吉田正尚の成功を生んだ日本での周到な分析 レ軍首脳陣に反発覚悟で大枚を叩かせた“対応力”「従来のやり方ではダメ」

2023年6月20日(火)16時0分 ココカラネクスト

レッドソックスで安定して活躍を続ける吉田。その圧巻の打撃スキルに開幕当初の評価は一変している。(C)Getty Images

 メジャー1年目ながら吉田正尚(レッドソックス)は圧巻の打撃スキルを見せつけている。

 直近7試合は打率.240とやや低調気味だが、それでも3割台(.302)は維持。さらに出塁率.375、OPS.848と安定した成績を残しており、名門レッドソックスに欠かせぬ主力となっている。

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 もっとも、開幕前にここまで安定した成績を残せると予想した者は少なかった。日本で通算打率.327、出塁率.421を残した吉田の技量にレッドソックスは5年9000万ドル(約126億円)という大型契約を提示したのだが、これを「払いすぎではないか」と見るメジャーリーグのスカウティング関係者が多かったのは事実だ。

 ただ、レッドソックスには吉田の活躍に確信めいたものがあった。米スポーツ専門局『ESPN』の取材に応じた球団スカウトを務める育成統括部門長のガス・クアットルバウム氏は「彼は我々のトップターゲットだったから是が非でもほしかったんだ。そのためには従来のやり方はダメなんだと思っていた。もちろん、周りからの反発は受けるものだとは思っていた」と獲得の舞台裏を明かしている。

 レッドソックスは熱心だった。2019年から徹底的にスカウティングし、コロナ禍でも映像をもとに常に情報を密に共有していた。そして、ありとあらゆるデータや実際のプレーから吉田がメジャーでの懸念も克服できると決断。大枚を叩く覚悟を決めたのである。

 吉田のメジャー移籍に際して、最も多くの論じられた懸念点の一つが、速球への対応だった。世界中の剛腕が集う米球界において「日本人投手の平均球速はメジャーと比較して遅い」という固定概念があったからだ。実際、それは間違いなどではなく、22年の平均球速はNPBが90.8マイル(約146.1キロ)だったのに対し、MLBの速球は93.6マイル(約150.6キロ)である。

 だが、29歳の日本人はレッドソックス首脳陣の懸念を吹き飛ばした。スカウティングにも関わったというピーター・ファットシー打撃コーチは、あらゆる球速帯のボールに的確な反応をする吉田のバッティングを目の当たりにし、「変化球であれ、速球であれ、彼のメカニクスは決して崩れることはなかった。打席内でテコ入れをする必要がなかったんだ。あれは私の目を輝かせた」という。

 日本での周到な分析と、他でもない当人の図抜けたスキルがあったからこそ、周囲が反発を受けようともブレなかった。レッドソックスは吉田の成功に絶対的な自信を持っていたのだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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