SF復帰戦で予選3番手も、まだ“100%”ではない野尻智紀。入院とモノコック交換の顛末/第5戦SUGO

2023年6月17日(土)21時17分 AUTOSPORT web

 最高気温29℃と、真夏日に迫るコンディションとなった全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦SUGOの公式予選。前回の第4戦を肺気胸の診断を受けて欠場した野尻智紀(TEAM MUGEN)だが、SF復帰戦となった今回は、ブランクを感じさせない走りで3番手を獲得した。


 さすが2連覇王者の貫禄をみせる復活劇だったのだが、セッション後の記者会見ではメディアの前で初めて入院していた事実を明かした。現在は体調も回復しているのだが、ここに至るまでには、自分の身体に気を使って準備を進めてきたという。


■「気力だけは誰よりも溜めてきた」


 欠場したオートポリスでは予選・決勝日ともにサーキットに現れ、コースサイドでマシンの動きをチェックしていた野尻。そこで新たな発見もいくつかあったとのことで、それらを今大会に取り入れて走行セッションに臨んでいる。


 ただ、オートポリスから東京に戻った後に、1週間ほど入院したとのこと。一瞬、症状が悪化していたのではないかと、こちら側も不安がよぎったが、これについて野尻は「肺の周りに空気が溜まってしまっていたので、それを抜いてあげた方が、肺が自然と膨らんでくれるということで、そういう処置をしてもらうために、1週間くらい入院していました」と説明。あくまで体調回復に向けた処理をするための入院だったという。


 退院後には、6月3〜4日には鈴鹿サーキットでスーパーGT第3戦に参戦を果たしたのだが、「正直、GTの鈴鹿はギリギリというか、けっこう微妙な判断だったのかなと思うんですけど、あそこでしっかりとステップを踏めたので、今週ここに帰ってこられたというのもあります」」と野尻。今週末に関しても体調が100%の状態かと言われると、少し違うらしい。


「鈴鹿よりは良くなっていますけど、まだ100%という状態ではありません。正直いうとトレーニングも何もしていない状態でした。私生活で力を入れずにゆっくり動いて、あまり負荷をかけないようにしてここに来ているという感じなので、トレーニングを積めるのはこれからなのかなというところです」


 スーパーGTよりもスーパーフォーミュラの方が、身体への負荷が大きいほか、今回のスポーツランドSUGOは、高いGが長時間かかる最終コーナーがあることでも有名。野尻にとって、明日の決勝レースは体力勝負の面も出てくることになりそうだ。


 それについて野尻は、「今週は体力的に難しいところがあるのかなと思うので、気力を振り絞っていきたいです。気力だけは誰よりも溜めてきたと思うので、いいレースができると思うので、頑張りたいと思います」と笑顔を見せ、決勝に向けて気合いを入れ直している様子だった。


 そんな野尻が駆る1号車だが、大会前の6月16日(金)17時30分に、公式通知No.13が発行され、シャーシー(モノコック)を交換し、これに対して審査委員会が承認したことが明らかとなった。


 スーパーフォーミュラでは、大会前であればモノコックを交換してもペナルティにはならないのだが、特に大きなクラッシュもない中での交換というのは、珍しいケースだ。


 これについては、「ずっと、同じモノコックを使っていたのですが、今後も使っていくとなると、どこかでモノコックを換えようかという話はしていました。そこで、今がいいんじゃないかとなりました」と野尻。


 田中洋克監督によると、第4戦オートポリスが終わってから1号車のモノコックにダメージがあることが判明したという。


 振り返ると、今季の1号車は3月の鈴鹿公式テストの際にコースオフを喫してフロントウイングをタイヤバリヤにヒットしたほか、第3戦鈴鹿では大湯都史樹(TGM Grand Prix)との接触で、インパクトが大きめなクラッシュを喫した。大津弘樹が代役出走した第4戦オートポリスの予選でもスポンジバリアにクラッシュしたが、この時はサスペンション周りにダメージが及んでいない程度の損傷具合だった。


「修理しようとしたんですけど、修理をする時間もないし、クルマも調子が良くなかったというのもあったなかで、ダメージが見つかりました。これからも、このモノコックを使っていかないといけないと考えると、このタイミングで換えようかということになりました。本当に致し方なかったなという感じです」と田中監督。


 もちろん、モノコックを換えると、マシンバランスやキャラクターが一変すると言われているが、新モノコック最初のセッションとなったフリー走行では19番手に沈んだ。「(モノコックを換えた影響は)ありましたけど、そこをうまく合わせ込まないといけないですから、苦労はしましたけど、最後に間に合って良かったなという感じはあります」と野尻。


「乗りやすさというのはちょっと捨てて、ピークを出すようにクルマのすべてを持っていった」と予選後の記者会見でも話していたが、フリー走行からのリカバリー力が光った予選だったと言えるかもしれない。


 いずれにしても、復帰戦の本番となる明日の決勝レース。今日よりも気温が上がると言われており、ドライバーにとってはタフなレースになりそうだ。体調面も含めて、2連覇王者にとっては踏ん張りどころの1戦となるだろう。

2023スーパーフォーミュラ第5戦SUGO 野尻智紀(TEAM MUGEN)

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