まさかの“温度差”を感じたチェッカー後。新型マシン初優勝の裏側とヘルメットのこだわり【井口&山内のBRZコラム Vol.5】

2021年9月17日(金)9時41分 AUTOSPORT web

 今季、スーパーGT・GT300クラスに新型車両を投入したSUBARU BRZ R&D SPORT。そのステアリングを握る井口卓人選手と山内英輝選手が毎レース後、交互に登場するこのコラムですが、先日の第5戦SUGOではついに今季初優勝!


 今回はその優勝の舞台裏を、山内選手が振り返ります。そして、ヘルメットのカラーリングに隠された“こだわり”も語ってくれました。


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 みなさんこんにちは、山内英輝です。第5戦SUGO、やっっっっと優勝することができました! 本当に最高の気分です。応援ありがとうございました! 


 鈴鹿では決勝ペースに苦しみましたが、その後オートポリスのタイヤメーカーテストでは、ヒントを掴むことができていました。


 テストは雨だったのですが、それでもロングランでのリヤのグリップダウンを抑えるセットアップに光が見えました。思えば開幕前、新型SUBARU BRZになって初めての岡山での雨のテストでは、トップから3秒くらい遅れていたんです。でも今回のオートポリステストではトップタイム。ちゃんと強くなっているんだな、という実感もありました。


 SUGOでは、公式練習の走り出しからタイヤがいい状態のうちはすごくバランスが良かったです。まずは持ち込んだタイヤのハード側とソフト側、2種類を確認して、予選の一発に関しては大きなアジャストはいらないな、というくらい好調でした。なので、すぐに決勝向けのロングランでのバランスを見る作業に入りました。


 結局、予選に向けてはちょっと涼しかったこともあってソフトをチョイス。日曜は暑くなりましたが、ウォームアップ走行でもソフトの方が感触が良かったので、決勝後半の僕のスティントでもソフトを履くことにしました。マシンのセットアップも、うまくアジャストできていたと思います。

予選Q2では山内のアタックにより今季3度目のポールポジションを獲得。


■グリッドで目にした井口の“異変”


 そうそう、決勝後に取材していただいた記事にもあるように、今回は久々に卓ちゃんがスタートを担当し、僕が後半に行くことにしていたんです。このところ、卓ちゃんが厳しい状況になりがちな決勝後半を頑張ってくれていたので、「そこは平等にしたいな」という思いもあって、自分からチームに提案しました。


 いつも僕はスタート担当で、グリッドでも緊張しているのですが、後半担当だとそこまで緊張はせず……。ただ、グリッドでのセレモニーが終わり、いざマシンに乗り込むとなったとき、卓ちゃんに異変が起きたのを目にしてしまったんです。


 無線のジャックは簡単に差し込める位置にあるんですけど、卓ちゃんは絶対にそこじゃないから! っていうところに差そうとしていて(笑)。緊張感が伝わってきて、正直、大丈夫なのか、この順番で良かったのか、と不安になりました。


 ですが、スタートしたらすぐに2〜3秒のギャップを作ってくれた。もう、安心することができました。


 僕は性格的に仕事を早く終わらせたいタイプ。前半スティントにピットで待っているのがあまり得意ではないので、乗るまでは長く感じました。ピットインして交代するときは、「あぁ、卓ちゃんはもう、見てるだけなんだな……」って(笑)。いつもは卓ちゃんがそう思ってるんでしょうけどね。


 コースに出て行ってすぐのセーフティカーでは、リスタートがカギになりました。僕は実質のトップでしたが、前にはまだピットを済ませていない車両と、周回おくれの車両がいたんです。


 リスタートの瞬間は、うまく前の集団とギャップを作って詰まらないようにできたのですが、その後の1周で前に追いつき塞がれる形になってしまい、背後の55号車(ARTA NSX GT3)に危うく抜かれそうになったのが一番のピンチでしたね。接触を受けながらもなんとかポジションを守れましたし、その集団を抜く際には逆に僕の方が巡り合わせが良く、ギャップを築くことができました。

