トランプ氏長男が支援する“薬物容認スポーツ大会”が波紋! 参加アスリートに反発殺到「利益を優先する危険な道化芝居」
2025年5月24日(土)6時0分 ココカラネクスト

水泳競技での参加を表明しているマグヌッセン。(C)Getty Images
スポーツの根幹を揺るがす大会が開催されようとしている。2026年5月21日から24日にかけて、米ネバダ州ラスベガスのホテル「リゾーツ・ワールド」で第1回大会が行われる予定となっている「エンハンスト・ゲームズ」だ。
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オーストラリアの起業家アロン・デスーザ氏が創始者となったこの大会は、「Enhanced(強化された、改良された)」という名が示す通り、ステロイドやヒト成長ホルモンなど国際大会で禁止されている薬物の使用が容認された異例の枠組みの中で行われる。
陸上(100メートル、女子100メートルハードルと男子110メートルハードル)、水泳(50メートルと100メートルの自由形およびバタフライ)、重量挙げ(スナッチおよびクリーン&ジャーク)の3競技の実施が決定。各種目の優勝者には25万ドル(約3600万円)、世界記録を破った選手には100万ドル(約1億4400万円)のボーナスが付与される。
デスーザ氏が「技術力と科学が急速に変化する時代に、世界は、未来、特に医学の進歩を取り入れたスポーツイベントを必要としている」と明言する同大会は、ドナルド・トランプ米大統領の長男であるジュニア氏らが支援を表明し、資金面の課題もクリア。AP通信などによると、競泳では世界選手権男子100メートル自由形で2011年、13年と連覇したジェームズ・マグヌッセン(オーストラリア)に加え、男子50メートルバタフライの世界記録保持者アンドリー・ゴボロフ(ウクライナ)ら実力者が参加を表明。第1回は総勢200人程度の出場を見込んでいるという。
もっとも、スポーツを越えた倫理的な面から批判は殺到している。米国反ドーピング機関(USADA)のトラビス・タイガートCEOは、英紙『The Gurdian』などで「利益を優先する危険な道化芝居」だと猛反発。世界反ドーピング機関(WADA)も「危険だ」と計画を糾弾し、「禁止された物質や方法を使用した選手が、深刻で長期的な副作用に苦しんだ例は数多くある。死者も出ている」と警鐘を鳴らした。
「WADAはエンハンスト・ゲームを危険で無責任なコンセプトとして非難する。選手の健康と福祉がWADAの最優先事項である。この大会は明らかに、エンターテインメントやマーケティングを目的として選手が強力な物質や方法を使用することを促進しようとしており、それ(選手の健康と福祉)を危険にさらすことになる」
また、アスリート側からも懐疑的な見方が強まっている。マグヌッセンの母国でオーストラリアの反ドーピング組織『SIA』のアスリート諮問委員会は、「パフォーマンス向上薬の常態化は、娯楽としてのドーピングを促進し、アスリートを危険にさらし、クリーンな競技を選んだ選手の努力を軽視することになる」と断言。エンハンスト・ゲームの運営組織はもちろん、参加選手への不信感をあらわにした。
「我々は特に若いアスリートに対するロールモデルとしての悪影響、そしてうっかり『ドーピングが安全なんだ』と思われてしまう可能性のあるパフォーマンス向上物質や方法の使用に伴う健康リスクを懸念している」
「参加を検討しているアスリートに対しては、自分自身の健康的なリスクだけでなく、彼らを尊敬し、その選択に倣う若いアスリートたちに、その選択が及ぼす影響についても再考し、十分に理解するよう強く求める」
豊富な資金力を背景に、ある種の娯楽として開かれようとしている同大会。そのハレーションは広まる一方である。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]