「えっと…旦那さんは性行為中に亡くなりました」若い相手との行為、バイアグラの服用が死に繋がる? 65歳以上の高齢者が“腹上死”する意外な理由

2025年4月24日(木)18時0分 文春オンライン

〈 急死する直前まで「飲食店にクレームを入れていた」怒ってばかりの“老害”でいると、死の危険が高まる“医学的な理由” 〉から続く


「え!? こんなことで?」


 これまで5000体以上の遺体を解剖してきたという法医学者の高木徹也さん。近年「まさか」と驚くような原因で亡くなる高齢者の遺体に出会う回数が増えてきているという。


 ここでは、高木さんの著書『 こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」 』(三笠書房)より一部を抜粋。高齢者が「性行為をする」ことで死に至る可能性を解説する。(全6回の2回目/ 続き を読む)


◆◆◆


性行為で死ぬ


「腹上死」という言葉をご存じでしょうか。


 これは性交渉中に死亡することの俗語ですが、法医学の分野を世に広めた功労者でもある、大先輩の上野正彦先生も研究していたテーマです。


 腹上死は突然死全体の0.6〜1.7%を占めるという報告もあるようですが、日本国内の割合は正確には把握されていません。一部の論文では、腹上死の75%が不倫関係にあったと報告されていますが、これまでの私の解剖経験では、高齢者による非常に若いお相手との性交渉時、そして、近年認可された勃起不全治療薬「バイアグラ」の服用時が目立つ印象があります。



※写真はイメージ ©show999/イメージマート


 腹上死が「腹の上で死ぬ」ことを指すため、男性が「正常位」での性交渉時に死ぬことだと思っている方も多いようですが、正常位以外でも、また、男性でなく女性が死亡する場合も「腹上死」と表現します。


 さらに、今回は高齢者に焦点を当てて解説しますが、若年者でも発生する可能性があることを理解していただきたいと思います。


 性交渉は、男性の場合、肉体的に陰茎の勃起と射精という一連の流れで行なわれます。


 勃起から射精までの過程は、自律神経の副交感神経から交感神経への切り替わりが俊敏に起こる反射によって行なわれるため、全身にも負荷がかかる行為です。そのため、射精の際に心筋梗塞などの虚血性心疾患、くも膜下出血や脳内出血などによって死亡することがあります。経験上、腹上死の多くは射精後に起きていることが多いことからも、自律神経の過剰な反射が大きく関与していると考えています。


 また、これは性交渉だけでなく自慰行為でも発生します。アダルトビデオを流したまま下半身だけ裸の状態で死亡しているケースを解剖することも、多々あります。


「えっと……旦那さんは性行為中に亡くなりました」


 ちなみに、高齢者が性交渉中に死亡した際、私たち法医学者にとって最も厄介なのは、ご家族への説明です。


 パートナー同士での性交渉中の死亡であれば近親者の方々の悲しみに配慮するのみなのですが、内密のお相手との性交渉中に死亡した場合は、ご家族への説明に苦慮します。保険金や遺産相続が絡んだ裁判に巻きこまれることもありました。


 歳を重ねると、勃起力は低下します。それでも性的活力の高い人は、バイアグラに代表される勃起不全治療薬を服用して性交渉を行ないます。


 高齢者がバイアグラを服用して、性交渉中に死亡するケースは増えています。


 このような場合では、もともと高血圧や心疾患を有していて、降圧薬を服用している人が多く、バイアグラを併用することで急激に血圧が低下し、急性脳梗塞などで死亡していることが多いようです。


 バイアグラによる腹上死は、用法・用量を守って服用することで防ぐことが可能です。お医者さんや薬剤師さんの指導には、必ず従うようにしましょう。



・過剰な性的興奮を伴う性交渉は避ける。


・異常を感じたらすぐに連絡が取れる環境で性交渉を行なう。


・勃起不全治療薬と降圧薬を併用しない。


〈 「発見された時は下半身の皮膚がタダレて…」法医学者が解説する、65歳以上はこたつでうっかり寝てはいけない“おそろしい理由” 〉へ続く


(高木 徹也/Webオリジナル(外部転載))

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