ARTA NSX GT3との接触により左リヤのディフューザー部分を破損。ややリヤのグリップが失われたが、幸いコントロール可能な範囲だったという。


 残り10周くらいまで、常に55号車のラップタイムを無線で聞いてそれよりも速く走る、ということに集中していました。残り5〜6周くらいからは緊張感が襲ってきましたが、なんとか無事にチェッカーまでトップを守り切ることができました。


 チェッカー後、チームと無線で喜びを伝え合ったあと、僕は意外と冷静だったので、接触があったのでリヤのボディワークの修復が必要であることや、より重いウエイトを積む次戦に向けては決勝のバランスをもっと改善していきたい、という内容の無線を入れていたのですが、どうやらピットは大騒ぎだったらしく、「それ、いま言わなくても……」みたいな雰囲気になってしまい、ピットとの温度差を感じてしまいました(笑)。


 もちろん、パルクフェルメに戻って卓ちゃんが来てくれたときは、僕も思いっきり感情的になりましたよ。予選でトップを獲っても勝てないレースが続いていたので、本当にほっとしました。


 ところが、表彰台の裏に行ってみたらびっくり! なんと56号車(リアライズ日産自動車大学校 GT-R)のふたりがいるじゃないですか。サクセスウエイト81kgで3位ということで、とても驚きました。


 これで僕たちは、彼らに1ポイント差でランキング首位に立ちましたが、56号車は本当に速いし強い。彼らはもてぎと富士でも強いと思うので、次のオートポリスはとても大事なレースになると思います。


 ランキング3位以下も接戦ですし、今回のSUGOでもウエイトを多く積みながらも上位に来ていたチームが多かった。タイトル獲得という目標に向けては、ここが第2のスタートラインだと思っています。

SUGOでの優勝によりドライバーズランキングでは39ポイント。2位に1ポイント差で首位に立った。


■「さりげなくオシャレ」。山内のヘルメットカラーリングの秘密


 さて、今回は僕のヘルメットのカラーリングを紹介させてください!


 ベースのデザインは、僕の父が使っていたものを受け継いでいます。僕は青でY、緑でHと、イニシャルを表現しています。黄色、青、緑という3色は、このところ変えていないですね。

山内英輝の2021年スーパーGT用ヘルメット


 カートを始めた頃から、このデザインを使っていました。その後ステップアップし、F3に参戦する頃にデザインも使う色もガラっと変えた時期がありました。


 SUBARUに入って卓ちゃんと組んでから、彼が「初心に立ち返りたい」ということでカート時代のデザインに戻すことになったんですよ。それを聞いて、じゃあ僕もカート時代に戻そうかな、と。僕が入って2年目、2016年のことですね。


 そしたらその年、卓ちゃんとコンビ初優勝! おかげでデザインを変えられなくなってしまった感じです。


 とはいえ細かい部分はアレンジされていて、たとえば今年はフランクミューラーさんがスポンサーしてくださっているので、時計の盤面の絵柄が入っています。

山内英輝の2021年スーパーGT用ヘルメット

山内英輝の2021年スーパーGT用ヘルメット


 あと、細かい部分では青のところがよく見るとメッキになっているのがお気に入りポイントです。ここだけメッキで、あとはつや消し加工なのがさりげなくオシャレだと自分では思ってるんですが、どうでしょう? ただ、ペインターさんはめっちゃ面倒くさいと思います。最初メッキ加工するのに、なんでその上につや消しやねん、っていう(笑)。


 そんなわけで、愛着のあるデザインですので、今後も大きく変える予定はありません。早くファンの皆さんにも、このヘルメットを間近で見てもらえる日が来ますように……。


 引き続き、応援よろしくお願いします!

2021スーパーGT第5戦SUGO SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)

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