期待の「打てるキャッチャー」になるための課題は? 名捕手が見たDeNA高卒2年目の逸材・松尾汐恩の「現在地」

2024年8月4日(日)7時0分 ココカラネクスト

悲願の優勝へ三浦監督の舵取りも注目となる(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext

名伯楽も認める非凡な打撃センス

 オールスターを目前にした7月15日だった。DeNAのプロスペクト捕手である松尾汐恩が一軍に戻ってきた。

「前日に電話が来て」と本人は少々驚くが、松尾はイースタンリーグの首位打者となる打率.327、さらに出塁率、OPSもリーグトップの好成績を記録。それだけに実績が評価されての必然の昇格とも言えた。

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 高卒2年目の今年は春季キャンプから一軍に抜擢。オープン戦では打率.375、1ホームラン、OPS1.040とバッティングで猛アピールして開幕一軍の切符もゲット。しかし、いざ本番を迎えると、打率.182とバットも湿りがちになり、4月14日には二軍行きを告げられた。

 ただ、2年目にして「一軍でレギュラー」という目標を掲げる20歳は、成績不振による降格にも「やることは変わらない」と素早くマインドセット。自主トレを共にし、「師匠」と慕う戸柱恭孝の「腐るなよ」の言葉もあり、「自分に負けずに頑張ろうっていう気になれました」と日々奮起。己がやってきたことを信じ、大きな変化を求めず、コツコツと研鑽を積んだ。

 そうして再び掴んだ一軍の座。名だたる打者を育て上げた名伯楽・田代富雄打撃コーチは「スイングがまた一段と強くなってるね。しっかりとした振りになっている」と春先からの成長に頷いた。

 また、「ボールを長く見られる。だから引きつけて、バットの芯が身体の近くを通って巻き付く感じで。なかなか教えても難しいことを、普通のバッターより上手くやるんだ」と自然とインサイドアウトの形が作れている点を評価する。

「変えることはない。やることはもう一緒でいい。やっぱり自分の良さっていうのを自覚しながらやっていかなきゃダメだよって、俺は本人に言ってるし。だから、多少のフォームの調整はあるけど、大きくは変えないしそのままやらせるよ」

 松尾本人も名伯楽の意図を汲むように「変えた部分はないです」と冷静に語る、そして降格後に続いた二軍での快打を「そこまで色々考えることなく打席に立てていた。だからこその結果かもしれないですね。どうしようみたいな、そんなに深く考えることはなかった」と自己評価。より自然に、より感じるままにスイングしたことが功を奏した。

 もっとも、ルーキーイヤーからバッティングセンスは非凡なものをみせていた。それは田代コーチだけでなく、各コーチも認めるところだ。

 石井琢朗チーフ打撃コーチは「反応がいいですし、修正能力も高いです。また一発で仕留められる能力も持っています」と絶賛。「近い将来、クリーンアップを打てるキャッチャーとして獲ったと思うし、その素質を僕は持ってると思います」とキッパリ言い切る。

打撃でアピールを続けている松尾。その非凡なセンスに三浦大輔監督も目を細める。写真:萩原孝弘

捕手としては発展途上。逸材捕手の課題は?

 一方で捕手としての発展途上だ。相川亮二バッテリーコーチは「一軍のピッチャーって言うと話は変わってくる」と二軍での経験は別物と断言。「もちろん日々成長している選手なので楽しみには見てますけど、課題も日々変わってくるし、いろんなことに挑戦しながらですから。キャッチャーとしてだと、僕はまだ期待はしてない。楽しみにはしてますけどね」と現状に厳しい目を向ける。

 ただ、「やっぱり打撃っていうところは彼の1番の持ち味。まずはそれをどんどん活かしていくことが大事。チームは期待で呼んでるわけじゃなくて、松尾が二軍で打撃で結果を残していたから呼ばれたので」と打てるキャッチャーとして鳴らした名捕手の目にも、非凡な打撃センスは魅力的に映っている。

 当人も「自分のアピールポイントであるバッティングで、まずは結果を出さないといけない」と一軍で生き残るポイントは理解する。実際、昇格後は7月19日から6試合続けて代打で起用され、20日のヤクルト戦では田口麗斗からセンター前ヒットを記録。28日の巨人戦では菅野智之の一球をレフト前に運んでみせた。

 三浦大輔監督も「一軍では久々のマスクになりましたけれども、親子ゲームではマスクを被ったりしてましたから、少ないケースでもしっかりとピッチャーリードできてましたし、バッティングでも1本出ましたしね。楽しみな選手です」と昇格後は打率.322(※8月3日時点)と数字を残す松尾の成長に目を細める。

 また、「バッティングの状態はいい。何かをこちらに感じさせるものを持ってますから」と語る三浦監督は、「打席での雰囲気もそうですし、ファンの方の声援や空気感もすごいですし。右の代打で、これからも使っていきたいと思っています」と、スターダムを駆け上がる松尾の継続的な起用を明言している。

 周囲の期待は高まる。しかし、弱冠二十歳の若武者は「いつでも変わらず、自分の最低限できることっていうところをまずしっかりできるようにっていうところを大切にして、あとはもう自分の持ってる力を全部出し切ることっていうのはやっていきたいですね」と地に足のついた姿勢で、一線級のピッチャーと対峙していくと言葉に力を込める。

 首脳陣が声を揃えて認める天賦の才を持つ。そんなトッププロスペクトの成長が、ハマの希望へと直結していく。

[取材・文/萩原孝弘]

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