横綱昇進確実の大の里を一番近くで見てきた父の願い「みんなに好かれて、好かれて、その後に憎たらしいほど強くなってほしい」
2025年5月26日(月)5時20分 スポーツ報知
賜杯を手に祝福を受ける大の里(後方左から)母の中村朋子さん、妹の葵さん、父の知幸さん(代表撮影)
◆大相撲 ▽夏場所千秋楽(25日、東京・両国国技館)
2場所連続優勝で横綱昇進を確実にした大関・大の里は夏場所を14勝1敗で終えた。初日、8日目、千秋楽と3度、東京・両国国技館で息子の雄姿を見守った父・中村知幸さん(49)がスポーツ報知の取材に応じた。大関昇進後の苦悩を明かしつつ、「憎たらしいほど強くなって」と今後の飛躍を期待した。(取材・構成=山田 豊)
長い15日間が終わり、ホッとしています。2年前は入門して、1年前は優勝して、今日また優勝して。頂点に手がかかるような人間になった。すごい息子だなって思いますね。
思い出すのは、大関として出席した2月の石川・津幡町での報告会。故郷での報告会の前日、実家で昼食をともにした時に本人は「次(3月の春場所)が大事やね」と淡々としていたのが印象的だった。昔から「大会に勝つぞ」とか言わず、内に秘めるタイプでしたから。
1月の初場所は、10勝5敗で優勝には届かなかった。調子が良くて、実は稽古量も増やしていた。それでも勝てなかった。勝ちを変に意識しすぎたのでしょうね。その時に「なんで勝てんのやろ…」とつぶやいていた。だから、「人は急に強くもならんし、弱くもならんよ」と伝えました。それで(3度目の優勝となった)春場所から吹っ切れたのかな。
一番強くて、運を持っている関取が横綱になれると言われている。そこは自覚していたはず。仮になれないなら、本人の実力がまだまだだと受け止める。だから、絶対に勝ってくれなんて言えません。「相撲の神様」がUFOキャッチャーみたいに、ひょいとつまんでくれたらありがたいなと思って見守っていました。
大関昇進の口上で決意を述べた四字熟語は「唯一無二」。実は私が最初に言った、好きな言葉なんです。口上が書かれた化粧まわしを見ると気恥ずかしくなってしまいますね。だけど、その言葉に近づいていくのなら、良いかなと思います。以前から、みんなに好かれる力士になってほしいと言っている。好かれて、好かれて、その後に憎たらしいほど強くなってほしい。
親としては、ちょっと遠い存在になってしまったような顔も垣間見る。本人からほとんど連絡は来ませんが、本場所で不調だったり、予期せぬ時に電話したりすると、息子の泰輝(だいき)やなと感じる。今でも、私を頼ってきてくれると思うとうれしくなる。どの親にとっても、子供は「唯一無二」ですからね。