急死する直前まで「飲食店にクレームを入れていた」怒ってばかりの“老害”でいると、死の危険が高まる“医学的な理由”

2025年4月24日(木)18時0分 文春オンライン

「え!? こんなことで?」


 これまで5000体以上の遺体を解剖してきたという法医学者の高木徹也さん。近年「まさか」と驚くような原因で亡くなる高齢者の遺体に出会う回数が増えてきているという。


 ここでは、高木さんの著書『 こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」 』(三笠書房)より一部を抜粋。高齢者が「急に怒る」ことで死に至る可能性を解説する。(全6回の1回目/ 続き を読む)


◆◆◆


急に怒って死ぬ


 あなたの周りに、急に怒鳴ったり感情的になったりする高齢者はいませんか? 「老害」や「クレーマー」などと揶揄されることもあるかもしれませんが、このような態度をとっていると、突然死の危険性が非常に高まります。


 以前、些細なことから怒鳴り散らした高齢者が心肺停止に至ったケースや、飲食店へのクレーム中にお年寄りが急死したケースを解剖した経験があります。これらの死亡は、高血圧に起因した疾患に由来していました。


 年齢とともに血圧が上昇する最大の理由は、血管が硬くなるからです。同じ量の血液が流れる場合、血管が柔らかければ血液の圧をうまく逃がすことができますが、血管が硬くなると血管内の圧は相対的に高くなります。


 このような状態を「動脈硬化症」といい、主に生活習慣に由来しています。特に脂質や塩分の多い食生活、喫煙などによって徐々に重症化するのです。



※写真はイメージ ©mapo/イメージマート


 この「動脈硬化症」が問題なのは、無症状で進行するにもかかわらず、血液の通りが悪くなることで、二次的に心臓にも負荷がかかることです。


 血液が通りにくくなると、心臓はより多くの血液を送り出そうとして筋肉が厚くなり、「心肥大」という状態になります。その結果、血管内を通過する血液の摩擦は増え、血管の壁への負担が大きくなって動脈硬化症を増悪させます。


 このように、「動脈硬化症」と「心肥大」が悪循環となって、高齢者の血圧は知らずしらずのうちに高くなっていき、心臓への負荷も大きくなっていくのです。


 ちなみに、高血圧の治療として降圧薬が処方されることがありますが、これは高血圧によって生じる疾患の予防だけでなく、この悪循環を断ち切ることに一役買っています。ですから、降圧薬が処方された場合は、適切に服用することが重要です。


“老害”はこうやって生まれる


 ところで、歳を重ねると感情的に怒りっぽくなる場合がありますが、これも老化が影響しています。


 歳を重ねると、若年者に比べて人生の経験値が高まり、自信を過剰に持つようになるため、会話においても自分のことを優先しやすくなります。一方で、視力や聴力の低下がこれまで培ってきた経験や自信を低下させ、周りの話についていけない疎外感から、悪口を言われているような感覚にも陥るわけです。


 怒鳴り散らすなどして攻撃性が高まると、血管が収縮して脈拍が速くなります。いわゆる「頭に血が上る」状態ですが、動脈硬化症や心肥大がある場合は、血液がうまく循環しなくなり、心筋梗塞などを引き起こす可能性があります。


 また、脳に動脈瘤が形成されていた場合、破裂することで「くも膜下出血」や「脳内出血」を発症することもあります。


 このように、感情的になって突然死する高齢者の多くは、高血圧にもとづく疾患が原因であることが多いのです。



・定期的な通院で診察を受ける。


・周囲の人は高齢者の特性を理解し、優しい言葉でテンポを遅くして会話する。


・豊富な経験を有している高齢者にリスペクトの精神を持って接する。


〈 「えっと…旦那さんは性行為中に亡くなりました」若い相手との行為、バイアグラの服用が死に繋がる? 65歳以上の高齢者が“腹上死”する意外な理由 〉へ続く


(高木 徹也/Webオリジナル(外部転載))

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