調にステップアップを果たしているトッププロスペクトは、3、4月にわずか4試合だったスタメンマスクの機会が、5月22日時点で6試合と大幅増加。日本代表にも名を連ねた山本祐大がいる中での捕手起用は、持ち前のバッティングに加え、女房役としてのスキルアップが認められた証でもある。

 開幕2か月足らずでの急成長——。そこには開幕3戦目で起きた、“ある出来事”が本人に小さくない影響を与えていた。

 この日、松尾は平良拳太郎とのバッテリーでスタメン出場し、強気な配球で中日打線を封じ込める好リードを披露。バッティングでも5回にプロ入り初ホームランを放ち、晴れてヒーローとなった。

 しかし、DeNAが1点をリードした9回にマスクを被っていたのは山本だった。「そう簡単に最後までは守れないんだよということ」と当時を回想する相川亮二ディフェンスチーフコーチは、「悔しい顔をしていたことが僕には嬉しい」と大活躍の試合で生じた一点の曇りを重く受け止めた愛弟子に眦を下げた。

「やっぱり最後までフィールドに立って試合を終えることは、キャッチャーとして大事なこと。最後の最後で代えられてしまったということは信頼がないということですし、もっともっと多くのことを積み重ねて行かないといけないんだなって、シンプルに思いました」

 そう振り返る松尾は、侍ジャパンでもマスクを被る山本との差を埋めるには「まずは姿勢で見せるしかない」と猛省。「どれだけ自分が失敗してもピッチャーとのコミュニケーションは欠かさないようにしました。失敗を反省することがいちばん大切なことだと思っているので、その点はいまも大事にしてやり続けています」とトライアンドエラーの重要性を説いた。

「なかなかうまく行かないことが続いても、帰ってからも、球場に来てからでも、ちょっとでも時間ができたらデータを見るようにしています」

 気づけば、グラウンド内外で常にアップデートを心がけるようになった。そして、当初は平良拳太郎の“専属捕手”だった松尾は、元サイ・ヤング賞投手のトレバー・バウアーとも組み始め、「コミュニケーション能力に優れた選手だと思います。またリード、ブロッキング、キャッチング。素晴らしい選手です」と絶賛されるまでにコンビ仲を熟成。さらに2年目の石田裕太郎の女房役にも抜擢され、見事に完封劇をアシストし、声価を高めた。

「シオンとはずっといいコミュニケーションを取っていますし、今日もあんまり首を振らずに投げられました。試合前の入念なミーティングを重ねて、その通りの要求に沿って投げられた結果ですね。シオンのおかげです」

 シオンのおかげ——。そう言われるまでに信頼を高めた松尾は、誰もが認めるコミュニケーション能力を活かしながら、悔しさを結果に繋げた。

盗塁阻止の動作に見る松尾の才覚

 無論、松尾の才覚は「コミュニケーション能力」だけではない。フィールディング技術の高さ、さらに盗塁阻止にも目を見張る成長がある。

 現役時代に侍ジャパンのマスクを被った相川コーチも「キャッチャー周りのことだけではないところのプレーにも、本当にセンスがありますよね。スローイング強化のためにサードで練習を毎日しているんですけど、捕球から送球の動きを見ていると、あまりキャッチャーでは見られないセンスを感じます」と驚きを隠さない。

「ワンバウンドからのスローイングであったり、素早いバント処理にも繋がっている気がします。もともと本人の持っているセンスですね」

 また、阻止率が5割に迫る勢いの盗塁阻止の動作にも相川コーチは、「数秒しかない中での状況判断になる。モーションを盗まれているのかいないのか、その中でどれぐらいのさばき方で動くのかという判断をしないといけない」と成長を指摘する。

「全部が全部早く投げればいいというわけではなく、送球強度のパーセンテージが下がれば精度は高くなりますし、上がれば精度は低くなります。毎日反復練習をしているので、そこの使い分けが今年はすごく上手にできていると感じています」

 当人も「フィールディングは自分の中では自然にできることです。ひとつの武器だと思っています」とニヤリ。盗塁阻止にも「使い分けは日々の練習でやっていて、良くなってきていると思いますね」と自信を深めている。

 ありとあらゆる要素が絡んでのスタメン機会の増加。相川コーチも「監督から見ても不安がないなというプレーを見せられたということですね」と目を細め、「いくら能力が高いから『我慢して使いましょう』と言っても、とにかく結果しかない世界なので」とあくまで本人の成果の賜物だと言い切る。現役時代に1508試合出場の経験を持つ百戦錬磨の名手にここまで言わしめるのは、松尾のポテンシャルの高さを改めて裏付けるものだと言える。

 芽が出るのに時間がかかると言われている捕手というポジションで、1年目から「一軍正捕手」を掲げてきた松尾。今の彼には、その目標を早々と叶えてしまっても、不思議ではないと思わせる“何か”がある。

[取材・文/萩原孝弘]

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