お酒は何時間で抜ける? 「運転は何時間後からOKか」の考え方が危険すぎるワケ【脳科学者が解説】

2024年3月2日(土)20時45分 All About

【脳科学者が解説】お酒を飲んだ後、何時間くらいでアルコールの影響が抜けて、飲酒運転にならないのか、目安を知りたい人が多いようです。

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Q. 何時間でお酒は抜けますか? 大体でいいので目安が知りたいです

Q. 「最近、飲み会をすることがまた増え、金曜の夜などはつい遅くまで深酒をしてしまいます。週末は朝早くから運転して出かけたいこともあるのですが、アルコールは大体何時間で抜けますか?
一度ぐっすり眠ればスッキリするのですが、飲酒運転にはならないために、大体でいいので、何時間たてば安心かの目安を教えてください」

A. 何時間という目安はありません。根本的に意識を変えましょう

お酒に含まれるアルコールには、麻酔薬のように脳の神経活動を抑える作用があります。飲むと頭がボーっとしますから、そのような状態でハンドルを握ると、操作ミス、注意力・判断力の低下などが起こるのは当然です。
「飲酒運転」は、お酒という薬物を摂取したうえで、人を殺傷する可能性があるという点では凶器にも近い、車という道具を扱う行為です。誰もが絶対にしてはいけないことだと理解されていると思います。
しかし、飲酒後というのがどれくらいを指すのかがわからない、という声も聞かれます。飲んで2時間ほどぐっすり眠れば大丈夫なのか、深夜まで飲んでも翌朝は運転していいのか、何時間くらい経てば問題ないのかの、目安を知りたいと思う方もいるでしょう。
ある調査によると、体重60kgの成人がビール瓶1本または日本酒1合のアルコールを飲んだ後、体内からアルコールが消えるまでに約4時間かかったというデータがあります。
しかし、これは当てになりません。なぜなら、どれくらいの時間経てば酒酔いの状態から回復するかは、個人差や飲んだ量によって変わるからです。たくさん飲酒したときは、アルコールが消えるまでに当然時間がかかりますし、条件によっては24時間経っても影響が残る場合もありえます。
しかも、睡眠中は肝臓がアルコールを分解する速度が遅くなりますので、「一度寝て休んだから平気」ということもありません。お酒を飲んだ翌日には、絶対に車の運転をしないくらいの意識を持たなければだめです。
法制上は、呼気中のアルコール濃度が0.15mg/L以上であれば「酒気帯び運転」とされ、道路交通法違反で厳しく罰せられます。ただし、呼気中アルコール濃度が0.15mg/L未満になれば運転してよいというわけではありません。
実は、飲酒後ある程度の時間が経って呼気中や血液中のアルコール濃度が0になっても、飲酒の影響が脳に残っているという場合もあるのです。
たとえば、非常に大きな音を聴いた後は、その音自体が消えた後も、耳鳴りがしたり、しばらく音が聞こえづらくなったりという影響が残ることがあります。それと似ていて、アルコールが体内から消失しても、脳の働きがすぐに完全に元に戻るわけではないのです。
一部麻痺した状態がしばらく残ります。実際、ある調査では、飲酒後10時間が経過し、呼気検査で酒気帯びと判定されないケースでも、運転時の操作ミスや判断ミスをしやすいという結果が報告されています。
結局のところ、「何時間経ったら平気か」と考えること自体が間違いなのです。そういった発想自体をやめて、
・お酒を飲む可能性があるときは車で行かない
・飲んだ翌日は一切運転しない
・どうしても翌日に車の運転をしなければならない大事な用事があるなら飲酒を控える
ことです。不幸な事故を防ぐためにも、これらの意識を徹底することをお勧めします。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

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