公立小学校の元教員に聞いた! 「自分で考えて学ぶ子」の親がしている7つの行動
2025年4月22日(火)21時50分 All About
変化の激しい現代において、子どもたちに不可欠なのは「自分で考えて学ぶ力」。元小学校教員でベネッセ教育総合研究所の庄子寛之さんによると、この力を育む親には共通する7つの行動があるそうです。その具体的な内容を紹介します。
そんな庄子さんは言います。「変化の激しい現代は、AIさえも予測できない不確実性の高い時代と言えます。だからこそ、子どもたちには、与えられた情報をうのみにしたり指示を待ったりするのではなく、その場その場で自ら考え、判断し、行動する力が求められています」
さらに、こうも続けます。「表面的な知識を習得するのみならず、自ら立てた問いを『なぜ?』『どうして?』と深く掘り下げることで、本質的な理解と知的好奇心を育むような学びが重要です。
自分なりに考え、試行錯誤の末に何かを成し遂げる経験は、大きな喜びと『自分はできる』という自己効力感を育みます。小さな成功体験の積み重ねが自信となり、失敗からも学びを得て成長する力となるのです」
では、そのような力を育むために保護者にできることは何かあるのでしょうか。庄子さんが多くの保護者と接する中で見えてきた、「自分で考えて学ぶ子の保護者が実践する7つの行動」をお聞きしました。
行動1. 過度な口出しをせず、子どもをよく見る
「わが子が何をしているのか興味深く見守りながら、過度な指示や干渉を意識的に控えている保護者のお子さんは、『親は自分のことを信頼してくれている』と感じ、自分で考えて行動するようになる傾向があります」自分の子ども時代の経験を子育てに生かそうとする姿勢は大切ですが、保護者が育った時代から社会は大きく変化しています。自分の経験に捉われず、子どもの個性や社会の変化に合わせて柔軟に関わるよう意識したいですね。
行動2. 「外発的動機づけ」を上手に活用する
「『100点を取ったらゲームを買ってあげる』などと“その子だけ”の欲求を満たすのではなく、『きょうだい全員が喜ぶ本を買う』『家族で食事に行く』などと“家族みんなの喜び”につながるような外発的動機付けをしているご家庭のお子さんは、自分のためだけでなく、人のために頑張る心を育んでいる印象です」何かをしたらごほうびを与えるといった「外発的動機付け」は、子どもの行動意欲を高める一方で、ごほうびがないと行動しない子になるリスクも……。しかし、家族やきょうだいなど自分以外の人に貢献できることに喜びを見いだせれば、他人や社会のために尽くす利他の心も育まれそうです。
また、「やればできる」という自己効力感が育つと、次第に「楽しそう」「興味がある」「やってみたい」といった、自分の内側から湧き出た気持ちを学びへとつなげる「内発的動機」も少しずつ喚起されていくかもしれません。
行動3. 子どもの個性を面白がり、人と比較しない
保護者はどうしても、自分の子どもを周りの子どもと比較してしまいがちです。しかしそれは、子どもの個性を否定することにつながります。「人と比べず、お子さんの個性を面白がる保護者の方は、その子自身の持つユニークな才能や興味を認め、『すごいね!』と心からほめることができています。これからの時代はAIが多くの知識を補完してくれるため、その子の個性や才能を伸ばすことがより重要になります。
勉強が得意でなくても、子どもが夢中になっていることや興味を持っていることに関心を向け、一緒に楽しむ姿勢が大切になるでしょう。たとえ、それがゲームであってもいいのです」
行動4. 親子でポジティブに1日を振り返る
「寝る前に、親子でその日を振り返ってよかったことをノートに書き出すことを習慣にしているご家庭がありました。そのご家庭は親子関係が非常によく、お子さんの自己肯定感がとても高いことに感心したものです」この振り返りを行う上での大事なポイントは、「親子で分かち合う」ことと「前向きな視点を持つ」ことです。
「よいことを共有することで、保護者はお子さんの成長を実感して活力を得られます。お子さんは自分のよい点や頑張りを認識し、自信を深めることができます。このようにして、ご家庭内にポジティブな循環が生まれているのだと感じました」
行動5. 保護者の考えを押し付けず、自分で決めさせる
「教員時代、『この子は素晴らしい!』と感じた子の保護者は、『周りの子がやっているから』と言って物事を子どもに押し付けるのではなく、『どんな道を選ぶか悩んだら、難しい方を選ぶといいよ』と背中を押していました」子どもよりも人生経験が豊富な保護者は、つい子どもが失敗しないように先回りして指示を出したり、安全な道を選ばせようとしたりしがちです。
「困難な道を選んでうまくいかないことがあっても、それはそれで子どもにとってよい経験となります。子どもに自分で決めさせるためには、保護者が『周りに合わせる』という概念を意図的に封印することを意識するといいでしょう」
行動6. 子どもの興味を広げ、多様なコミュニティーへの参加を促す
YouTubeなどで多様な情報に触れられる現代。「知る人ぞ知る」といったニッチな分野でも、より深い情報を得たり、同じ趣味を持つ人とつながったりすることが可能になりました。「自ら考え学ぶ子の保護者の多くは、子どもの興味関心に積極的に関わり、探究心を深めたり、同じ志を持つ仲間と交流したりすることを促しているようです」
行動7. 子どものことは子どもに任せ、保護者も自分の人生を大切にする
「自ら学ぶ子の保護者の多くは、子どものために一生懸命でありながら、自分の人生をとことん楽しんでいます。趣味や学びを深める保護者の姿は、子どもにとって最高のロールモデルとなっているのでしょう」子どもを持つと、どうしても子ども中心の生活になりがちです。しかし、保護者自身が自分の人生としっかり向き合い、興味のあることを学んだり、趣味を楽しむ時間を確保して自分自身の人生を豊かにすることが、結果的に子どもの成長を後押しするのかもしれません。
「自分で考えて学ぶ子」の保護者の共通点とは
これら7つの行動から見えてくる「自分で考えて学ぶ子」の保護者の共通点は、子どもを尊重し、その可能性を信じ、あたたかく見守ることです。過度な干渉を避けて、子ども自身の選択を大切にし、成功も失敗も「成長の糧」とするようなサポートができたらいいですね。そして何よりも、保護者自身が人生を楽しみ、学び続ける姿こそが、子どもが自ら考え行動する力を育むために最も大切な要素といえるでしょう。
庄子寛之さん プロフィール
ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター 主席研究員。元公立小学校指導教諭。大学院にて臨床心理学について学び、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。「先生の先生」として、ベネッセ教研の最新データを使いながら教育委員会や学校向けに研修を行ったり、保護者や一般向けに子育て講演を行ったりしている。(文:長島 ともこ( 子育て・PTA情報ガイド))