和田秀樹 60歳からするべき手抜き。杖、補聴器、オムツ…便利なものを受け入れる人のほうが現役でいやすい
2025年4月21日(月)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
「精神科医になり、あまりに多くの人が、手が抜けないために、心の病に陥ってしまう現実を目の当たりにした」と話すのは、高齢者専門の精神科医・和田秀樹先生。そこで今回は、和田先生の著書『60歳からの「手抜き」の極意』から一部を抜粋・再編集し、<第二の人生を存分に楽しむための新提案>をお届けします。
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長所を見せよう
もしも将来、今よりもっと年をとって足もとがおぼつかなくなったら、無理して自力で歩こうとするより杖を使いましょう。音が聴こえにくくなったと思ったら、補聴器を使えばいいし、トイレが近くなったらオムツを使えばいいのです。
できなくなったことを認めたくなくて、なるべく頼らないようにしようとするより、便利なものを上手に受け入れられる人の方が現役でいやすいのです。
不便を解消してくれるグッズはいろいろとあるので、何かができなくなることをあらかじめ恐れすぎる必要はありません。
自分の欠点ばかりに目が向いて、それを直さなくてはいけない、人から見られて恥ずかしいと思う人が多いのですが、他人はそれほど見てはいません。
素晴らしいと感心させられる人は……
人間誰にでも長所があります。ちょっとした欠点を気にして反省するより、長所を見つけて伸ばすようにすればいいし、他人には長所だけ見せていればいいのです。
どんな素晴らしい人だって、ダメダメなところはあるのでしょうが、見せていないだけなのです。
私もこれまでにたくさんの書籍を出版してありがたいことによく売れるようになっていますが、そうは言ってもなかなか売れない作品もあります。けれども、評判のいいものだけが目立つから生き残っていられるのです。
「あの人はすごい」「それに比べて自分はダメだ」と悲観することはありません。素晴らしいと感心させられる人は、長所の見せ方がうまいのです。
できることから先にやる
あれもこれもしたいと思っても、体力には限界があります。若い頃に比べて疲れやすくなっているのは事実なので、ずっと頑張っているのはつらくなるでしょう。
「今日は思い切り休むぞ」というように、何もしない日があっていいと思います。私も、意識的に今日は休む、何もしない日にすると決めて休養することはよくあります。
(写真提供:Photo AC)
本当はいろいろと予定があったのに、なぜか気が乗らず、何もしないで過ごしてしまったという日もあるかもしれません。夜になって「ああ、今日は大したことはしなかったな」「もっと有意義なことができたはずなのに」と考えて落ち込む日もあるかもしれません。
けれども、本当は何かしら仕事をしているはずです。やらなかったこと、できなかったことばかりが目立ってしまうのです。
やるべきことに軽重がある時には、自分の得意なことから先にやってしまうといいでしょう。できること、成果が目に見えることから先にやると、やったという実感が湧いてきます。
100点の日もあれば80点の日もあっていい
受験生には、よく「得意科目を先にやれ」と指導してきました。時間が余ったら苦手科目をやればいい。そうしないと、勉強のノリが悪くなるのです。
何もしなかった日が生まれるのは、嫌な仕事から先に片づけなくてはいけないと思って、それに時間を取られてしまうからではないでしょうか。
何もしなかったのではなくて、それは気分の乗らないこと、あまり成果の出ないことに時間を割いたから。まず、何かできそうなことから手をつけましょう。
100点の日もあれば80点の日もあっていいのです。完璧ではなくとも、一応ここまではやってるのだから合格点と思えばいいのです。
※本稿は、『60歳からの「手抜き」の極意』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
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