髪の毛より細い「脳インプラント」が開発される! 意識だけでSNSが使える日が来る!?

2023年1月29日(日)14時0分 tocana


 ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)企業のプレシジョン・ニューロサイエンスは、麻痺のある患者が神経信号だけでデジタル機器を操作できるようにすることを目指したデバイスの開発に取り組んでいる。同社はマイケル・メイガーとベンジャミン・ラポポートが共同設立した会社で、彼らはイーロン・マスクのBCI企業「ニューラリンク」も共同設立している。


 人間の大脳皮質は6つの細胞層で構成されているが、プレシジョン・ニューロサイエンスでは、科学者とエンジニアのチームが、人工的な7番目の層をイメージしたデバイスの構築に取り組んでいる。


 この装置は「Layer 7 Cortical Interface」と呼ばれ、麻痺のある患者が神経信号のみを使ってデジタル機器を操作できるようにすることを目的とした脳インプラントだ。つまり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のような重度の変性疾患の患者が、カーソルを動かしたり、タイピングをしたり、さらには意識のみでソーシャルメディアにアクセスすることができるという。


 Layer 7の大きな特徴は、人間の髪の毛よりも細いため、組織を傷つけずに脳の表面に適合させることができる点だ。ニューラリンクのBCIが脳組織に直接埋め込むように設計されているのに対し、プレシジョン・ニューロサイエンスはより低侵襲に設計されている。


 Layer 7を埋め込むには、外科医が頭蓋骨に非常に細いスリットを入れ、手紙を投函するようにデバイスをスライドさせる。メイガ—氏によると、スリットの厚さは1ミリ以下で、患者が手術のために髪を剃る必要がないほど小さいとのことだ。


「開頭して頭蓋骨のかなりの部分を切除する必要があり、時間もかかり、感染症のリスクもある技術に比べて、これは大きな利点だと思います」と、彼はCNBCに語っている。


 この処置の性質上、同社は電極アレイの数を簡単に増やすことができ、メイガ—氏は、最終的にはこのデバイスを麻痺以外の神経用途にも使用できるようになるだろうと述べている。


 また、この処置は、患者がインプラントを必要としなくなった場合や、将来的に新しいバージョンを希望する場合に、元に戻すことが可能という利点もある。


「この装置をより多くの患者に提供することを考えるとき、医療技術を検討する人にとって、どのような処置でもリスクとリターンを考慮することが基本です。もし、そのシステムが元に戻せないものであったり、分解時にダメージを与える可能性があるものであれば、インプラントの導入に際してのコミットメントがより大きなものになります」(メイガ—氏)


 米ライス大学の電気工学准教授で、BCI企業「Motif Neurotech」創設者であるジェイコブ・ロビンソン氏は、プレシジョン・ニューロサイエンスが低侵襲BCI領域でエキサイティングな進歩を遂げていると話している。彼は、処置のリスクと利益を比較検討しなければならないのは患者だけでなく、医師や保険会社も同じだと述べている。


 ロビンソン氏によると、医師は既存の文献をもとに定量的に手術を検討しなければならず、保険会社は患者のコストを検討しなければならないので、プレシジョン・ニューロサイエンスの低侵襲手術は三者にとって都合の良いものだという。


「リスクが低いということは、より多くの人を治療する機会があるということであり、より多くの人に採用されるということです」(ロビンソン氏)


 しかし、この装置は脳組織に直接挿入されるわけではないので、脳信号の解像度は他のBCI装置ほど高くないだろうとロビンソン氏は指摘する。


「頭蓋骨の外から見るよりはるかに良い解像度が得られるが、組織の中に入るほど高い解像度は得られません。しかし、このような中型のスケールでできることはたくさんあります」(ロビンソン氏)


 プレシジョン・ニューロサイエンスは、Layer 7デバイスを使って、動物の神経信号を解読することに成功し、メイガ—氏は、数カ月以内にこの技術を人間でテストするためのFDAの承認を得たいと述べている。


 低侵襲型や埋め込み型など、患者のニーズに合わせてBCIの選択肢も広がっていきそうだ。いずれ医療目的ではなく娯楽もしくは生活スタイルの変化に合わせて、健常者もBCIを脳に埋め込む日が来るかもしれない。デバイスなしで脳だけでコミュニケーションを取るようになる近未来的な日常はもうすぐそこまで来ているようだ。


参考:「CNBC」ほか

tocana

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