坂本2位、千葉3位、樋口6位、日本女子シングルのレベルの高さを示した世界選手権、五輪3枠を獲得、来季への決意

2025年4月4日(金)6時0分 JBpress

(松原孝臣:ライター)


チャレンジャーの気持ちで

 アメリカ・ボストンで行われていた世界選手権が終了した。各種目で日本の選手が活躍する中、女子では表彰台に2人が上がるなど好演技ととともに成績を残した。

 この大会には来年のミラノ・コルティナオリンピックの出場枠がかっていたが、その成績により日本は無事、最大となる3枠を獲得することができた。出場枠獲得とともに、選手それぞれに糧を得た大会ともなった。

 坂本花織にとって、大会4連覇が懸かっていた今大会。ショートプログラムはコンビネーションジャンプの1つ目、トリプルフリップが2回転になったことが響き、5位発進となった。ただ、2つ目のトウループは3回転をつけたことでミスを最小限におさえ、トップとは逆転可能な範囲につけた。

 迎えたフリー。冒頭のダブルアクセルを雄大に成功させ、波に乗る。『シカゴ』の曲調に合わせた演技は場内をひきこんでいく。終盤、観客は立ち上がって歓声をおくる。演技を終えると坂本は何度も跳びはねた。ジャンプで回転不足が2つあったものの、好演技と言ってよかった。

 得点が出て暫定でトップ。残る4人の得点を待つことになった。トップのまま、最終滑走、ショート1位のアリサ・リュウ(アメリカ)を迎える。

 その演技もまた、素晴しかった。出場したスケーターのうち、ただ一人、すべての要素でGOE(出来栄え点)がプラス。まったくミスのない滑りで、優勝を決めた。

 リュウをハグを交わし、祝福した坂本は、涙を流し続けた。

「ほんとうにアリサの優勝はうれしかったんですけど、うれしいという気持ちの後に悔しすぎて今まででいちばん悔しかったなっていうのがあって、泣いても泣いても涙が止まらないぐらい」

 一方でこう語る。

「今回の結果を経験できたおかげで、チャレンジャーの気持ちで挑めます。次のミラノオリンピックに向けて、大事な経験だったんじゃないかなって思います」


楽しむという気持ちを絶対に忘れずに

 坂本に次ぐ3位、2度目の出場で表彰台に上がった千葉百音。勝負はショートプログラムにあった。昨年はトリプルルッツが1回転になるミスで13位と出遅れたことが響いたからだ。

「去年、ルッツがパンクしちゃったのが知らず知らずのうちにトラウマになっていました」

 その失敗を繰り返さなかった。冒頭のコンビネーションジャンプの2つ目が4分の1回転不足となったものの着氷し、残る2つのジャンプに成功。自己ベストで2位につけた。

 フリーでも回転不足はあったが崩れることなく滑り切り、3位。

 試合を終えて、千葉は振り返る。

「ショートでその場の雰囲気に自分の流れを崩さずに、むしろ観客の皆さんの歓声をエネルギーに変えるいい感覚でショートをできたことが、いちばんの収穫だったかなと思います。これからもすべての試合で、この感覚を忘れず、いい緊張感とかスケーティングを楽しむという気持ちを絶対に忘れずに、臨んでいきたいです」


やりきった気持ちが大きくて

 樋口新葉にとって、世界選手権は3年ぶり4度目の出場だった。過去には苦い思いをした大会もある。でも今回は、納得のいく演技をショートプログラム、フリーとそろえた。フリーの『Nature Boy / Running Up That Hill』では後半、トリプルループ—ダブルトウループを予定していたが1つ目のジャンプの着氷が乱れて2つ目がつけられない。でもその後のトリプルフリップにダブルトウループをつけてリカバリーする。

 そこには経験がいかされていた。ショートの後、樋口は語っている。

「緊張はすごく感じていたんですけど、今までよりも緊張を受け入れて滑れている感じがしました。そこは、今までの経験が役に立ったかなと思います」

 数々の舞台に立ち、成功、失敗、双方を体験してきた、その時間がいきていた。

 フリーのあとは涙をみせた。

「ほんとうにやりきった気持ちが大きくて」

 点数以上に、その内容は観る者の心を打つものだった。樋口本人にも、演じきれた実感があったのだろう。

 坂本、千葉、樋口、それぞれに大会へ向けて抱えている思いがあった。その中で試合に臨み、演技を、結果を受け止めている。

 それは悔しさ、喜び、それぞれに異なる。でも共通しているのは次への糧を得る貴重な時間となったこと。坂本は挑む立場を得て、来シーズンを迎えることができる。千葉は気持ちの持っていきかたを知った。そして樋口は経験をいかしつつ緊張と向き合うながら滑る機会となった。

 出場枠3を得て、あらためて日本女子のレベルの高さを示した世界選手権は、3人それぞれにとって、オリンピックシーズンへと進む大きな時間であった。

筆者:松原 孝臣

JBpress

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