3戦目にして悲壮感漂う不振のGT500王者。現状打開に向けて平峰&バケット「失うものは何もない」

　早くもシーズン中盤に差し掛かろうとしている2023年のスーパーGTシリーズ。ここまで2戦を終えて、順調にポイントを積み重ねているチームもあれば、苦戦を強いられているところもある。GT500クラスでは、昨年チャンピオンを獲得したMARELLI IMPUL Z（平峰一貴／ベルトラン・バケット）も、その1チームだ。

　開幕戦の岡山では、ウエットコンディションの影響もあってか予選12番手と後方に沈み、決勝では6番手でフィニッシュするも満足いくレースウイークとはならなかった。第2戦富士でも予選で速さを見せられず12番手でQ1敗退。決勝もペースを上げられず9位でチェッカーを受けた。

　2戦ともポイントを獲得しているとはいえ、ディフェンディングチャンピオンとしては納得のいかない結果が続いている。この現状を受けバケットは「正直、クルマのバランスやペースなど、良いフィーリングを得られていない。最初の2レースはあまりポジティブな要素は得られなかった。まずは、現状を打開するための解決策を見つけなければならない」と渋い表情を見せる。

　相方の平峰も「自分たちが思っているようなスピードや結果を残せていないことは、見ていただいてのとおりです。そこをどうやって乗り越えてくるかが、今の自分たちに課せられている仕事だと思います。なんとか挽回したいなという気持ちです」と、かなり危機感を感じている様子だった。

　そんななか、今回の第3戦鈴鹿に向けては、現状を打開するべく新しいセッティングなど、今までとは異なる試みも積極的に取り入れていくという。

「シーズン中にテストもそんなにできるわけではないので、いろいろなことをトライしないと前に進めないので、セットアップだったり、ドライビングも含めて、今回もいろいろなメニューを持ち込んでいます」と平峰。

「その分、（今週末については）未知数ではありますけど、きっと競争力は発揮できるかなと思います」と、現段階で手応えは得られていない状態だが、第2戦富士からのインターバルでチームと準備してきたものへの期待は大きいようだ。

　TEAM IMPULといえば、昨年8月の第5戦で“テール・トゥ・ウイン”を飾ったことは、多くのファンや関係者の間でも記憶に残っている出来事だと思われる。しかし、そのレースを振り返った平峰は「昨年もスピード的に一番だったというわけではなくて、どちらかというとピットストップのタイミングなど、運の要素が強かったなと思います」と冷静に分析。「本来ならトップ3に入っているか入っていないかのパフォーマンスだったと思います。昨年も上位のクルマにいろいろなあったので、あのポジションに行けたというところもあります」と、展開に恵まれた部分が大きかったと明かした。

　だからこそ、この鈴鹿でも予選・決勝からのペース改善が絶対必要な状況だ。「（今回で第3戦なので）なるべく多くのポイントを獲らないとダメなタイミングに近づいてきているのかなと思います。今年は運にあまり多くの期待をせず、自分たちのベストを尽くすレースをしたいです」と平峰は決意を新たにしていた。

　同じくバケットも、不退転の覚悟で今週末のレースに臨もうとしている。

「2レースを終えてこういう状態だから、失うものは何もないという勢いで今週末に臨まないといけない。クルマのバランスやペースを改善するために、今回はいろいろなものを変更して、新しいトライもたくさんやっていく。クルマのセットも今までとは大きく変わったものになるかもしれない。それで競争力を復活させられればいいなと思う」

　今回のMARELLI IMPUL Zは14kgと比較的軽めのサクセスウエイトで臨めるため、チャンスが大きいのではないかという見方もあるが、バケットは「GT500で今回一番サクセスウエイトが重いのは23号車だと思うけど、燃料リストリクターの制限に入っていないから、大きな差はないと思っている」と優位性を否定。

「いずれにしても、僕たちのペースを上げないといけないのは確かで、今は良いセットアップを見つけることにチームとともに頑張っている最中だ。明日の公式練習で良いきっかけを掴みたいなと思っている」と、いつになく険しい表情で話していたのが、印象的だった。

　昨年、劇的な優勝を飾った鈴鹿サーキットで復活のきっかけを掴むことができるか。TEAM IMPUL陣営にとっては勝負の2日間となりそうだ。