【シェーファーアヴィ幸樹の視点】歴史の転換点になった今大会のMVPは誰?「河村選手も良かったし、雄太さんも凄かったけど」【バスケW杯】

2023年9月3日(日)11時30分 ココカラネクスト

攻守に日本を牽引したホーキンソン。カーボベルデ戦ではチーム最多の29得点を挙げた(C)Getty Images

 9月2日に「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の17−32位決定ラウンドが行われ、日本代表(世界ランク36位)がカーボベルデ代表(同64位)を80-71で撃破。来年のパリ五輪の切符を獲得した。日本が今大会初めてリードを守り切って勝利したこの試合を、「現役選手」はどう見たのか。日本代表として東京五輪を戦い、現在は右膝前十字じん帯断裂から復帰を目指すシーホース三河のシェーファーアヴィ幸樹に試合の感想を聞いた。

【動画】リバウンドを取って自ら速攻!バスケットカウントも奪ったホーキンソンの驚愕プレーの映像

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 今日の日本は、もう本当にめちゃくちゃ良かったです。試合の出だしから第3クォーターまで完璧な試合運びでした。富永啓生選手とホーキンソン選手など3ポイントのタッチのいい選手がいて、3ポイントが当たってる中でインサイドに切り込んでいったりと多彩な攻撃が出来たので、カーボベルデからしたら本当に手が付けられない状態でした。第4クオーターはカーボベルデの強度が上がって苦戦しましたが、最後はリードを守り切って勝てたので良かったと思います。

 この試合でリードを奪えた要因の一つは、やっぱりみんなのシュートタッチが良かったことですね。第2クオーターはほぼすべてのシュートが入っていましたし、それがそのままリードに繋がっていました。

 あとは、しっかり相手をスカウティングをしていたことも大きかったと思います。相手のタバレス選手がインサイドで脅威になる中で、日本は簡単にやらせないようにしていました。タバレス選手は、意外にボールを下げるんです。そこを見逃さずに2人、3人でプレッシャーをかけて、インサイドで自由にやらせなかったのが効いていたと思います。

 リバウンドは相手に取られる場面が多かったですが、そこからセカンドチャンスで点を取られる場面も減らせました。終盤は相手がコンタクトプレーを嫌がっていましたよね。そうしたしつこいディフェンスを40分間やり続けられたのは本当に良かったですね。

 ホーキンソン選手と(渡邊)雄太さんが40分出ずっぱりで頑張っていましたが、フルタイム出場する選手が2人もいる試合はなかなかないですよ。それだけトムHCが信頼しているのもありますし、最後の試合なので出し切って来いという感じだったんだと思います。

 2人とも疲れがあるなかで本当に気迫のプレーを見せてくれました。ホーキンソン選手が自分でディフェンスリバウンドをとって、そのまま速攻を決めたシーンなんて、信じられないですよ。出ずっぱりであのプレーができるのは普通じゃない。第4クオーター終盤の苦しい場面でも点を取って相手の流れを切ってくれたし、本当に凄い選手です。大会を通して身体を張り続けて引っ張ってきたホーキンソン選手が、最後に試合を決める働きをしていたのが、僕としては嬉しかったですね。

 フィンランド戦とベネズエラ戦は正直、チームとしてはやっぱりまだ相手が上回っていた印象が正直あって、それでもしっかり自分たちのプレーをして、沖縄アリーナの声援を武器に勢いで押し切ったところがあったんです。ただ、カーボベルデ戦に関しては、試合運びやチームの完成度で日本が上回っていたので、本当に日本が強くなったんだと感じました。これからはここがスタンダードになっていきますし、国際大会での決勝トーナメント進出が求められてくると思います。

 今大会の日本のMVPを選ぶとすれば、河村勇輝選手も良かったし、雄太さんも凄かったんですが、やっぱりホーキンソン選手を選びたいと思います。彼がいなかったら、日本のバスケは成り立ってなかった、と思うぐらい存在感がありました。今大会の日本で一番プレータイムが長いし、もちろんみんなが助けている部分もありますけど、一人でゴール下で身体を張ってリバウンドをもぎ取っていた。そして、あれだけ身体を張りながら、ファストブレイクでも走っているんです。本当に日本の柱でした。

 日本代表は、これからパリ五輪のメンバー入りへのサバイバルが始まります。もちろん、自分もそこにしっかりと入っていきたいと思っています。今大会は、中心になる8人ぐらいの選手がほとんど試合に出ていて、残りの選手はあまりプレータイムがなかったというのが実際のところでした。そういうプレータイムが少なかった選手は、次の五輪では絶対に活躍してやるという気持ちが湧いていると思うので、自分もそれに負けないように、まずはしっかり怪我を直して、所属チームのシーホース三河でいいパフォーマンスを見せたいと思います。

 パリ五輪の切符は取れましたが、日本バスケは本当にここがスタート。パリ五輪で惨敗したら、またバスケに対する世間の興味が薄れてしまうと思います。これからは求められるレベルがどんどん高くなっていって、ワールドカップへ出るのは「当たり前」で、決勝トーナメント進出が目標、という世界に入っていくはずです。

 今の日本スポーツ界は、サッカーのワールドカップだったり、ラグビーワールドカップだったり、野球のWBCだったり、各スポーツが日本に勇気を与えていますよね。バスケもそういう存在になりたいとずっと思っていました。今回のメンバーがそれをやってくれたので、これからよりバスケへの注目も増すと思うし、Bリーグに興味を持って見てくれる方も絶対増えると思います。そういう熱を絶やさないために、次のパリ五輪ではさらにいい成績を残したいですね。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]


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